鍾タル/ただ二人がイチャイチャしてるだけ/ド健全だと言っておきます/捏造しかない
「せんせー!ちょっとお邪魔するよ!」
「公子殿…?」
雨がふりしきる璃月港の無数にある家のひとつ。そこに声が響いた。突然の来訪。そして、聞き慣れた声。しかし、公子殿は事前に連絡をくれる…はずなんだが。もしや……。
「先生、突然ごめんね。来てそうそうなんだけど…体、拭くものとかあったりしない?突然の雨でね、この有様だよ。」
一瞬、曲者かとも思ったが、それは全くもって違かったようだ。いつもとは若干外見は違うものの、優しそうに下がった目尻は己の知っている彼の姿、そのものだった。ふわふわと特徴的な癖っ毛を珍しく濡らし、捨てられた子犬のような目をして入ってきたタルタリヤを見て、鍾離はらしくなく目を見開いた。ぺたり、とタルタリヤの体に張り付く赤色のシャツや、濡れた毛先はどうも目に毒だ。あぁ、良かった。これを他人に見られていなくて。
「……あぁ、今用意しよう。寒いかもしれないが、少しこの部屋で待っていてくれるか?」
「ああ!本当かい、先生?助かるよー!!寒くはないさ、今までのに比べれば相当暖かいしね。」
「む、外の気温と比べられてはどうも対等な勝負の気はしないが……。まあいいだろう、君が寒くないのなら、俺も気にする事はない」
微かに肩を震わせるタルタリヤの横を鍾離はすっ、と通り抜け、少し高い位置にあるタオルを1つ手に取った。滅多に使わないものだったため、多少埃を被っていたような気がしたが、それはご愛嬌、だろう。
「公子殿、これでいいだろうか?」
「あ、先生ありがとう。……脱いでもいいかな?」
「…勿論。衣服を脱がなければ体は拭けないだろう。あぁ、君が体を見られることになにか嫌悪感を持っているのであれば俺は部屋の外に出る。安心してくれ」
「そんなわけないよ!ここの部屋の主に出てけ、なんて。そんな酷い男じゃないよ、俺は」
けらけら、と彼は笑い衣服に手をかけた。脱ごう、としたのだろう。裾を持ち上げる……が、それは途中で止まったようだった。
不思議に思って彼の顔を見れば、にこり、といつもの笑いとは少し違う…いってしまえば悪いことを企んでいる彼の顔だ。それが浮かんでいた。
「……なにか?」
「先生……。先生が脱がしてくれてもいいよ?俺、疲れちゃってさ…もう動けないや……」
「…ふむ……それならば手伝おう。さ、手を退けてくれ」
「ははっ、なんてね。先生、冗談だよ…そんな顔しないで……って、え?」
「何か?公子殿、早く手を退けてくれるか?これじゃあ俺に君の衣服を脱がせるのは無理だ」
そんな愛しい恋人の誘いに乗らない男がいるものか。濡れたシャツに手をかけ、そう彼に話しかければ、彼は動きを止めた。照れているのか?そちらから誘ってきたのに?
「ぇっ…あー……じょうだん、のつもりだったんだけど………。まさか、先生が脱がしてくれるなんて思ってなかったよ」
「据え膳食わぬは男の恥、と言うだろう?それに、公子殿は俺を勘違いしすぎているようだ。俺は目の前の素晴らしい褒美を無視して、冷静に行動できるような者ではない。どうも、見誤っているみたいだな。」
ばっ、とシャツを潜らせて、やっと彼の衣服を脱がせる。眩しいほど白くて、でもきちんと健康的な彼の体が目に異様に染み付いた。見慣れているはずだったその体は、どうも明るいこの部屋ではなにか別次元のような、特別な気がして。これを写真にでも撮っておけば、そこらの女性方には高値で売れそうだな……。
「わ………ぅう…。先生、思っていた反応と違うよ」
「だから。公子殿は俺を甘く見すぎなんだ。今回で反省するといい」
「はぁ、面白くないなぁ」
悪趣味だぞ、と零せば彼は分かっているくせに、とどこか拗ねたような顔で首を傾げた。そんな彼ににこり、と微笑めばきょとんとした顔でこちらを見返してくる。こういうところばかりはかわいらしい。幼子のような顔をして、未だ水滴を垂らす彼に、少しばかり意地悪を。
「公子殿。体も拭いて差し上げようか?ご多忙の君は相当お疲れのようだからな」
「……先生のばか!遠慮しとくよ!!!!」
む、心外だ。
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