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「ねぇ千冬、これから町行こーよ」
「えっ、町にですか?いいですけど…万次郎様は勝手に行って大丈夫ですか?」
「あー、うん。まぁ何とかいつも隠れて行ってるし」
「…そうなんですね、万次郎様が良いなら私はお供しますよ!」
「じゃあ、行こっか!」
彼との初デート。
場所は彼のお兄様が作ったというこの街で。
「じゃあ千冬も変装しないと!」
「変装…ですか、何着ればいいんですか?」
「んー、じゃあ千冬はこれ着て!」
「これ…ですか?」
今まで着たことのなかった衣装。
花柄のワンピースに赤いマント、それにエプロンは女性の定番衣装だろう。
「そうそう!じゃあ、早速着てきて!」
「わかりました…」
「…どうですか?似合ってます、?」
何故か彼は鼻から血を流し、顔を赤くして倒れている。
体調に異変はなさそうなので、それ程私のこの姿が似合わなかったということなのだろうか。
「あ、えっと、もしかして…私の姿見たら気持ち悪かったですか…?」
「い、いや大丈夫…」
「もしかして、今日サラシ巻いてないので…いつも男の奴が胸あるとかキモいとか思ってます…?」
「そうじゃなくて…」
彼を立ち上がらせると急に肩を掴んできた。
「え、?」
「お前可愛すぎるって!ダメだよ!」
「かっ、かわ?え?可愛い?」
まさか自分のことを可愛いと思ってくれていたとは…
「と、とにかく!馬に乗るけど…乗馬できる?」
「乗馬は…ごめんなさい、できません」
「大丈夫、じゃあ俺の後ろに乗って!!」
♕
「ん、ついた!ここが俺らの町!」
「わぁぁぁぁぁ!!」
大きな噴水に銅像。
レンガで作られている商業施設や家々。
それに人が多くとても活気のある町だった。
「あれ?千冬は町で暮らしてたって言わなかった?こういう活気のある感じ苦手?」
「あ、いや、そういうわけじゃなくて……私、町と言いましたが結構人気の少ない所に住んでて…はら、身分とかの関係もあるし……」
「あぁ、そういうことか!人気の少ない所って言ったら…この卍国と雪解国の境目あたり、イヴェール国境の辺で暮らしてたの?」
「あたりです!卍国に住む友達がイヴェールに野菜を売りに来てくれるので…」
「友達?その子はどこに住んでるの?」
「あぁ、丁度この辺に………」
「え、もしかして…千冬?」
「武道…?」
「そうだよ!俺、花垣武道!お前千冬だろ!」
「そうだよーー!!!最近見かけなくて…寂しかった”あ”あ”!!」
「え、どゆこと?武道?ソイツが千冬のダチ?」
「あ、、えっと…説明しますね…」
花垣武道、ソイツは千冬の小さい頃からの友達だそうだ。
時空移動の能力者だが、近年は「時空なんて移動してもなーんもいいことねぇじゃん!」ってことで最近は能力を活用していないらしい。
困った奴だなぁ……。
親が早くに死んだので形見の畑で働いて、いつも千冬と会うことを楽しみにしていたらしい。
まぁでも千冬は、今俺だけのモンだからな。
「…ふーん、じゃあ…『たけみっち』!」
「へ、?たけ?たけみっち?」
「良かったじゃん『たけみっち』!」
「え?ちょ、千冬まで!なんだよその呼び方〜〜」
「ってことで、また来るから!」
「たけみっち、これからもよろしくな!」
「えぇ…………?」
少々強引に花垣のことを「たけみっち」呼びすることに成功した。
帰るまで遠足!ってことで、町の人達に怪しまれずに帰らなきゃ。
もしバレたら、どうやって言い訳をするか…………。
♕
久しぶりに武道に会えた。
もう、会うことはないと思っていたんだけど……。
でも、また会えた。
向こうもあんまり変わってなかったし、「たけみっち」呼びも面白いし。
ずっと、こうやって平和でいれたら………。
「……て、………くれ!!」
「ん?なんか聞こえませんか?」
「本当だ、何の声だろ…」
「や”めでくれ、!!」
「!?今やめてくれ…って」
「はい、確かに聞こえました。路地裏の方からです…」
路地裏の方、多分町民が誰かと争っている。
「困ってるかもしれないし、助けに行こう」
♕
「ヒッッッ、やめてくれッッ!お、俺は子供もまだ小さくてッ、まだ殺ッさないでッッ」
「んなの知らねぇよッッ!!テメェが金出さねぇのが悪ぃんだよ!!」
そう言って、片方の男はナイフを取り出す。
「おい、お前」
「あ?誰だテメェ…」
次の国王として勇敢に立ち向かって行く姿。
それは、今は彼の親の助けを借りながら公務をされていても、いずれ王となる人としての威厳や心得などがすごく伝わってくる。
「いくら取り立てでもナイフを使うのは違ぇだろ?」
「えっっ、取り立て…、!?ぁ、ぁの、」