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第12話:暴かれる聖域、盾となる背中
「ユズル! スマホ見ないで! 今すぐ電源切って、押し入れにダイブして!!」
ウタゲが悲鳴を上げながら、リビングに突進してきました。
画面には、数時間前に投稿された検証画像。
ユズルがMVで着ていた私物のパーカーの「糸のほつれ」と、かつてシキがSNSにアップした自撮り写真の背景に映り込んでいた服が、完全に一致してしまったのです。
「……あー。……また、ほつれてる。……姉さん。……これ、縫って」
「縫ってる場合じゃない! 玄関先にパパラッチが来てるの!!」
ユズルはいつものように無気力でしたが、外から聞こえる無数のシャッター音と怒号に、わずかに眉をひそめました。
「……うるさい。……耳が、痛い。……僕、もう……外、出られない?」
その時、ガタッと椅子を蹴立てて立ち上がったのは、多聞でした。
ジメ原さんモードの弱気さは微塵もなく、その瞳には、大切な居場所を汚された者特有の静かな怒りが宿っています。
「……ユズルくん。大丈夫だよ。君の『静かな世界』は、僕たちが守るから」
多聞は迷うことなく、自分の上着をユズルの頭からすっぽりと被せました。
「多聞くん……。……暗い。……前、見えない」
「見なくていいよ。僕だけを見てればいいから」
「おい、多聞! 一人でカッコつけてんじゃねーよ!」
桜利が玄関の鍵を二重に締め、仁王立ちになります。
「ユズル! お前は奥の部屋で寝てろ。あのアホ共は、俺が全員怒鳴り散らして追い返してやる!」
二人はユズルを左右から挟むようにして、外の世界から遮断しました。
F/ACEのメンバーにとって、シキは憧れの存在であり、そしてユズルは、自分たちの心を救ってくれた、かけがえのない「家族」のような存在。
「……二人とも。……顔、怖い。……でも。……ありがとう」
ユズルは多聞の服の裾をぎゅっと掴み、その胸に顔を埋めました。
「……あ。……多聞くん。……柔軟剤、変えた? ……お花の、匂い。……落ち着く」
「ユズルくん……っ! こんな時まで、君は……!」
多聞の独占欲と守護本能が、限界まで跳ね上がります。
外の喧騒をよそに、ハウス内ではユズルを巡る「保護者」たちの絆(と執着)が、より一層深まっていくのでした。
「ユズル……! アンタを守るためなら、お姉ちゃん、肉の壁にだってなるわよ!!」
ウタゲがフライパンを持って玄関に陣取る中、ユズルは多聞の腕の中で、久しぶりに深く、静かな眠りにつきました。