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SPRUNKI

1 - 逃げ道

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2024年12月27日

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どうも皆様、サカナです

スプランキーに沼りましたが、小説の供給がちょっと少なくて…

オワックスとラディの2人をください

オワラデをください

我慢できなくなったので書いてます

普段別界隈なので、ちょっと 解釈が未熟かもしれません

※妄想過多

























ガンッッッ!!!!


平和な草原の一角で、似つかわしくない鈍い音が響いた。

「は、はぁ…はぁ…っ」

「ぁ゛…ぅ、が…」

目の前には蹲って血を流すオワックスの姿がある。

震える手に持っているハンマーにはべっとりとその血がついていて、思わず落としてしまった。

「ちょっと!なんの音!?」

「どうした!」

遠くからヘッドホンと帽子の2人が近づいてくる。

「ち、ちが、おれは」

「オワックス!!」

反射的な言い訳をする前にオレンがオワックスに駆け寄り、痙攣してその場から動かない彼の頭を布で押さえた。

「何をしているんだ、ラディ!」

ほとんど同時にタナーから怒声にも近い咎める声をかけられ、肩をグッと掴まれる。

「タ、タナーさん、どうしよう…オワックスの血が、止まらなくて…っ」

「頭はまずい…すぐ治療できる場所まで行こう。クルーカーたちも呼ぶ。オレンはそのまま傷口を押さえて、なるべく衝撃を与えないようにしてくれ」

「わ、わかりました…」

年上のタナーから指示を与えられ、困惑して涙ぐんでいたオレンがようやく動き出す。

殴った張本人であるラディは立ち尽くし、テキパキと動くタナーや、オレンたちを追いかけて来たであろうサイモンやダープルたちが、オワックスを助けようと必死になっている姿を見つめることしかできない。

段々と息が上がって、逃げたい衝動に駆られる。

「ラディ、話を…」

「っ…!」

「ラディ!!」

タナーに声をかけられて、いよいよラディは走り出してしまった。

とにかく今は、誰にも会いたくない。












走って、走って、走って、走って。

たどり着いたのは、自分の家からも遠い草原だった。

「はぁー…」

運動は好きだし、全力疾走で息を切らすのもいつも通り。

だが、どこか胸の奥がざわめいて、いつものようにスカッとした気分にはならない。

大きな木の根元に座って休んでいると、強く握りしめていた手が、何かベタベタすることに気がついた。

「…」

返り血だ。

オワックスを殴った時についたであろう、赤い血。

最悪な気分とはこのことだろう。

「チッ」

ここには手を綺麗にできるものなんてない。

ラディはさらさらの短い雑草たちに手を擦り、誤魔化す。

けれども土や砂やがついて、却って苛立ってきてしまう。

自分の短気な性格は良くないことくらい知っている。

ああやってオワックスを殴ってしまったのも、自分の怒りをコントロールできなかったからだ。

タナーは怒りを孕んだ瞳で自分のことを見つめていたけれど、自分のように無闇矢鱈と怒鳴るような真似はしなかった。

オレンの怯えた目が、サイモンの信じられないものを見る目が、オワックスの困惑した目が忘れられない。

自分は良くないことをした。

それはわかっている。わかっているからこそ、戻れない。

今戻ったところで、自分はどう思われる?

オワックスにはまず許されないだろう。

仲間思いなタナーやオレンからは失望されるだろう。

いくら優しいヴィネリアとて、嫌悪されるだろう。

サイモンなんかは目に見えて軽蔑してきそうだ。

ダープルからはそっと距離を取られるだろう。

クルーカーとガーノルドたちには呆れられ、スカイには罵倒されるかもしれない。

みんなの友達!だなんて豪語するMr.サンですら、どうなることやら。

考えれば考えるほどに、自分がどれだけまずいことをしたのか理解させられる。

最悪だ、俺は。

殴ってごめんなさいの一言すら言えないままに逃げて、軽蔑されるのが嫌だからと戻りすらしない。

今まで以上に問題児だと思われる。

排除されるかもしれない。

行く宛がないから、戻るしかないのだが。

今は、少しだけ。

少しだけ、皆から離れたい。












「話を聞こうと思ったんだが…逃げられたな」

「俺が追いかけようか?」

「いや、大丈夫だ。ありがとうな、サイモン」

ラディが逃げた後も、タナーたちはオワックスを助けるために全力を尽くしていた。

今はもう病院に搬送されて、ようやく安堵できるといったところ。

タナーは声をかけてくれたサイモンを撫で、これからどうしようかと思案した。

「ねえ、保安官さん」

「どうした?ヴィネリア」

「ラディくんは、大丈夫かしら。私は何があったのか見ていないけれど…根は良い子だもの、思い詰めていないか心配だわ」

「そうだな。殴ったのは衝動的なものだろうし、しばらくは帰ってこないだろう。そのうち帰ってきたら、俺が話を聞くさ」

ラディが心配しているよりも、彼らはずっと優しい。

ヴィネリアはラディのことを気にかけ、タナーも今は1人にしてやろうと無理に詮索はしなかった。

オレンは純粋にオワックスの心配だけをしていて、応急処置をしたクルーカーたちも、その場にいた誰もかもが、ラディを悪く言うことはない。

もちろんサイモンやガーノルドあたりはえらく素直なので、逃げたことについては文句を言っていたが。

「さぁて、ここにいないやつらにも説明しなきゃな…」

帽子を被り直して、保安官タナーはその場から去った。














「……」

何時間経ったのか、ラディはぼーっとそこに座り続けている。

こんなに長くじっとしているなんて、珍しいのではないだろうか。

「そろそろ戻ってはいかがですか」

「うわっ!?きゅ、急に声かけんじゃねえ!」

背後から落ち着いた低い声が聞こえて、ラディは声を上擦らせて飛び退いた。

「チッ…カルト野郎かよ」

「ジェヴィンです」

「わぁったよ。で、何しに来た」

イライラしたようにラディが聞けば、ジェヴィンは簡潔に答える。

「ラディさんを連れ戻しに来ました」

「はぁ…あの保安官か」

「いいえ。タナーさんは関係ありません。私の独断です」

正直なところ、ジェヴィンは不気味だ。

他の誰とも関わらず、ただ宗教にお熱のちょっと危なそうなやつ。

その程度の認識しかなかった。

「なんでわざわざテメェが来るんだ?あ?」

不機嫌なのも併せて、結構な喧嘩腰で聞いてみる。

直すべきだとは思うが、もう染みついた態度だった。

「1人になるのは、あまり良くありません。戻りましょう」

「俺が戻ったところで、あいつらは歓迎しねーよ!このままどっか行っちまった方が喜ばれるっての」

「そんなことはありません。皆さんはオワックスさんのことも、あなたのことも心配していました。戻りましょう」

変わらない調子で戻れと言われたところで、素直に聞くならこんなところまで来ていない。

「そんな綺麗事はいらねえ。それともなんだ?お前の1人時間に邪魔だからどっか行けってか?」

「…いつまで経っても、コミュニケーションは上手くなりませんね…とにかく、1人でいるのは良くない。納得していただけますか」

「…どうせ、お前が言ったようなことにはならねえよ」

捨て台詞を吐いて、ジェヴィンから逃げるように帰り道を歩き始める。


「結局、俺はまた逃げんのかよ…だっせぇ」







あれからというもの、ラディはますます孤立していった。

あのサイモンやウェンダですら事件のことは話題に出さず、オレンからは無駄に気を遣われ、タナーとは一悶着あり、みんなと仲直りだなんて夢物語はない。

オワックスは治療を受けた後に精神病院まで運ばれたそうだ。

全部自分のせい。

歯車を叩き壊し、ただでさえ無理をしていたオワックスを狂わせた。

自分は、何がしたいのだろうか。







結局、こうして無惨に吊るされた今も、その答えは出ていない。

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