夕食まで少し時間があったので、私たちはリビングで向き合って話していた。まるで……
初対面のときの鋭い視線や冷たい態度が嘘みたいに。
距離も、気持ちも、知らん間に近くなってた。
「……あのな、末澤さん」
【ん?】
「私、こう見えて……昔、男性恐怖症やってん。だから、末澤さんが“女嫌い”って言ったとき……。なんか、昔の自分に似てるなって思って。放っとかれへんかった。」
【……。】
末澤さんがゆっくりと瞳を伏せた。
【……ごめんな。俺、何も知らへんのに……お前に酷いこと言った。】
「大丈夫。そりゃ、ちょっとだけビビったけど……」
私は笑ってみせる。
「別に、女嫌いでもええよ?だって今こうして、普通に話せてるやん。」
【……ほんま、不思議やわ。】
末澤さんは小さく息を吐きながら私を見る。
【なんでか知らんけど……お前見てると安心すんねん。ていうか……逆に、守りたくなるっちゅうか……】
「守りたい……?」
思わず聞き返すと、彼はほんの少しだけ照れたように視線を逸らした。
【……うん。お前、不安そうな顔してるから。見てたら……ほっとけへん。】
「……っ」
胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
言葉が返せなくて、つい俯いてしまった。
静かな沈黙が流れた、そのとき。
【……なぁ】
呼ばれた気がして顔を上げる。
気づけば、末澤さんの顔がすぐ目の前にあった。
「……えっ」
次の瞬間。
柔らかな何かが、私の唇に触れた。
ほんの一瞬。
でも、間違いなくキスだった。
心臓が跳ね上がる。
【……何があったか知らんけどな。お前が、そんな不安な顔してると……放っとけへん。】
息が詰まるほど真っ直ぐな声。
【……俺、やっと気づいたわ。俺……お前のこと、好きみたいや。】
その言葉に、胸の奥があたたかく震えた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!