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騎馬戦が終わり、
グラウンドには再び活気が戻っていた。
次の競技は障害物リレー。
Dクラスの代表として、
ひなの名前が呼ばれる。
「甘白さん、頑張って!」
佐倉愛里 の控えめな声援に、
ひなは小さく手を振った。
「ひななら大丈夫!」
軽井沢恵 は身を乗り出しながら叫ぶ。
「転んでも最後まで走り切れば、それだけでかっこいいよ〜!」
桔梗ちゃんの明るい言葉に、
ひなは自然と笑顔になった。
スタート地点に立つ。
目の前には平均台、網くぐり、麻袋跳び。
決して簡単な競技ではない。
観客席からの視線を感じると、
胸の奥に昔の記憶がよみがえる。
中学時代。
人の目が怖くて、
教室へ行けなくなった日々。
たくさんの視線にさらされるだけで、
息が苦しくなったあの頃。
「ひな」
低く落ち着いた声が耳に届く。
振り向くと、
少し離れたテントのそばに 綾小路清隆 が立っていた。
「前だけ見ていればいい」
短い言葉。
けれど、
それだけで視界がすっと開けたような気がした。
ひなは小さく頷く。
「……うん」
スタートの号砲。
ひなは一気に飛び出した。
最初の平均台。
以前の練習では足がすくんだ場所。
だが今は、
綾小路くんの言葉が胸に残っている。
前だけを見る。
一歩、また一歩。
無事に渡り切ると、
クラスメイトたちの歓声が聞こえた。
続く網くぐりでは体操服に砂がつき、
麻袋跳びでは何度もバランスを崩しそうになる。
それでも、
ひなは諦めなかった。
「頑張れー!」
「ひなー!」
友達の声援が、
背中を押してくれる。
最後の直線。
息が上がり、
足は重い。
それでも視線の先には、
バトンを待つクラスメイトたちと、
少し離れた場所で静かに見ている綾小路くんの姿があった。
その存在を確認した瞬間、
ひなの足にもう一度力が戻る。
「お願いします!」
ひなは全力でバトンを渡した。
その瞬間、
胸の中に達成感が広がる。
順位は決してトップではない。
けれど、
最後まで走り切った。
たくさんの人の前で、
自分の力でゴールへつないだ。
テントへ戻ると、
恵ちゃんが勢いよく抱きついてきた。
「すっごくよかった!」
「ひなちゃん、めちゃくちゃかっこよかったよ〜!」
桔梗ちゃんの言葉に、
ひなの目には涙が滲んだ。
「……走り切れた」
それだけで、
胸がいっぱいになる。
少し遅れて、
綾小路清隆 が近づいてきた。
「お疲れ」
たった一言。
けれど、その声には確かな評価が込められていた。
「よくやった」
その短い言葉に、
ひなの瞳から一筋の涙がこぼれる。
「……ありがとう」
綾小路くんはそれ以上何も言わず、
ただひなの頭にそっと手を置いた。
ほんの一瞬の触れ合い。
それだけで、
今日の努力すべてが報われた気がした。
越えていくもの。
それは目の前の障害だけではない。
過去の不安も、
自分の弱さも、
少しずつ乗り越えていく。
その先には、
応援してくれる仲間たちと、
静かに見守ってくれる大切な人がいる。
あたしは、確かに前へ進んでいた。
コメント
1件
ひなちゃん、障害物リレー走り切ったのね…! 本当によかった。平均台のところとか、網くぐりのところ、読んでて「お願い、転ばないで…!」って一緒にドキドキしたわ。特に綾小路くんの「前だけ見ていればいい」、あれがほんとに効いてるなって思った。一歩一歩を確かめるように進んで、最後にバトンを繋いでゴールしたときの達成感がこっちにもじんわり伝わってきた。恵ちゃんの「かっこいいよ〜!」も泣ける。ひなちゃんが見えてる前だけじゃなくて、ちゃんと周りの景色も見えてて、それがすごく成長だよな…って思った。お疲れさま!
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