4月になり、日曜日に颯ちゃんの休みができた。
3月以外は隔週で日曜日の休みがある。
この前のお泊まりの翌週定休日にもこちらへ来てくれた颯ちゃんは、佳ちゃんを連れて来てくれた。
近くの居酒屋で乾杯をして3人で食事をすれば、やっぱり何ヵ月も会っていないという気はせず、過保護な二人が時折兄弟漫才のようにじゃれあうという楽しい時間を過ごした。
ただ想定外だったのは、佳ちゃんが酔ってしまったこと。
俺の泊まりが……と、ぶつぶつ文句を言いながらも、颯ちゃんは佳ちゃんを連れて帰って行った。
「リョウ」
日曜日、いつもの最寄り駅よりも賑やかな駅で待ち合わせをした私たちは、買い物をする予定だ。
もちろん、うちへ置く颯ちゃんのものを。
「おはよう、颯ちゃん。まだ少し寒いね」
「ちょっと上着いるよな。ん、行くぞ」
彼は私の手をぎゅっと握ると、お目当てのショッピングビルを目指す。
都会らしい人混みの中で、私は自分で行き先の方向すら確認することなく、ただ颯ちゃんに導かれビル内に入った。
私たちの目的のお店は、300円均一のお店。
ここで食器類などを購入予定だ。
「何でもあるな」
初めてらしい颯ちゃんは、感心したように店内を見渡し商品を手にする。
「300円なんてって…て言ってたの取り消す?」
「取り消すわ。リョウの言う通り、300円で十分」
「でしょ?500円のもあるけどね」
23歳の私たちの生活には、百貨店などではなくここが身の丈に合ったお店だと思うんだ。
颯ちゃんも十分と言ってくれて良かった。
金銭感覚が大きく違うと大変だと思うから。
「颯ちゃん、バスタオルは少し小さいと思わない?これはどこか違うところで見る?」
500円のバスタオルは、ふかふか生地だけど小ぶりのようだ。
「拭けたらいい…これでいいんじゃないか?」
「体が包めないと思うよ」
「大丈夫」
「そう?」
バスタオルの他に食器類はお箸からコップ、お皿やお茶碗…全てが一人分しかなかったので、買い物袋はちょっとした量になったけど、颯ちゃんが持ってくれるので問題ない。
「腹減った」
「1時過ぎたからね」
私たちはレーンの上でクルクル回る寿司を並んで食べながら、相談をする。
「夕食は何にしようか?」
「リョウが作ってくれるのか?」
「何にしようかというほど…あんまりやらないの…簡単なものだけしか作れないよ」
「いい」
「じゃあ、一旦帰って荷物置いてからスーパーに行くね。ちょうど休日は買い物しておきたいし」
「荷物持つから買いだめできるぞ」
「お願いしまーす」
お腹いっぱいになったところで店を出る。
待ち合わせをした駅まで向かい、最寄り駅まで電車に乗るつもりなのだが…地下にある駅へ降りようとしたとき呼び止められた。
「えっ…ヨシコ……?ヨシコじゃないっ!」
その声には聞き覚えがあった。
ただ記憶の中では‘リョウコちゃん’と呼ぶ彼女の声で‘ヨシコ’と言われるのは、慣れない。
しかも‘ヨシコさん’と言う人はたくさんいたけど‘ヨシコ’と呼ぶ人は誰一人いなかったんだ……あの日までは。
コメント
2件
せっかく新婚さん気分で楽しんでたのに…もう😤 縁切りされた…うーん名前なんだっけ?わーすれちゃった〜🤣 颯ちゃんガツっと一発再起不能になるくらいの一言を夜露死苦(キ ̄Д ̄)y─┛~~~ リョウちゃんも踏ん張って吹き飛ばそう〜(๑و•̀Δ•́)وガンバレ!!!できるよっ!!!
うわー最悪😱ここで会うなんて💦でも颯ちゃんが一緒の時で良かった!