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「嬉しい。ふふっ。はい。お待ちしております。鷹夜様……ううん。私だけの旦那様。私は貴方の妻になれて世界一、幸せな花嫁です」
花嫁でした、とは言わない。
では行ってきますと、頬に触れていた鷹夜様の手にちゅっと口付けをする。すると鷹夜様がびっくりして私を見つめていた。
気恥ずかしいけど、鷹夜様を驚かせることが出来た。最後に──触れることが出来たと胸が暖かくなった。
私はそのふわふわした気持ちのまま、その場にとんと跳ね上がり。宙に浮いた。
宙に浮くと屋根上でもがいている、土蜘蛛のところに鳥のように飛んで行く。
まるで背中に翼が生えたようで空を自由に舞うのが心地よく、地面があっという間に下になる。
代わりに周りの屋根が近くなる。
鷹夜様達の姿が小さくなっても、宙に浮いても怖いことなんて、何もなかった。
私は夜風の一部になったように、髪と尻尾を靡かせて、土蜘蛛が壊した屋根の端に足をそっと
置いた。
そして丁度、炎を消して撒き散らした糸で身を起こした土蜘蛛の大きな瞳と視線があった。
鬼面の形相。その金色の瞳。全てが異様な形。その異形が身を震わせる。
またガラガラと病院が崩壊するが、土蜘蛛はお構いなしに身を悶えさせた。
「あぁぁアァ。キュウビ、その輝き。美しい光。
タマモだ。逢いたかった。今コソ、我のものにィィイイイッ!!」
興奮状態で声を上げている土蜘蛛。
私はそれをじっと見つめてから、やるべきことを成そうと思った。
「土蜘蛛。私と同じ妖──おいで」
何もない後ろへと体を躍らせ、くるっと前を向く。病院に背を向けて、さらに宙を跳躍する。
それだけで何十メートルも前へと進む。風をびゅうっと切りながら、また宙を|跳躍《ちょうやく》する。今度はもっと体が前に進む。
後ろを振り向くと、病院はあっという間に後ろになっていた。
ずっと屋上にいた土蜘蛛も巨体を揺らしながら、病院の屋上から大通りへと跳躍して、脇目も振らずに私めがけて動き出したのだった。
※※※
帝都の夜空を駆け抜ける、明るく輝く金色の輝きがあった。まるで小さな太陽の如く眩い。
その光の中心にヒトがいた。
そのヒトは輝く金色の長髪をゆらめかせ。頭には狐のような尖った耳を生やしていた。
金の衣を纏い。黄金より眩しい、立派な九本の尾を背負う──金色の美女。
九本の尾。その美貌を見て、あの九尾の狐かと思う人もいるかもしれない。
しかし。その姿はあまりにも浮世離れしていた。まるで帝都に降臨した天女。
その金色の光は清らかそのもの。 美しいがゆえに、手に触れたくなるような魅力も放っていた。
だからだろうか。
金色の光に誘発されるように、一匹の大きな蜘蛛が巨体を揺らして、まっしぐらに光を追っていた。
帝都の道を壊しながら、光を求める蜘蛛。
光は捕まらないように、ぐんぐんと前に進む。
それは平安絵巻物から飛び出した|御伽話《おとぎばなし》のような光景だった──。