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「やっぱ家で渡せばよかった」
「いや、生ハムきゅうりは思い出すと真っ青になったり真っ赤になったり紗矢が可愛いから、ついね」
「違いますー。喬一さんのその笑顔、私以外に見せるのが勿体ないなって思っただけです」
えい、ともう一度小さく蹴ると今度は当たった。なのでどうだ、と顔を見ようとしたら、喬一さんが片手でまた顔を覆っていた。
「弁慶の泣き所にあたりましたか」
本当に軽く当てたはずなのに。恐る恐る顔を覗き込むと、耳が赤くなっていた。
なので椅子を喬一さんの方へ寄せて、耳に触る。真っ赤で熱い。
「はずれ。食事なんて放り投げて、デザートが食べたくなった」
伸びてきた手が、私の手を掴んで指先を絡めてきた。
喬一さんの長い手が好き。その長い手が、私の髪を、触るのも。
シーツを私の手ごと掴むのも、私の体に触れるのも、全部。
デザートと言われ、彼の指先から伝わる体温に、初夜の熱を思い出す。
「……帰ったら食べてくださいね」
熱を孕んだ瞳で私を捉えると、彼の顔が近づいてきた。いつもの余裕が感じられないのは、微かに当たった眼鏡からわかる。触れるだけのキスなのに、お互いの心臓は破裂しそうに大きく高鳴った。
それから運ばれてきた美味しいパテとワインに気持ちよくなった私たちは家に帰ると、点々と服を脱ぎ散らかしお行儀が悪いまま寝室へ向かったのだった。
*
クリスマス当日、私がリビングの大きなクリスマスツリーを飾りつけ、彼が炭火焼タンドリーチキンを作った。拭き抜けの天井に届きそうなほど大きなモミの木も、チキンも昨日のオランダ料理店の白石さんが取り寄せてくれたものらしい。
彼がチキンを作る前に私はケーキのスポンジを作って冷やしておいた。一緒にイチゴやサンタの砂糖菓子を飾り付けようねと約束している。
それにしてもスポンジは何回か練習したけど上手くいって良かった。一度だけ、原因不明で半分膨らまなかったんだよね。
モミの木は残念ながら本物ではないけれど、本物のように枝や葉が丁寧に作られている。その木に、買ってきた装飾品を飾るが全く足らなかった。仕方がないので、裏側の見えない部分にはつけず、目に留まりやすい部分に飾りを移動する。
「全部、飾りつけ終わった?」
「終わりましたよ。そっち、お手伝い何かできます?」
「大丈夫だけど、ちょっと待って」
手を拭きながら喬一さんがリビングにやってくると私の隣に立った。
「このモミの木、業者の人に設置してもらったから、また業者の人に撤去お願いするけど」
「うん。いつですか」
「正月明けぐらいかな。でも、実はプレゼント型の装飾品は、全部プレゼントです」
「……え?」
今、飾りつけを終えたばかりのクリスマスツリーを見る。プレゼント型の装飾品は少なくても10個はあった。
「毎日一個ずつ開けるのもいいし、片づけるときに全部でもいいよ」
#料理男子
「えええ、なにそれ。すごい!」
語彙が破壊されるほど胸が高鳴る。
「今日は、クリスマスなんで二個開けてもいいですか!」
「もちろん。何個でもいいよ」
なぜか喬一さんも嬉しそうだ。どの箱に何をいれたのか知っているからだろうけど、選ぶ私もドキドキする。
一個目は、赤い水玉模様の包装紙、もう一個は一番高い位置に飾った緑と白のボーダーの包装紙のプレゼントにした。
中は、リーフの形のエメラルドのイヤリングとカシミアの手袋だった。
「紗矢がよく履いているヒールの色に合わせてみた」
「すごいです。そこまで見てくれてるなんて、しかも可愛い……っ。ありがとうございます」
はしゃいで手袋をしたままイヤリングを付けようとしても上手くできない。
手袋を外せばいいのに焦る私はもたついて、なかなかイヤリングを付けられなかった。
「貸して」
喬一さんが耳に髪をかけてイヤリングをつけてくれた。
ただそれだけなのに、耳に触れてくる長い指に反応して、心臓がはち切れんばかりに高鳴った。
「どれだけ緊張してるの。できたよ」
「だ、って。喬一さん、格好いいし、いいにおいするし」
「それはチキンの匂いかな」
クスクス笑う。違いますって否定しようとしたら、その指先が唇に降りてくる。
下唇を撫でると、ゆっくりと彼の唇が重なった。
カシャカシャと小さくピアスが音を立てる。名残惜し気に唇を離すと、そのピアスを撫でた。
「……プレゼント、三つももらってしまいました」