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護衛依頼から数週間。私たちは何事もなく,ただ平凡な冒険者生活を送っていた。しかし,レベルは一般冒険者たちと同じように上がることはなく,ギルドランク最下位という結果に陥った。そのせいで依頼をたくさん受けることはできず,ただ毎日薬草採集や低ランクの魔物討伐といった依頼を遂行するのであった。
ただ,どうしてほかの冒険者たちより絶対に魔物を討伐し,依頼を遂行しているというのにレベルが上がらないんだろう。ただ,それだけが私の心の中でずっと疑問だったのだ。
「なんでだろうね。」
「何がだよ。」
ギルド近くのカフェにて。スカイは黒宝に砂糖を入れ,まじまじと堪能していた。そんな呑気にしている暇はない。私たちには魔王討伐という大きな任務があるというのに。魔王城のある門(ゲート)に入るために必要なレベルは最低でも100。ⅼevel20にも達していない私たちにとっては最悪の事態だ。何年かかるかわからないというのに…
「もうなんか馬鹿馬鹿しくなってきたや。」
スカイはこうだ。黒宝を飲み終えたスカイはデザートを注文し始め,私の話なんてこれっぽっちも聞いていない。それに魔王討伐諦めちゃってるし。
「レベルが全然上がらないのおかしいと思わない?」
「レベルが上がらない…ねぇ。」
「!?」
気づけばそこに,ベルフェゴールさんがいた。マナーを知らないのか,机に乗って黒宝を指さす。それはうまいのか,と。
ただ,声はベルフェゴールさんなのに容姿は普通の男の人だ。大きな羽も,角もない。普通の人間だった。これは悪魔が使うことのできる魔法なのだろうか。すごく便利だ。
「お前,思っていたのだがまさか異世界人ってことはないだろうな。」
「ぎくっ。」
流石悪魔ですね。全部お見通しとは。スカイの顔がどんどん暗くなっていく。異世界人はこの世界で珍しい,というか伝説上の生き物認定。何をされるかわからない。
「お前ら,知らないかもしれないが異世界人はレベルの上がり方が異常だ。んで,異世界人とパーティーを組んでいると仲間にも影響が出る。レベルが全然上がらないのはどちらかが異世界人か,倒している魔物が比較的弱いのかのどちらかだ。」
「魔物が弱いとして,強い魔物がいるところって規制がかかったりしていて入れないわよ?」
「ノースマウンテンなんかは入れるぞ。」
あ,やっぱりあれ強かったですよね。レベルは少なくとも上がりましたし。もしも私がパーティーを脱退したら…いやいや,仕事見つけなきゃいけなくなっちゃうじゃない。めんどくさいし避けたいわ。
「そ,それ以外にレベル上げる方法は?」
「…異世界人はレベルが上がらない代わりに体内に魔力を蓄積する。だからレベルのわりに攻撃が強くなるんだ。もしステータスが魔法に長けていた場合は魔法が,剣術に長けている場合は剣術が超人並みに強くなる。また…。」
「また?」
「何かの引き金を引けばさらに強くなる。」
何かの引き金って,何なのよ。手りゅう弾みたいな引き金を引くの?ベルフェゴールさんはさぁ。と言って笑う。悪魔にもわからないことがあるらしい。異世界人ではないからこれについては詳しくは知らないって。
この話をしているときに客が居なくて助かった。お店の人は奥の方で作業してたし。
「まぁ,わかったわ。ありがとう。」
スカイがデザートのよくわからない白くて丸いものを食べ終えたのを確認し,料金を払ってカフェを出た。気づいたときにはもう,ベルフェゴールさんは居なかった。
もしも本当にスカイが原因だったとすればあのノースマウンテンでの出来事やダンジョンはスカイのおかげだったんだと思う。でなきゃ勝てなかった。ノースマウンテンの事件はスカラーさんのおかげなんだけど。
「じゃあ,またダンジョン行ってみる?」
「えー。」
スカイが乗り気じゃなくても私が連れて行ってあげる。嫌でも強くなって,魔王を私たちの手で倒すのよ!
「魔王って…本当は良い奴だったりしてね。」
「んなわけないでしょ。ほら,行くわよ。」
そうして私たちは次なるダンジョンを探しに出た。
to be continued→