テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
8,515
#fw受け
こ う
19,673
16
配信終わりの夜。
『くっさん、今日めっちゃ静かじゃね?』
「は?普通だろ」
いつも通りの軽いやり取りのはずなのに、どこか葛葉の様子が違う。
落ち着きがないというか、そわそわしているというか。
『なんか隠してるだろ』
「隠してねぇし」
即答。でも目は逸らす。
ローレンはじっと見つめて、ため息をついた。
『わかりやす』
「うるせぇな…」
少しだけ不機嫌そうに言いながら、葛葉は机の引き出しを開ける。
「…これ」
ぽいっと投げられた小さな箱。
『なにこれ』
「開けろ」
言われるままに開けると、中に入っていたのは——
小さなティアラ。
シンプルだけど、キラキラと光るそれは妙に綺麗で、ローレンは一瞬固まった。
『……は?』
「似合うと思って」
さらっと言う葛葉。
『いや、なんでティアラ?』
「ノリ」
『ノリで買うもんじゃねぇだろ』
思わずツッコミながらも、ローレンはそれを手に取る。
軽い。けどちゃんと作られている。
『…これ、普通にちゃんとしてるやつじゃん』
「当たり前だろ。適当なの嫌いだし」
そう言って、葛葉は立ち上がる。
そしてそのままローレンの前に来て——
「ちょい貸せ」
『え、ちょ』
手からティアラを取って、そのままローレンの頭に乗せた。
少しだけ髪を整えて、位置を調整する。
指先が髪に触れて、くすぐったい。
「…っは、やば」
小さく漏れた声。
『なにが』
葛葉は数秒、じっとローレンの顔を見つめてから——
「似合いすぎだろ」
『は?』
「いや、やばい。普通にやばい」
語彙が崩壊している。
『ちょ、くっさん』
「なにその顔。かわいすぎんだろ」
『は!?』
一気に顔が赤くなるローレン。
「いやマジで、想像の3倍かわいい」
『やめろって』
「なんで?事実じゃん」
距離がどんどん近づく。
葛葉の目は完全に“それ”だった。
『ちょ、見んなそんな』
「無理。無理だわこれ」
『は?』
葛葉は片手で口元を押さえながら、ローレンをじっと見ている。
「やばい、なんか変な感情出てきた」
『怖いんだけど』
「かわいすぎて壊したくなるやつ」
『それアウトだろ』
即ツッコミ。
けど、葛葉は止まらない。
「そのまま動くな。今めっちゃいい」
『よくねぇよ!』
顔を隠そうとするローレンの手を、葛葉が軽く掴む。
「隠すなって」
『いや無理、恥ずい』
「なんで?かわいいのに」
『だからそれが恥ずいって言ってんの!』
完全に真っ赤。
耳まで染まっている。
葛葉はそれを見て、さらにテンションが上がった。
「耳まで赤いじゃん。なにそれ、反則だろ」
『くっさん!!』
「写真撮りてぇ…」
『やめろ!!』
慌ててティアラを外そうとするローレン。
けど、その手をまた止められる。
「外すな」
『なんでだよ』
「もうちょい見てたい」
『無理』
「一分」
『長い』
「30秒」
『…長い』
交渉みたいになってる。
結局、ローレンは観念したように肩を落とした。
『…10秒だけ』
「短すぎだろ」
『これ以上は無理』
しぶしぶ納得した葛葉は、またじっと見つめる。
その視線がまっすぐすぎて、ローレンは完全に目を逸らした。
「……ほんと似合うな」
ぽつりと、さっきより少し落ち着いた声。
『…っ、もういいだろ』
「あと5秒」
『カウントすんな!』
怒鳴る声もどこか照れている。
やがて、ローレンは勢いよくティアラを外した。
『もう終わり!』
「えー」
『えーじゃねぇよ!』
それでも、ティアラはしっかり手に握ったまま。
葛葉はそれに気づいて、少しだけ口角を上げた。
「気に入ってんじゃん」
『……うるせぇ』
そっぽを向くローレン。
その耳は、まだ赤いままだった。
コメント
2件

マジで良すぎて何回も見てる👀
うわああ、めっちゃ良かったです……!配信終わりのほの暗い夜の雰囲気から、急に贈り物で空気が変わる感じがすごく好きでした。特に「似合いすぎだろ」「かわいすぎて壊したくなる」って葛葉さんが冷静じゃなくなってるのがいいですね。ローレンさんが「10秒だけ」って折れるとこ、絶対気に入ってるのに照れてる感じが伝わってきて微笑ましかったです。お二人の距離感がじわじわ縮まるのがたまらない回でした!