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れもん
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朝。
「空、起きろ」
長男の陸がカーテンを開ける。
眩しい光が部屋に差し込む。
「……ん……」
三男の空が布団に顔を埋める。
「あと五分……」
「十分前にも同じこと言ってたぞ」
呆れた声。
そこに――
「ほらほら三男坊、遅刻すんぞ〜」
次男の海が布団を引っぺがす。
「うわっ!?やめろって!!」
ばたばたともがく空。
その様子に、海が笑う。
「今日も平和だな〜」
「お前が騒がしいだけだ」
陸がため息をつく。
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当たり前みたいな朝。
当たり前みたいなやり取り。
でも――
それが、ちゃんと“ある”。
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「……」
空は一瞬だけ、二人を見る。
何気ない顔。
何も知らなかった頃みたいな、普通の表情。
――いや、違う。
全部知って、それでもここにいる顔だ。
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「どうした?」
陸が気づく。
「いや……なんでもない」
空は小さく笑う。
⸻
朝ごはん。
三人でテーブルを囲む。
「これ、誰が作った?」
海が味噌汁を飲みながら言う。
「俺」
陸が答える。
「しょっぱ」
「文句言うなら食うな」
「いや食うけど」
空がくすっと笑う。
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こんな時間が、前にもあった気がする。
でもあの時は――
続かなかった。
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「……なあ」
空が箸を止める。
二人が見る。
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少しだけ迷ってから。
でも、今度は逃げない。
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「今日さ、三人でどっか行かない?」
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一瞬の沈黙。
それから。
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「いいじゃん」
海がすぐに乗る。
「どこ行く?」
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陸も、ゆっくり頷く。
「たまにはいいな」
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その反応に、空が少しだけ驚く。
でもすぐに、笑う。
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「じゃあさ」
少しだけ、いたずらっぽく。
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「海でも行く?」
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海が吹き出す。
「お前それ狙っただろ」
「さあ?」
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陸も、珍しく小さく笑った。
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三人で出かける準備。
靴を履いて、玄関に並ぶ。
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ふと。
空が立ち止まる。
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「……どうした?」
海が振り返る。
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空は、ほんの少しだけ息を吸って。
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「約束、覚えてる?」
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その一言。
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陸と海の表情が、静かに変わる。
でも――
今度は、痛みだけじゃない。
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「ああ」
陸が答える。
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「忘れるわけねえだろ」
海も続く。
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空が、ゆっくり頷く。
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「じゃあさ」
少しだけ、優しく。
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「今度こそ、守ろう」
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短い言葉。
でも、十分だった。
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三人で、外に出る。
空は青く広がっている。
風が、少し気持ちいい。
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長男、陸。
次男、海。
三男、空。
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もう、誰も欠けない。
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完璧じゃなくていい。
許せなくてもいい。
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それでも。
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三人で笑えるなら、それでいい。
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これが、三人の“続き”。