TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する


「はじめましてぇ…桜谷聖也、18歳ですっ!」


その後予定通り、俺たちのマンションにやって来たモネの従兄弟、聖也。


「桜谷…?」


お母さんサイドの従兄弟だから名字が違うのはわかるが、よく似た名字に思わず声が出た。


「うん。姉妹で桜木さんと桜谷さんになるなんて驚いたって、お母さんたちいつも言ってる」


笑顔のモネに続いてうふふ…と笑う聖也は、色白できれいな男の子、といった印象だ。



「はじめまして。綾瀬吉良です」


目元でピースをするポーズを決めた彼に、俺は冷静に挨拶を返して、手を差し出した。



「えーっ!こんなイケメンと握手なんて、僕…緊張しちゃうなぁ」


屈託のない笑顔の聖也。

不審な動きをしている…と思ったら、エイっ!という謎のかけ声と共に、なぜかふわりと抱きつかれた。



「…やだ聖也!なに急に抱きついてるのよ!」


モネが聖也の背中をパチンと叩く。

その仕草が可愛い…と思いながら、素直な感想を伝えた。


「…握手の方が、まだ緊張しないんじゃないかな?」


正直呆れたが、そんな心の内を見透かされないように言ったつもりだ。

それに男に抱きつかれるのは…あまり好まない。


…あー、そんなことを口に出したら、女性に抱きつかれるのは嬉しいのかと、モネに思われる可能性がある。


そんなことはまったくないが、彼女はまだまだ自分を過小評価していて、小さなことで眉を下げるから気を付けてやらなければならない。



「わぁ…吉良さん、ずっとモモちゃんのこと見てる」


「「…え?」」


2人同時に疑問符が出て、モネが急に俺を見上げるから、バッチリ目が合ってしまった。


俺から少し離れた聖也に、視線を追われていたらしい。



「そ、そんなこと…聖也はイチイチ見てなくていいんだから!」


みるみる顔を赤くして、俺から視線を外したモネを見ると、少し膨らんだ頬の向こうに、尖らせたピンク色の唇が見える。


可愛い…。


あいにく俺の胸には聖也がいるが、もしいなければ確実に抱き寄せる可愛さ。



「そういうわけにはいかないよぉ。大好きなモモちゃんの好きになった男の人でしょ?俺もどんな人か、ふかぁく知りたいし!」


せっかく少し距離をとってくれたのに、聖也は再び俺に抱きついてきて、胸元の匂いをクンクン嗅がれる…



「吉良さんいい匂いがするぅ!なんか香水つけてるんですか?」


「少しだけ…ね」


「へぇ…なんていう香水ですか?」


見た感じ背が高そうな聖也。俺の胸元に顔を埋めるって、結構屈まないと無理だよな。


「後でショップのURL 送るよ」


それだけで終わらせたのは、早く離れて欲しいからだ。


「うん!じゃ…お願いします!」


離れるかと思った聖也は、もう一度顔を俺の胸にグリグリ擦り付けた。


なんだよこれ。BLか。



「も…もういいでしょ。聖也、離れなさいよ!」


聖也の腕を引っ張りながら言うモネの顔つきは、確実にヤキモチだ。

まぁまぁいい気分になりつつ、そろそろ本気でモネに加勢してやろう。



「部屋に案内するから、聖也くん?」


「…じゃあ次はモモちゃんね!」


突然胸元の温もりが離れ、きゃあ…という小さな悲鳴が聞こえた。


「ちょっと…!何やってるのよ?!」


今度はモネが聖也に抱きつかれている。…というか、サイズ的に抱きしめられている、といった方がピッタリだ。


「まずは、その家の人たちとしっかりコミュニケーションを取らないとね!」


取りすぎだ…と思いながら、文句を言うわけにもいかず、俺はそのままソファに座る。


「もう…!日本人同士なんだから、コミュニケーションなんてたいしていらないでしょ?ここは日本!東京だってば!」


必死に訴えるモネの言葉を聞いて思い出した。

聖也は幼少期を海外で過ごし、高校時代の夏休みは、向こうにホームステイしていたという。


だからこんなにスキンシップしてくるのか…と納得した。


…とはいえ、目の前でモネが男に抱きしめられているのを見るのは面白くない。


それが例え、従兄弟だとしてもだ。


「…モモちゃん、ちっちゃくて可愛いなぁ…それに柔らかいし、吉良さんとは全然違う甘い匂いがする」


「聖也くん、部屋に案内するから、そろそろハグは終わろうか」


柔らかいとか甘い匂いとか…モネに対してそんな感想を抱いていいのは俺だけだ。


ソファから立ち上がり、少し険しい表情を聖也に見せつけ、モネの背中に巻き付く細い腕をぐいぐい引き剥がす。


イテテ…とか声が上がるがそんなこと知ったことではない。


「…もう。抱きつくクセは、大学入学までに直しなさいよ?」


…大学入学までに?

冗談じゃない。モネに抱きつくのはこれを最後にやめてもらいたい。


「うーん、わかったぁ。でも、たまには手をつないでよ…」


見ると首をかしげてモネを見下ろし、少し唇を突き出す表情の聖也。


…なんだそのあざと可愛い顔は。



聖也の部屋は、俺たちの寝室の目の前の部屋に決まった。

というか、空いてる部屋はそこしかないので、香里奈同様有無を言わさずそこで寝泊まりしてもらう。


「ありがとう…明日、ベッドとかいろいろ届くと思う!」


「「え…?!」」


また2人同時に疑問符が口から飛び出した。


「…家具まで届いちゃうわけ?」


「うん。お母さん、言ってなかったぁ?」


「うちのお母さんが伯母さんに頼まれたのは、一人暮らしのアパートが決まるまでのわずかな間の同居だってことだけど…」


「そうなんだけどさぁ…でも実際、アパートいつ見つかるかわかんないから送ってって言ったんだぁ」


…俺が何も言わずに無表情を貫いたのは、話が違うとモネが慌てて焦って、いろいろしなきゃと思うのを防ぐため。


そりゃ2人きりでいたいが、とりあえずモネと一緒に眠ることができるなら、そんなに慌てなくてもいいと思う。



「とりあえず、荷物を少し片付けて。そしたらシャワーでも浴びたら?」


「はい!吉良さんありがとうぉ」


俺が余裕だったのはここまで。

まさかこの聖也が、とんでもない七変化をして見せるとは、この時はさすがの俺も思っていなかった。


不機嫌な彼氏の秘密に涙する

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

113

コメント

1

ユーザー

聖也くん七面鳥?w 距離感バグってるし、なんか怪しい。 従兄弟って結婚出来るよね〜 吉良ティンの邪魔しそうだよ〜

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚