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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第17話 〚守られている違和感〛(澪視点)
守られている。
そう、分かっている。
◇
保健室のベッドの上。
白い天井を見つめながら、澪はゆっくりと呼吸を整えていた。
胸の奥に残る、
あの“心臓を掴まれるような痛み”は、
もう引いている。
……なのに。
(変だ)
安心していいはずなのに、
心のどこかが、ずっとざわついていた。
◇
カーテンの向こうから、声が聞こえる。
「無理させないでくださいね」
保健室の先生の、落ち着いた声。
「はい。俺、ちゃんと見てますから」
海翔の声。
その一言だけで、
胸が少しだけ、温かくなる。
◇
(守られてる)
担任も。
保健室の先生も。
えまも、しおりも、みさとも、玲央も。
そして――海翔も。
こんなに、
たくさんの人がいる。
◇
なのに。
(……どうして)
あの予知が、
はっきりと“見えすぎていた”こと。
恒一の視線。
りあの笑顔の裏。
カフェで向かい合う二人。
――全部、繋がっていた。
◇
「澪?」
カーテンが、そっと開く。
海翔が、少し心配そうな顔で立っていた。
「大丈夫?」
「無理してない?」
澪は、ゆっくり頷く。
「……うん」
「もう、平気」
嘘ではない。
でも、本当でもない。
◇
海翔は椅子に座り、
ベッドの横で視線を合わせた。
「なにかあったら、すぐ言って」
「一人で抱えなくていいから」
その言葉に、
胸がぎゅっと締めつけられる。
(どうして、こんなに優しいの)
◇
予知の中で見た未来。
海翔は、
“守れない位置”にいた。
近くにいるのに、
届かない距離。
(……それが、一番怖い)
◇
「海翔」
澪は、小さく名前を呼ぶ。
「私……」
「守られてるの、分かってる」
海翔は黙って聞いている。
「でも」
澪は目を伏せた。
「それでも、不安になる時がある」
◇
海翔は少しだけ驚いた顔をして、
それから、優しく笑った。
「それ、普通だと思う」
「守られてるからって、怖くなくなるわけじゃない」
「怖いって思えるのは、ちゃんと考えてる証拠だよ」
その言葉に、
澪の胸の奥が、静かに震えた。
◇
(……ああ)
私は今。
“守られている”ことに
慣れてしまうのが、怖いんだ。
◇
もし、
この安心に油断したら。
もし、
予知を「大丈夫」に変えてしまったら。
――その時こそ、
本当に何かが起きる気がする。
◇
「ありがとう」
澪は、はっきり言った。
海翔は少し照れて、
視線を逸らす。
「どういたしまして」
◇
その瞬間。
澪の胸の奥で、
ほんの小さな違和感が、再び鳴った。
痛みはない。
でも。
(……近い)
まだ形にならない“何か”が、
静かに、近づいている気がした。