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「うわぁ! くるまいっぱい!!」


車の玩具の博物館へ辿り着いた私たち。


『車の玩具が沢山あるよ』と言いながら凜を起こすとすぐに起きて中へ入るや否や、様々な種類の車の玩具を前にした凜は瞳を輝かせながらはしゃいでいた。


「おにーちゃん、これみて!」

「ん?」

「これ、ずかんにのってたやつだよね?」

「おー、そうだな。凜は覚えが良いな」

「これも!」


いつも色々な図鑑を竜之介くんと一緒に見ているからか、竜之介くんを手招きした凜は『これは図鑑で見た、あっちも』と言いながら楽しそうに玩具を眺めている。


さっき、観覧車の中で竜之介くんは言ってくれた。


“俺の未来には亜子さんと凜が居てくれないと駄目なんだ”と。


私も、竜之介くんが居てくれないと嫌だ。


凜にも竜之介くんは必要。


私たちは互いを必要としている訳で、離れる理由はどこにも無い。


彼が全てを捨てででも私や凜を選んでくれると言うならば、勿論簡単な事じゃないのは分かっているし、現実的でない事も重々承知しているけれど、私も覚悟を決めようと思った。


こうして三人で過ごす幸せな時間を誰にも奪われたくない。


その為には、私も覚悟を決めなければならない。


(竜之介くんのご両親には申し訳ないけど、きちんと伝えよう。私には別れる意思がない事を……)


どんなに恨まれようと、罵られようと構わない。


竜之介くんが私と凜を選んでくれるなら、何も怖くない。


「竜之介くん、私ちょっと、お手洗いに行ってくるから凜の事お願いね」

「うん、分かった」


楽しそうにはしゃぐ凜を竜之介くんに任せた私は『お手洗いに行く』と伝えてその場を離れると外へ出て、この前貰った連絡先に電話を掛けた。


『――はい?』

「あ、あの、八吹ですが……」

『ああ、八吹さん。電話をしてきてくれたという事は、答えが出たという事かしら?』

「はい」

『そう。それで? 竜之介とは別れて頂けるのかしら?』


電話の相手は竜之介くんのお母様で、彼女は私が彼と別れる決断をしたと思っているようで声がどこか嬉しそうに聞こえる。


そんな彼女を思うと些か心苦しい。


子を思う親の気持ちは痛い程よく分かるから。


心の中で『ごめんなさい』を繰り返しながら私は――


「すみません、あれから何度も考えましたが、やはり私の気持ちは変わりません。例えどんな事があっても、竜之介くんと離れる選択は、ありません。凜の事も、しっかり考えた上の結論です」


竜之介くんと別れるつもりが無い事をハッキリ告げた。


『――あらそう、そうなのね。貴方の気持ちは分かりました。それでは、こちらもそれ相応の対応をさせていただきますので、そのおつもりで。では、失礼』


私の返事を聞いたお母様の声のトーンは下がり、明らかに怒っている様子で『分かりました』と伝えられた後、一方的に電話は切られてしまった。


こうなる事は、承知の上。


ただ、これから何をされるのかは分からない。


竜之介くんとの縁を切るような事を言っていたけれど、果たしてそれは本心なのか、それとも、何か別の策を考えているのか。


何にしてももう、引き返す事は出来ない。


どんな困難にも立ち向かう、ただそれだけ。


暫く画面が暗くなったスマホを見続けていると、急にパッと明るくなる。


「……良太くん?」


それは良太くんからの着信を知らせるもので、私は急いで通話ボタンを押して電話に出た。


「もしもし?」

『あ、亜子さん、久しぶり』

「久しぶり。あの、どうかした?」

『ああ、うん。実は店長から頼まれて代わりに電話したんだけど、例の亜子さんにちょっかい出して来た男たちが今日また店に来てさ、店で揉め事起こしたから警察呼んでこれまでの経緯も話したら、相手には今後店に近付かない事と、警察が近辺のパトロールを積極的にしてくれる事になったから、ひとまず店周辺の安全は保証されたよって事を伝えたくて』

「そうなの? そっか……」

『だから、亜子さんさえ良ければ早めに復帰してくれても良いって店長が言っててさ。どうかな?』


仕事については、色々と迷惑を掛けてしまって申し訳無いなと思っていた。


安全が保証されたというのなら、すぐにでも復帰したいと考えたけれど、ここはやっぱり竜之介くんにも相談するべきだと思い留まり、


「あの、彼にも相談してみるから、明日、私の方から店長に直接電話するよ。わざわざ連絡くれてありがとうね」

『分かった、それじゃあ店長にはそう伝えておくね』

「うん」


ひとまず保留にして明日私の方から再度連絡すると伝えて電話を切った。

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