テラーノベル
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目を開くと、目の前には灰色の砂浜と海があった。
失望と共に目を閉じ、思い切り自分のほほをたたく。痛みはなかった。ただひたすら、早く目が覚めたくてたまらなかった。
さめ、ろ。さめろ、ってば。くそ、なんで、さめないッ……!
早く目が覚めないと、あいつが来る。
目が覚めても、夢から出られなければ、あいつが来る。
あのジオラマの異物は、さかえ義兄さんと一緒に見たときには、まったく揺れて見えなかったのに。一人の時覗き込めば、まるでこちらをバカにするように、ゆらゆらと揺れていた。
揺れているんです、あの異物、この樹脂の海の中を、本当に漂って、砂浜に近づいてきているんです。
何度も言おうとして、失敗した。
言えるはずがなかった。ばかばかしい話だ。そんなオカルトじみた話、僕自身でもまともな時に聞いたら絶対に鼻で笑っている。
義兄はそういったことにあまり忌避感を示さないけれど、いや、「えびすさまを疑似的に招くための装置」なんて言葉が出てくるくらいだから、きっとその手の話が嫌いではないのだろうけれど。それでも、「民俗学的にあり得る話」と、「物理的にあり得ない話」では、話すにしたってあまりにもハードルが違いすぎる。
僕は変わらずほほをたたきながら、開いた左手で思い切り太ももをつねり上げる。
もし、あの異物がジオラマの中で砂浜に流れ着いたら。
もし、僕が、夢の中で、あの「えびすさま」に捕まったら。
想像もしたくない、不吉な未来しか思い浮かばなかった。
ぐっと、近づく嫌な臭いに吐き気を覚え、左手であわてて口を押える。うぶ、と変な声が出たが、せりあがるものをなんとか飲み込んで、僕は必死でほほをたたき続けた。
「さめろ、さめろさめろ、さめろッ……!」
掌がこぶしに変わる。ばち、ががつっ、に変わり、ほほでなくこめかみを殴りつける動作に変わる。
それでも、目が覚める気配はない。
ばちゃ、と足元で水音がした。
それと同時に、濡れた感触が左の足首にかかる。
「――ひっ」
あげてしまった悲鳴にもう情けないとかそんな感情はわかなかった。逃げようとして足を取られ、そのまま座り込むと、ばちゃんと派手な音を立てて尻と背中が水につかり、しぶきをあげる。
なんで、と思う間もなく、じゃり、と砂浜を海のほうへ引き寄せられたのがわかった。
自分のほほを殴っていた手で、足首をつかむ手を引きはがそうとする。ぐちゃぐちゃと腐った肉が爪に入り込むが、まるで万力のような力でつかまれたまま、再びじゃり、と尻が海のほうへ引き寄せられる。
うそだ。これは夢だ。悪夢だ。さめろ。早くさめろ。夢からさめろ。さめろさめろさめろ。
……ふと、背中から前へ伸びた誰かの手が、海に向かって引きずり込もうとするその力を一瞬とどめたような、気がした、その瞬間。
――目を覚ませ、陽充ッ!
今まで聞いたこともない、絶叫にも近い義兄の叫び声が聞こえ、僕はその声に導かれるように、目を覚ました。
コメント
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第15話、めっちゃ引き込まれた…!特に「さめろ、さめろ」って繰り返し叫ぶ主人公の必死さと、その度に夢に引きずり込まれる閉塞感がヤバかった😭 足首掴まれた時の生々しい感触の描写、鳥肌立ったよ…。最後の義兄の絶叫で現実に引き戻される展開、もうめっちゃエモい。「えびすさま」の存在感もじわじわ怖くて、続きが気になりすぎる…!