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「ぁ…ぁの…わ、たし…帰っても…」


千冬は酷く怯えた。

必死にアイコンタクトでマイキーと話そうとするが


「え、?なんで…」


彼は気づいてくれない。


「ん?なんだ急に怖気づいたのか?そーだ、この嬢ちゃん…」


そう言って千冬を指を差しては


「この嬢ちゃん、ウチにくれるならコイツは返してやるよ」


そう言って取り立ての男はようやく胸ぐらをつかんでいた手を話した。


「っ…コイツは渡せねぇよ!というか、お前どこの国の奴だ。絶対に卍国の奴じゃねぇだろ、昔から国民を見てきた俺には言える……って、あ…」


思わずマイキーは口を手で抑える。

そう、このお出掛けは自分が王族の者だと思わせるような事を言わないのが絶対ルール。

しかしマイキーは頭に血がのぼり、ルールを破ってしまったのだ。


「…あ?お前国民をずっと見てきたって…もしかして、王族か?」

「っ、違う!そうじゃなくて…えっと、その…皆と仲良くて、あの…」


なんとか言い訳をするも、よく分からない言葉しか出てこなくて慌てる。


「ふぅん…卍国の王族が町娘連れてお出掛け、なんか妙だな…嬢ちゃん、お前は王族の嫁か?」

「違います!そんなわけ、な、ないじゃないですかっ!」


大声で叫んだので、路地裏に声が響く。


「ふーん、そうだ!コイツ返してあげる代わりに嬢ちゃん頂戴。嬢ちゃん可愛いからさ!ウチに連れてくよ!」

「へ…」

「なんでそうなるんだよ!お前、絶対卍国の国民じゃねえ!」

「んー、そうだね!俺はこの国の奴じゃない。取り立てでもねぇよ。でも今はそんな事関係ない、じゃあな、王子様よッ!」


そう言うとマイキーを強く殴ってその場を立ち去って行った。


「ぁ…完全に俺のせいだ…ッ。どうしよ、取り敢えずアイツらに報告…」



急いで屋敷に帰ると、家臣達がなにやらマイキーの方をじっ、と見てくる。

やはり城を勝手に抜け出したあげく、嫁を危険な目に合わせた事について怒られるのかと思ったが、今はそれどころではないので家臣に報告した。


「っ、ヤバいケンちん!千冬が、千冬が、どこの国の奴かも分かんねぇ奴に連れ去られたっ!」

「は…、それもしかしたら、芭流覇羅国の連中かも知れねぇ…」

「芭流覇羅…国、?」

「あぁ、そうか…最近できた国だから上の奴らもよく知らないようでな…」


芭流覇羅国。

それは、王のいない国。

彼らは卍国から度々人を連れ去っては国民とし、労働をさせている。

王がいないので主権はまだ15の若い男子が王子となり政治を行っているらしい。

王子は名前が分からないので通称「思い残しの花若様」と呼ばれる。

最近できたばかりで、いつか卍国の敵となる国なのでスパイを忍ばせて情報を手に入れた。


「そんな国が……、」

「取り敢えず、今は卍国の本部に連絡してる。マイキーは大人しくしてろ」

「っ、でも!千冬、千冬が!」

「落ち着け、マイキー。お前、一応この家系の主なんだから、取り乱すな」

「三ツ谷までっ!な、なぁ場地!場地はどう思うんだよ!さっきから黙って…」


「俺、ちょっとその芭流覇羅国?行ってくるわ」


「え?じ、じゃあ!俺も…」

「マイキー」

「…なんでだよっ、場地、必ず千冬を取り戻して来いよ」

「…あぁ」


そう言って場地は屋敷を出た。



「……ここが芭流覇羅国か、」


いかにも卍国とは違う雰囲気に眉を潜める。


「誰だ」


門番に問われると


「ここの王子の“招待”された場地だ。」

「入れ」


そう言われて場地は、明かりの灯らないスラム街へと足を踏み出した。


「…」


やはり労働させられている卍国の国民は、苦しそうな顔をして場地を見る。

その度に胸がキュッと苦しくなった。



無事、城の中に入れてもらう事ができた。

しかしそこは、廃墟のようなお化け屋敷のような暗くて恐ろしい場所だった。

こんな所にお嬢様が閉じ込められている。


コンコン


「失礼する」

「お、場地〜来てくれたんだね」

「…あ、あぁ」


「一虎」

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