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花梨
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千導 渉
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#工藤新一
「おーい快斗、朝から何ボーッとしてんだよ?」
江古田高校2年B組の教室。始業前の騒がしい空気の中、中森青子が快斗の机をパシパシと叩いた。
快斗は頬杖をついたまま、心ここにあらずといった様子で窓の外を眺めている。
「……いや、別に」
「嘘つけ! カバンからトランプの束がはみ出してるのも気づかないなんて、あんた病気?」
(病気じゃねぇよ……。あの推理オタクのせいで一睡もできなかっただけだっつの)
快斗は心の中で毒づきながら、昨夜の屋上での新一の言葉を思い出していた。
『怪盗のお前ごと、その人生、オレが引き受けてやる』
(……あんなセリフ、普通まともな面下げて言えるか? 探偵のくせにキザなんだよ、あいつは)
思い出すだけで顔がカッと熱くなる。
その時、担任の先生がガラガラと教室のドアを開けて入ってきた。
「よし、全員席につけー。ホームルームを始めるぞ。……あー、急なんだが、今日からお前たちのクラスに新しい仲間が増えることになった。おーい、入ってきていいぞ」
「えー、こんな中途半端な時期に転校生?」
クラス中がざわめき立つ。快斗も興味なさげに教壇へと視線を向けた。
ドアが開き、一人の男子生徒が歩み込んでくる。
江古田高校の紺色のブレザーを、驚くほどスマートに着こなしているその姿。端正な顔立ち。そして、どこか自信に満ち溢れた不敵な笑み。
快斗の心臓が、ドクンと大きく跳ね上がった。
「……っ!?」
「工藤新一です。親の仕事の都合で、米花町からこっちに引っ越してきました。趣味はサッカーと、……まあ、ちょっとした謎解きです。よろしく」
新一はそう言って爽やかに一礼すると、クラスの女子たちの黄色い歓声を受けながら、まっすぐに快斗の席を見つめてニヤリと笑った。
(な、何しに来てんだあいつはぁぁぁぁ!!)
快斗は椅子から転げ落ちそうになるのを必死で堪え、ポーカーフェイスの仮面を全力で張り付かせた。
「工藤の席は……よし、黒羽の隣が空いてるな。あそこを使ってくれ」
「はい、ありがとうございます」
新一はカバンを肩にかけ、歩み寄ってくる。そして、呆然と固まる快斗の隣の席に荷物を置くと、周囲に聞こえないほどの小さな声で、耳元に囁いた。
「よお、快斗。『日常を覗きにくる覚悟』、ちゃんときてやったぜ?」
「……お前、本気で帝丹高校から転校してきたのかよ……!」
「当たり前だろ。お前の『一生の相棒』になるって決めたんだ。隣の席が一番推理の呼吸が合わせやすいだろ?」
新一は悪戯っぽく笑い、自分の机に向き直った。
窓から差し込む朝の光の中、快斗は再び顔が真っ赤になるのを自覚しながら、カバンの中のトランプを強く握りしめた。
「……ハッ、お前がその気なら、学校生活でもたっぷり驚かせてやるよ、名探偵」
探偵と怪盗の、スリリングで騒がしい「日常」という名の第2幕が、今ここに幕を開けたのだった。
コメント
1件
あーだめだこれ!! 工藤の転校、完全に快斗を“観察”しに来てるやつじゃん! しかも隣の席って、近すぎて心臓もたねぇよww あの「一生の相棒」発言、厨二っぽいけどめちゃくちゃ熱いし、快斗の真っ赤になる顔が想像できて最高。ずっとこの距離感でやってほしいわ🔥