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予定日から数週間が過ぎた、あるよく晴れた日。
朝から産気づいた真彩は理仁が付き添う形で産院に向かい、半日程で出産を終えた。
可愛らしい女の子で、学校を終えてから夕方くらいに朔太郎や翔太郎と真彩の元へやって来た悠真は、一目見るなり早くも妹に心を奪われていた。
「姉さん、お疲れ様です!」
「ママ、おつかれさま!」
「真彩さん、お疲れ様です」
「ありがとう」
見舞いに来てくれた三人に笑顔でお礼を口にした真彩。
比較的安産で負担も少なかった真彩は無事に生まれてきてくれた事に安堵し、皆が喜んでくれている事を嬉しく思っていた。
「そういえば、名前、もう決まってるんですか?」
「ああ、いくつか候補あるって言ってましたよね、理仁さん」
「ああ、色々迷ったんだが、最終的には悠真が決めたんだよな?」
「うん!」
「朔太郎くんや翔太郎くんに教えてあげて?」
名前を知りたがっていた朔太郎と翔太郎に決めた悠真から報告してと言われ、理仁から筒状になっている紙を受け取った悠真。
「これだよ!」
悠真が手にしていた紙を広げると、大きく綺麗な文字で【理真】と書かれていた。
「りまっていうんだ!」
嬉しそうに妹の名を口にする悠真。
そんな悠真を見ていた一同の心は和んでいく。
「理真っスか! 良い名前っスね!」
「兄貴と真彩さん、それぞれの文字が入っていて素敵です」
「ありがとう、悠真がねこれがいいって言ってくれたから決めたの」
「だって、かわいいから!」
「理真も、お兄ちゃんが付けてくれたと知ったら、きっと喜ぶな」
「そうかな? えへへ」
こうして皆に望まれて誕生した理真は、真彩によく似た可愛らしい女の子。
退院して屋敷で生活を始めるや否や、理仁と悠真は常に構い、溺愛していた。
そんな光景を見ていた真彩は、これまで以上に幸せな気持ちで満たされていった。
理真が生まれてから数カ月が過ぎて、再び日常を取り戻していた鬼龍家。
悠真は理真を溺愛するあまり、彼女が泣くと何で泣いているかがすぐに分かるようになっていた。
「ママー! りまがおなかすいたって!」
「はーい、今行くね」
平日は理真を気にしながらなのでなかなか家事が進まない事も多いけれど、休日は悠真が常に見ていてくれるおかげで家事もスムーズに進んでいた。
皆の愛情を受けている理真はすくすくと育ち、検診でも何ら問題は無かった。
だけど、真彩は悠真の事が少し気掛かりだった。
悠真はお兄ちゃんとしての自覚があるようで、したい事も行きたい所も常に我慢しているみたいなのだけど、朔太郎にだけは本音を打ち明けていた。
勿論、話す際は「ママとパパにはないしょだよ!」と口止めしているようなのだが、朔太郎は常に報告していた。
そんな悠真の為にも久しぶりに何処かへ出掛けようと、理真に負担が掛からないよう、近場だけど楽しめる場所を探した理仁と真彩。
悩みに悩んだ結果――
「悠真、今週末は皆で旅行に行くぞ」
とある場所へ皆で泊まりに行く事になった。