テラーノベル
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背伸びをして、洋服の裾で宇野の涙を拭う。「なぁ、ここら辺に公園あったよな」
「え?….うん。」
「宇野が時間まだ大丈夫ならさ、そこで話さない?」
道の真ん中で長話をする訳にはいかないので、自分が思いつく最善の提案をした。
俺の提案に宇野は頷き、ふたりで公園に向かった。
俺が言い淀んだせいで相当不安にさせたのか、宇野はその道中片時も俺の手を離さなかった。
公園につき、街灯の真下に置かれたベンチにふたりで腰をかける。
「…..なあ、さっきのってやっぱ、本気だよな。」
宇野は夜風にあたって頭が冷えたのか、表情や声色はいつも通りに戻っていた。
「….うん。本気だよ。」
「その….さ、言いたくなかったらいいんだけど….。俺たちって話し始めたの最近じゃん。なんで俺のこと好きになってくれたん?」
気になっていたことを口に出すと、宇野はしばらく黙ってからポツポツと呟くようにして話し始めた。
「確かに、面と向かって話せたのは2年になってからだけど….俺は1年の頃から来橋のこと知っててさ。」
「え?そうだったの」
思いもよらない事実に、素直に驚く。
「うん。去年の冬、購買の近くで来橋と男バレの人達が話してるの聞いちゃって。盗み聞きするつもりはなかったんだけど、俺の名前が出てたから目の前を通り過ぎるのも気まずくてさ。」
そんなことあったか?と思考を巡らせるも、授業の内容さえ30分後には忘れる俺の脳みそは全く機能しなかった。
そんな俺の様子を見てか、宇野は柔らかい笑みを浮かべ俺の頭を撫でた。
「男バレの人がさ、来橋に「宇野影人ってどう思う?」って聞いてたんだよ。美人教師と付き合ってたらしいとか、許嫁の女優がいるらしいとか、根も葉もない噂話を付け加えながら。」
「あー……….そんなことあったような…なかったような….」
宇野に関する話は毎日どこかしらで耳にするため、何となくどこかでそんな噂話は聞いたような気はする。
「俺さ、見た目で好意を寄せられることはあっても、中身まで好いてくれる人はあんまり出会ったことなくて。特にこういう陰でされる自分の話とかに何度も傷つけられたから、少し身構えてたんだけどね。来橋は当たり前のように、「そんな噂話信じてたらお前将来変な壺買わされるぞ、俺に。」って。人の陰口なんて高校生にとって1番魅力的なはずなのに、来橋は普通に友達を叱ってくれてさ。それがどうしようもなく嬉しくて、気になって。話しかけるきっかけ探してたら、あっという間に2年になっちゃって、人混みの中でぴょんぴょん跳ねる来橋を見つけた。」
あぁ、、だからあの時不自然にも助けてくれたのか、、、、と心の中で伏線が回収されていく。
「そこから仲良くなって、来橋の優しさとか可愛さとか、その全部に惹き込まれた。好きだよ、来橋。」
宇野は、確かめるようにゆっくりと伝えてくれた。
俺は宇野の言葉を受け、目を瞑って考えた。
俺は、宇野が笑っていると嬉しくて、他人には無愛想なのに俺にだけは甘ったるいくらい優しくしてくれるところを、何度も可愛らしく思った。
もし、今宇野が絶世の美女に告白されたとしたら。
チクリと胸が痛んだ。
俺は、胸を張って宇野の気持ちに応えたい。宇野を好きだと、確信を持ちたい。
目をあけると、不安そうな顔で俺を見つめる宇野が一番に視界に入った。
「ごめん….やっぱ気持ち悪いよな。男同士だし。」
宇野は心底申し訳なさそうにそう言った。
「まずさ、1ミリも気持ち悪いなんて思わないよ。最初はそりゃ動揺したけど、宇野が俺を想ってくれてるのが心底嬉しい。…でさ、正直な話。今の俺は、宇野を好きだって胸を張って言えない。だけど、自信を持って宇野の恋人を名乗りたいって気持ちは確かにあってさ。だから、その….」
まずい。頭の中では整理できたと思ったのに、いざ伝えるとなると焦って上手い言葉が見つからない。
すると宇野は、蕩けそうな程の笑顔で言った。
「….それって、俺はまだ諦めなくていいってことで合ってる?」
「うん」
我ながら即答だった。
「….抱きしめていい?」
真っ赤になった俺の耳を触りながら、尋ねてきた。こくりと頷くと、大きくていい匂いのする体に全身を包まれた。
今度は迷いなく、俺も宇野の腰に手を回した。
「来橋、まだ答えは出さなくていいよ。俺これからもっともっと…好きを伝えたい。いくらでも待つよ。」
宇野は、優しい言葉を、優しい声に乗せて伝えながら俺を撫でる。
宇野の肩に顔を埋めて、「うん、ありがとう」と返事をした。
それから何分抱き合っていたかは分からない。
野良猫がにゃーと鳴いたのを合図に、俺達は緩みきったお互いの顔を見て笑って、再び帰路についた。
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