Side赤
俺が入浴後にもう一杯のワインをちょうど飲み干したところで、高地がシャワーから戻ってきた。
「っ…」
前も見たことがあるはずなのに、思わず凝視してしまう。
濡れた髪、細い上半身、そこに掛かる黒色のバスタオル。俺の好物ばかりだ。
「……見んなよ」
じろりと睨まれる。その視線も、少し嬉しい。
「Sorry」
「ついでに言っとくけど、お前の風呂上がりもだいぶ俺の心をえぐっていったからな。俺より腹筋割れてるし」
褒められているのか何なのかわからない言葉に、笑いがこぼれる。
「いきますか…?」
寝室のほうを指さすが、
「髪乾かしてくるわー」とあっさり言ってまた洗面所に消えていった。
先にベッドのふちに腰掛けて待っていると、しばらくして現れた高地にやはり笑われた。
「健気に待ってるって、お前大型犬かよ!」
アハハ、と2人で笑い合う。
俺がバスローブを脱ぐと、高地が身体に触れてきた。
そして、「今日はこっちな」
力強く押し倒された。今までは俺が積極的だったのに珍しいな、と思いながらも内心楽しい。
「Hehe、意外とやるね」
当たり前だろ、とでも言うように唇の片端を上げる。
今までなら、こんな表情は見たことがなかった。
メンバーといるときはいつもニコニコしていて、パフォーマンスしているときはクールな高地だった。
でも今俺の上に乗っかっている高地は、メンバーでも友達でもない。
つぶらで黒目がちな瞳には、炎みたいな熱さが灯っている。
「優吾」
ん、とその目が見返してくる。
「……Do you love me?」
ぱちぱちと二度ほど瞬きをする。
「えーと、どうやって言うんだったっけ。今日聞いた気がする」
布団の中で考える。「お、オフコース」
そのかわいらしい発音もまた笑えてくる。
「アイラブユー」
高地からの嬉しすぎるメッセージに、彼を抱きしめた。
「あーもう暑いよ」
ころころと変わる態度。そう言いながらも笑っている。
「ゆーご、Gimme more love」
「何だよラブラブうるさいな」
また毒舌を吐かれてしまった。でも悪い気はしない。
「ってかどういう意味?」
「Give me more loveって意味」
常夜灯の明かりの下、高地がふっと息をついて笑みを見せる。
「もうとっくにあげてるだろ」
そう言われた瞬間、唇を彼に奪われる。それだけでなく、舌が絡みついてくる。
甘くて濃厚な深い味がした。
高地には呆れられているのか欲されているのかわからないが、ディープなキスの沼の中でそんなことは考えられなかった。
ほの暗さもあって、壁に掛けられているはずの時計は見えない。でも時間を気にしたくないほど、彼からのアプローチに弄ばれていたかった。
頭の中では、『STAMP IT』の音楽が流れている。この時のために作られたのではないかと思うほど、ちょうどいい。
「アイ、ウォント、ユアラブ」
やっと口を離した高地がそう言う。
あえて何も言葉を返さず、今度は俺が彼の唇をふさいだ。
今宵は、長い夜になりそうだ。
終わり
コメント
1件
そっち系のやつなのにmicoさんの表現だと ほんと1冊の小説読んでるみたいで大好きです( ; ; )