Identity V 第五人格 隠囚 ⚠同居
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ガチャっと玄関の扉が開いた瞬間、気配で悟った。
____あ、絶対怒ってる。
キッチンで腕を組んで立つ隠者は、 普段より低い声で言った。
隠「ルーカス。今日、荘園主から話があった」
囚「……あ」
隠「”居眠り続きで試合にならない”ってな」
視線が合わない。 囚人は靴を脱ぎながら、そろそろと気配を探った。
囚「……すみません」
隠「謝れば済む話じゃないだろ」
淡々としたその声が、逆に怖い。 隠者は怒鳴らない。 でも静かに怒られる方が、何倍も胸に刺さる。
隠「徹夜は止めなさいとあれだけ、」
囚「……はい。でも、迷惑はかけませんから」
言った瞬間、隠者の表情がきゅっと曇った。
隠「迷惑とかじゃない。 私の弟子が毎日寝不足で倒れそうになっているのが気にいらないのだよ」
囚人はびくっと肩を揺らした。
囚「……心配されるの、苦手なんです」
隠「苦手でも、される理由はあるだろう」
言い捨てるように言って、 隠者はテーブルの上に置かれた紙袋を指した。
隠「それ、ルーカスの今日の弁当だ。 今朝、寝坊して食べてないと聞いたよ」
囚「……見てたんですか」
隠「見てたよ。毎日見ている。 ……家族ではないけれど、それくらいしてもいいだろう」
言葉が刺さる。 痛いくらいに優しい。
囚人の喉が小さく震えた。
囚「……怒ってるのは、私が無理したから?」
隠「違う」
隠者は一歩近づき、声を落とした。
隠「”頼らない”って線を引こうとするその態度が、私は嫌いなんだよ」
ぐっと胸が熱くなる。
怒っているのは、突き放したいからじゃない。
近づけない壁を作られるのが嫌で隠者は怒っている
囚「…頼ったら、甘えすぎになる気がして」
隠「いいよ。甘えなさい。 ここはお前の居場所なのだから」
囚人は目を伏せて、しばらく黙った。 やっと出てきた声はかすかに震えている。
囚「…じゃあ今日だけ、少し甘えてもいいですか」
隠者はその言葉に、怒りをすっと鎮めて微笑んだ。
隠「今日だけじゃなくていい。何日でも何年でも」
囚「……先生って、怒ったあとだけ優しすぎです」
隠「怒るのは、ルーカスお前が大事だからだよ」
思わず顔が熱くなり、囚人はそっぽを向いた。
玄関から漂う冷たい空気とは裏腹に、2人の距離は、いつもの喧嘩よりもずっと近く感じられた。
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END
コメント
2件
いや、最高っす