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#いわなべ
おその★
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すのまみれ
412
みら

259
932
その日。
阿部は一人リビングでゆっくり過ごしていた。
「何観ようかな。」
動画配信サービスを眺めていると、何年か前に目黒が出演していた映画が目に留まった。
「懐かしい。」
阿部は再生ボタンを押す。
画面の中の目黒は、若く、それでも今と変わらない優しい笑顔を浮かべていた。
物語が進み、目黒演じる夫が、妻役の女優と幼い娘と三人で手をつないで歩く場面になる。
夕日に照らされながら笑い合う家族。
どこにでもありそうな、温かい日常。
阿部はその光景を静かに見つめていた。
目黒は子どもが好きだ。
撮影現場でも、子役の子たちとよく遊んでいる。
事務所でもジュニアの子たちに優しく接している姿を何度も見てきた。
自然と笑顔になって、同じ目線で話して。
いつも楽しそうだった。
(めめ、本当に子ども好きだよね。)
阿部はふっと笑みを浮かべる。
そして、その笑みは少しずつ消えていった。
(もし。)
(めめが普通に恋をして。)
(綺麗な女の人と結婚して。)
(子どもが生まれて。)
(温かい家庭を築いていたら。)
そんな未来も、あったのかもしれない。
胸の奥が苦しくなる。
目黒は今も、惜しみない愛情を阿部へ注いでくれている。
毎日「大好き」と伝えてくれる。
どんな時も隣にいてくれる。
それなのに。
心のどこかで、時々考えてしまう。
(俺は。)
(籍を入れられるのかも分からない。)
(子どもも産めない。)
(紛い物の身体。)
その言葉が頭に浮かんだ瞬間、自分で自分を責めたくなった。
(こんなこと考えちゃだめだ。)
(めめは何も言ってない。)
(全部、俺が勝手に考えてるだけ。)
それでも、映画の中で幸せそうに笑う目黒を見ていると、その考えは消えてくれなかった。
阿部は静かにリモコンを手に取る。
映画はまだ途中だった。
けれど、再生を止めた。
画面が黒くなる。
部屋は急に静かになった。
阿部はソファにもたれ、小さく息を吐く。
「……だめ。」
「こんなこと考えちゃ。」
そう呟くと、膝を抱えるように丸くなり、静かな部屋で一人、窓の外をぼんやりと見つめていた。
___________
それから数日間。
目黒の仕事は以前にも増して忙しくなっていた。
朝早く家を出て、帰ってくるのは日付が変わる頃。
一緒に朝食を食べることも、夕食を囲むことも少なくなった。
それでも目黒には、毎朝欠かさないことが一つあった。
玄関へ向かう前に、阿部の左手をそっと握る。
薬指で光る指輪を見つめて、小さく微笑む。
「行ってきます、あべちゃん。」
阿部も笑顔で頷く。
「行ってらっしゃい、めめ。」
軽くキスを交わし、目黒は仕事へ向かう。
その後ろ姿を、阿部は毎朝見送っていた。
___________
一人になる時間が増えた。
それでも阿部は、自分に言い聞かせる。
(考えすぎちゃだめ。)
(めめは毎日帰ってきてくれる。)
(ちゃんと『好き』って言ってくれる。)
だからこそ、目黒が帰ってくるたびに、阿部は今まで以上に笑顔で迎えた。
「おかえり。」
「今日もお疲れさま。」
「無理しすぎてない?」
目黒が少しでも疲れた顔をしていれば、温かい飲み物を用意する。
「大好き。」
そんな言葉も、照れながら少しずつ口にするようになった。
目黒はそのたびに嬉しそうに笑っていた。
けれど。
阿部の心の奥にある不安は、消えたわけではなかった。
誰にも気付かれないように。
目黒にも気付かれないように。
心の奥へ押し込め続けた。
その頃からだった。
食欲が少しずつ落ち始めた。
朝は食パンを半分。
昼も軽く済ませるだけ。
夜も、「今日はあんまりお腹空いてなくて」と笑ってごまかした。
(夏バテかな。)
そう自分に言い聞かせる。
今年は暑いから。
疲れもあるから。
そう思えば納得できた。
目黒も忙しく、帰宅時間が遅い日が続いていたため、二人で食事をする機会は以前より少なくなっていた。
___________
数日後。
阿部は一人で家にいた。
スマートフォンのニュースアプリを何気なく開いた瞬間、阿部の手が止まった。
『人気俳優・目黒蓮、人気女優とのツーショット』
大きく掲載された写真。
仕事現場らしき場所で、目黒と人気女優が並んで歩いている。
一瞬だけ、呼吸が止まる。
(……。)
その直後、目黒から電話がかかってきた。
阿部はすぐに通話ボタンを押す。
「もしもし。」
『あべちゃん!』
目黒の声は焦っていた。
『ごめん。』
『先に俺から説明させて。』
阿部は静かに耳を傾ける。
『今ニュースになってる写真。』
『あれ、ドラマの打ち合わせが終わったあとに撮られただけなんだ。』
『スタッフも周りにいたし、本当に仕事だけ。』
『変なことは何もない。』
『誤解されるような写真になっちゃっただけだから。』
必死に説明する目黒の声。
阿部はその声を聞きながら、小さく笑った。
「うん。」
「信じてる。」
その一言に、電話の向こうで目黒は少しだけ安心したように息を吐いた。
『ありがとう。』
『仕事終わったらすぐ帰る。』
「うん。」
「待ってるね。」
通話が終わる。
阿部はスマートフォンをゆっくりと置いた。
鏡に映る自分を見る。
ちゃんと笑えている。
大丈夫。
めめは疑っていない。
自分には、何かを隠そうとすると出てしまう癖があることを知っていた。
だから今日は、その癖が出ないように。
目黒に心配をかけないように。
いつも通りの笑顔を浮かべ続けようと、静かに心に決めた。
コメント
4件

何か一つ見つけてしまっては 1人で落ち込んで奥底に溜め込んで どんどん沼にハマって行く そして又 追い打ちをかける様に出てくる 🖤が💚を1番に思ってるのは解って居るけど それでも… 不安になるんだね。 続き待ってます♪
何で💚に次々と試練が来るの😢🖤の想いも愛情も全部💚のもの自信を持って、女の人と結婚しても絶対子供が出来るとは限らない🖤は💚の不安を払拭する為にもフランスで結婚式を挙げちゃえ