テラーノベル
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遮光カーテンの隙間から、一筋の鋭い陽光が差し込み、ホテルのシーツを白く照らしている。
重いまぶたをゆっくりと開けると、すぐ目の前に徹さんの穏やかな寝顔があった。
「……あ」
昨夜の記憶が、鮮やかな熱を持って脳裏に蘇る。
私の不安を一つひとつ解くように
壊れ物を扱うような手つきで何度も「可愛い」と囁いてくれた徹さん。
重なり合った肌の熱さ、混じり合った吐息、指を絡めたまま離さなかったあの夜。
「……あ、起きた?おはよう、結衣」
徹さんの長い睫毛が揺れ、深い瞳が私を捉える。
寝起き特有の少し掠れた声が、昨夜の情事の余韻を孕んでいて、私の心臓を跳ねさせた。
「…お、おはようございます!徹さん」
私がシーツを胸元まで引き上げ、真っ赤な顔で挨拶すると
彼はふっと口角を上げ、私の腰を抱き寄せて自分の胸元へと引き寄せた。
「ふふ……まだ赤くなってる。昨夜、あんなに甘えん坊だったのはどこの誰かな?」
「あ、あれは…っ、徹さんが、変なこと言うから……っ」
「変なことじゃなくて、本音。…結衣、めちゃくちゃ可愛かったから…加減できなくなりそうだったよ」
おでこに落とされた、優しいキス。
朝の澄んだ空気の中で交わされる愛の言葉は
夜の熱狂とはまた違う、深く静かな決意として私の胸に染み渡った。
◆◇◆◇
それから一時間後
ホテルのロビーを抜け出し、私たちはいつものように、少し距離を置いて出社した。
けれど、鏡で見た私の肌はこれまでにないほど艶やかで
瞳の奥には自分でも驚くほど自信が満ち溢れていた。
「おはようございます」
オフィスに入ると、いつもの喧騒が広がっている。
私は自分の席に座り、パソコンを立ち上げる。
すると、少し遅れて徹さんが涼しい顔で入ってきた。
周囲の社員には、いつも通りの「上司と部下」にしか見えないだろう。
けれど、徹さんがデスクに向かう途中
私の横を通り過ぎる瞬間に、ふと指先が私の肩に触れた。
ほんの一瞬。
誰にも気づかれない、服越しの接触。
でも、その指先から伝わってきた熱が、昨夜のあの濃密な時間を瞬時に呼び起こす。
私は慌てて視線を画面に落とした。
顔に書いてあるんじゃないかと不安になるほど、胸が熱い。
ふと徹さんのデスクを見ると
彼は既に完璧な「高橋徹」として資料に目を通していた。
けれど、彼がふと顔を上げた瞬間、視線が私とぶつかった。
彼はほんの少しだけ、私にしか分からない角度で優しく目を細めて微笑んだ。
それに堪らなく、ドキドキしてしまった。
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おまる