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kaede🍁
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りゅず
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目黒は、あの日から少しだけ阿部のことが気になっていた。
「本当に大丈夫?」
仕事へ向かう朝。
靴を履きながら何気なく尋ねる。
阿部はいつもと変わらない笑顔を向けた。
「大丈夫だよ。」
「めめの方こそ忙しいんだから、ちゃんとご飯食べてね。」
その笑顔は、今までと何も変わらない。
だから目黒も、「分かった。」と微笑み返し、家を出るしかなかった。
___________
阿部は、自分でも驚くほど自然に笑えるようになっていた。
「おかえり。」
「お疲れさま。」
「今日も頑張ったね。」
そんな言葉をかけるたび、目黒は嬉しそうに笑う。
その笑顔を見ると、阿部は少しだけ安心した。
胸の奥で渦巻く不安も、寂しさも。
全部、自分だけのもの。
目黒は仕事を頑張っている。
これ以上心配を増やしたくなかった。
___________
目黒がスーツケースを準備していた。
「明日から一週間、地方なんだ。」
「うん。」
阿部は畳んだ服を手渡しながら頷く。
「ちょっと長いね。」
「ごめん。」
「終わったらすぐ帰ってくるから。」
目黒は阿部の指輪をそっと撫でる。
「毎日電話する。」
「無理しなくていいよ。」
阿部は優しく笑った。
「仕事優先で。」
「俺は大丈夫だから。」
その言葉に目黒は少しだけ安心したように微笑む。
翌朝。
玄関でいつものように見送りをする。
「行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
阿部は笑顔で手を振った。
ドアが閉まる。
足音が遠ざかる。
静かになった家の中で、阿部はその場に立ち尽くした。
そして。
ふっと肩の力が抜けた。
「……よかった。」
その言葉が口からこぼれた瞬間、阿部は自分で自分に驚いた。
(今……。)
(安心した?)
目黒がいなくなって。
安心した。
その事実が胸に突き刺さる。
「最低だ……。」
阿部はその場にしゃがみ込んだ。
(めめは何も悪くないのに。)
(俺のこと、あんなに大事にしてくれてるのに。)
(なのに……。)
一緒にいると、笑顔を作り続けなければならない。
心配をかけないように。
不安を悟られないように。
その緊張が、知らないうちに心を張り詰めさせていた。
だから一人になった瞬間、力が抜けてしまった。
そんな自分が許せなかった。
「最低。」
誰もいない部屋に、小さな声だけが響いた。
___________
それから数日。
阿部は少しずつ体調を崩していった。
朝起きても身体が重い。
食欲もほとんどない。
夏バテ、そう自分に言い聞かせる。
病院へ行くほどではない。
水分だけはちゃんと摂ろう。
そう思って過ごしていた。
目黒との電話では、いつも通り笑った。
「今日は何食べたの?」
『ちゃんと食べたよ。』
「仕事どうだった?」
『順調。』
「よかった。」
嘘はついていない。
“少しだけ”食べた。
“何とか”過ごせた。
言葉は間違っていない。
けれど、本当の自分を話しているわけでもなかった。
電話を切るたびに、阿部は静かな部屋で一人、溜め息をつく。
少しずつ弱っていく身体を抱え、一人きりの時間を過ごしていた。
コメント
1件
うわ、第2話めっちゃ切ない…!阿部くん、めめに心配かけまいと笑顔を保ち続けてるけど、その裏で「安心した」って自分に気づいちゃうシーンが胸に刺さったわ。優しさの裏返しで自分を責めちゃうところ、リアルで辛い。体調崩してるのに電話では平気なフリ…めめが帰ってきたときにどうなるんだろう。続きすごく気になる🔥