Side赤
今日はずっと晴れていたからか、夕焼けが綺麗だ。きっと明日もいい天気になる。
彼の作る夕食を食べたあとのゆっくりとした時間。
茜色に染まる空を窓から見上げていたそのとき、後ろから名前を呼ばれる。
「ジェシー、何たそがれてんの」
振り返ると、高地がソファーから俺を見ている。
「た、たそがれ……? うん、まあそんな感じかな」
突然彼の口から出てきた見知らぬワードに適当に返し、ソファーの隣に座る。
「絶対知らないだろ」
「じゃあ教えて」
「んー、教えてやんない」
何だよー、と笑顔でじゃれつく。そんなたまに意地悪なところも大好きだ。
「空も綺麗なことだし、いきますか」
「はあっ!? もうすんの?」
高地が驚く。いや、俺が考えているのはそっちではない。
「ベッドじゃなくて、お酒。ウイスキーかワインかどっちにしようかな……」
悩んだ末に、キッチンの棚から俺が前に持ってきたワインを取り出す。
「優吾も一緒に飲む?」
もちろん、って答えが返ってくるかと思ったが、期待は外れた。
「えー、明日も仕事あるじゃん」
「それは俺もだけど。夜までの暇つぶし」
「ってか仕事あるのにやって大丈夫? ぜってー腰痛いじゃん」
確かに、と笑う。「踊るとかだったらやめたほうがいいかもね」
明日はバラエティー番組の収録だけだ。それに、最近はあまりしていなかった。
「晩酌、付き合ってあげましょうか」
「どうも」
笑みを浮かべた。
2つのグラスに深紅のワインを注ぎ、おつまみのチーズも用意する。
「乾杯」
カチンといい音が鳴った。
少しずつ口をつけ、程よくアルコールが回ってきたところで高地が話し出す。
「なあ、俺らってこのままでいいのかな」
チーズを食べていた手を止め、見やる。
「ほら…芸能人ってこともあるから外とか行けてないじゃん。なんか…それだけじゃあちょっと寂しくない?」
俺はぶんぶんと首を振った。
「そんなことない。むしろ楽しいよ。家だったら人目も気にしなくていいし、楽屋とかと違ってメンバーにも邪魔されないし」
2人の関係はメンバーにしか伝えていないからか、楽屋でだけみんながいじってくる。「今日もラブラブだな」とか「そこイチャつくな」とか。
でもそんな反応も、どこかおもしろい。
それに4人が全く普段と変わらず接してくれているのが嬉しかった。
……いや、前からかなり距離が近すぎたせいかもしれない。
「だよね」
高地は目じりにしわを寄せて笑った。今日もこの大好きな笑顔を独占できるなんて幸せ者だな、と俺は思った。
しかも今夜中、もうひとつ俺のお気に入りの「漢な高地」を堪能できるだなんて。
続く
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