「ただいま。」
大好きだよ そう言い残した彼は、ついさっきまでそこにいたのに、散ってしまった。
まってよ
あれ……?夢だったのだろうか。随分昔の夢を見たな。
僕はこの街で警官をやっている、弥生さ。
××にて事件発生 直ちに向かえ 繰り返す…
今宵もまた 事件は起こる。
もー、なんで毎年クリスマスに事件おこんだよぉ、彼氏とデート行けねーんだけどー?
そう言うのは同期、心月だ。彼女はいつもこんなことを言うが、真面目だ。
うわー、ひでぇなこりゃ……
頭部の損傷が激しい。まぁつまりグロいって事さ。
キミが第1発見者?
なんの躊躇いもなく聞いてしまった。この1つの行動が間違いだったのさ……。
はー、さむ。そんなことを思いながら日課の、夜の公園を散歩する。暑くても寒くても、ここは心を落ち着けられる。
……あんたですよね
今日どこかで聞いた声で、尋ねられた。
第1発見者だ。
はい、そうですとは言えなかった。言いたくもなかった。何故ならとんでもない殺意を感じたからだ。
僕の体は凍りつく。彼女はとても、とてもとてもとっても、怒りを纏っていた。
たすけて そんな感情が浮かんだ。元はと言えば僕が悪いのに、勝手に逃げようとするなんて、最低だ。
私は心月、この街で警官をやっている!
××にて事件発生 直ちに向かえ 繰り返す…
昨日も一昨日も聞いたアナウンス。そして向かった。でも違和感があった。そう、弥生が居ないんだ。
現場にもいない。おかしいなとは思ったが、まずは目の前のことに専念しよう、そう思い布をめくった。その時だった。
弥生だ。被害者は弥生だったんだ。
あまりの衝撃に言葉を失う。そして、ふと我に返った。
捕まえろっ!!容疑者だっ!!!
何だ、騒ぎだ。駆けつけると、恐らく弥生を刺したと思われるナイフを持った女が必死に逃げている。
許さない、その一心で私は走った、走り続けた。そしてその手を掴み取った。
やはりそうだ。あいつが犯人だった。あいつは昨日の事件の第1発見者であり、犯人だったそうだ。
あれ……?目が覚めるとそこは、12月とは思えないほど暖かく、どこか懐かしい場所だった。
あ、弥生ちゃん!
聞き覚えのある声だ。何度も何度も、何十年も前から聞いているその声。
ここに来てしまったのは残念だけど……おかえり。
ただいま。
「ただいま。」―終―
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