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ヌのことが可愛くて仕方ないフリ様の話/フリヌヴィ/ぴゅあぴゅあじゃない、なんならフリ様が若干酷い?かも
「君…ボクのことを可憐で純情な少女だと思っているだろう、」
「それは、自ずと言うものだろうか?」
執務室。ここは、ボクからヌヴィレットへの最初の贈り物。特別な場所。神聖で、華麗で、そんなヌヴィレットによく似合っている場所だと思う。
色とりどりの皿に散らばされた甘いスイーツ。そして、縁を豪華に金色で彩られたティーカップ。いつものアフタヌーンティーの光景だった。1番上の皿にある空のような色のマカロンを、フリーナは指に一つ掴み、ぱくっと口に放り込んだ。何度か咀嚼をしたかと思えば、目を爛々と輝かせて嬉しそうに口角を上げる。
「これ…とても美味しいな!ヌヴィレット、君にもひとつあげよう!」
「いや、私はお心だけ頂戴しておこう。…それで、先程の君の不可解な発言を私に解説してはくれないだろうか」
うーん、とフリーナはその願いに首を数秒傾け、ぺろり、と親指を舐めたかと思えば言葉を発した。
「ふん、簡単なことだ。君のボクを見る目がセドナとか、メリュジーヌを見る目と同じなんだよ。そこが気になる…それだけさ」
「……君、私に理解をさせる気がないだろう。どういうことだ?私の君への視線が他人と違う、と?そのような事実は無いはずだが。私は公正であり、中立だ。君にそのような視線を向けるなど…」
「その事実があるからボクは君に問いかけてるんだよ、ヌヴィレット。本人には自覚がないのに、他人からはそう、見える。君もそんな被告人を幾度となく見たことあるだろう?そのはずさ、最高審判官サマ」
フリーナは挑発するようにヌヴィレットをにんまり、と見つめ頬杖をつく。その行動だけなら悪戯好きな子供のように無邪気で幼稚なのだが、残念ながらフリーナの発言はどうも的を得ている。否定しようにも、自分自身の姿が他人からどう見えているのか、そんなもの神でさえわからないのだ。吐き出そうとした反論を喉に収め、言いにくそうに肩を竦めたヌヴィレットを見て、フリーナはさらに口角を楽しそうにあげた。
「これは事実なんだよ、ヌヴィレット。君は、ボクをメリュジーヌと同じ意識で見てるんだ。旅人にはもうバレてるよ。言質は取れてる。」
何も存在していない空中から、不思議にフリーナは水元素で象られた一冊の本を取り出した。ふと適当にページを開いたかと思えば、きっと今、話していた景色が浮かび上がっているんだろう。最初はぷつぷつと途切れた音声が流れていたが、どうも明細に聞こえるようになってくる。ヌヴィレットはこの先の展開を悟り急激に羞恥心に襲われ目を見開く。そうかと思えば、楽しそうにそれを見つめるフリーナの手を掴んだ。
「君がそれで嫌悪感を感じたのなら配慮が欠けていた。謝ろう。すまなかった、次からは改めよう」
「いーや、別にボクは怒っているわけじゃないんだ。逆にとても嬉しいよ、ヌヴィレット。可愛いってのは褒め言葉としてうけとっていいんだよね?それならいいんだ。それに、メリュジーヌと同じように信頼してくれてるんだろう?そこが1番うれしい」
微かに赤く色づいた自身の頬をフリーナは撫でた。照れくさそうに目線を逸らし、口を尖らせる。それは本当に可憐な少女そのものだった
だがそう思ったのも束の間、ヌヴィレットは顎をつ、と指先で掬われた。
「でも、ボクは君の方が可愛い、と思うな」
「な、にを」
「その反応、本当に初心でかわいい。それじゃあ君の方がよっぽど純情じゃないか。」
魅力的な瞳をフリーナは輝かせ、ヌヴィレットを見据える。これをずっと見ていたらだめだ、と直感で感じ、ヌヴィレットはすっと目線を逸らした。だがそれはすぐにその瞳によって阻まれる。
「だめだよ、ヌヴィレット。ボクを見て。逃げないで。目を合わせて」
そうやって顔を掴まれ、ぐぐぐと強制的に動かされてしまえばもう抵抗はできない。いや、抵抗はしようと思えばできる、のだが。どうにも体が言うことを聞かなかった。これは…
「…いい子だ、ヌヴィレット。君は本当に良い子。かわいい、かわいいボクの水龍。」
これじゃあまるで……
「”私が君を求めてるみたいだ”…だろう?」
「っぁ…?なんで、」
「顔に書いてあるさ、ヌヴィレット。やっぱり君の方が可愛いよ!信じられないくらい、ね!!」
「それは違う、私は……」
「その上着。君はそれを脱ぐととても細くて華奢なこと、ボクは分かっているよ。とても可愛い。でもね、それを他のやつの目の前で見せるのがどうにも許せない。ほら、例えばあのメロピデ要塞の公爵とかね。ヌヴィレットはボクのなのに……」
「……リオセスリ殿は関係ない、この話題に巻き込まないでくれ。それに、話の論点をすり替えるのは辞めないか。私はその話をしようとした訳では無い…」
「うるさいな、いい加減認めなよ。」
「っう…あっ?」
少々説教のようになってしまい、言葉の熱を下げようと図っていれば、唐突に耳を撫でられ、ヌヴィレットは声を上げた。ぱっと口元をヌヴィレットは手で押え、さきの出来事を亡きものにしようとした。が、それは無理だった。なんせ、その行動はフリーナの計算通りだったから。
「耳が弱いこと知ってるよ。真っ赤に染って……かぁわいい。君は肌が白いから、染まると分かりやすいよね。」
「っフリーナ…!流石にやり過ぎだろう。場所を考えてくれないか?」
「そんな真っ赤な顔で怒っても、煽ってるだけだよ。ヌヴィレット、君は本当に……鈍感で馬鹿で。かわいいな」
すり、と太ももに手を擦り寄せられ、思わずソファに倒れ込む。その反動でソファが揺れ動き、落ちそうになった。しかし、それは上へと跨るフリーナの腕で防がれる。それさえ聞けば、紳士的な行動に見えるだろうがヌヴィレットからは全くもって違かった。ぺろり、と舌で唇をなぞり、微笑む彼女の目からは欲が垣間見える。これから起こるであろうことにヌヴィレットは少し脅えながらも、口角を密かにあげていた。それは本人しか知る由もなく。