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『偽りの無能、真の覚醒〜転生皇女はすべてを奪い返す〜』
あの『氷の警告』をバロア王国へ叩きつけてから数日後。
バロア王国の外交使節団が、這うような失意のままにガルディニア帝国の帝都へと到着した。
彼らはもう、最初のような傲慢な企みなど一切持ち合わせていなかった。
放った最高峰の暗殺者が逆手に取られ、
本国の第一王子の部屋ごと凍りつかされたのだ。
帝国の底知れない情報網と、
ローゼマリー皇女の『神の如き魔力』に、完全に怯えきっていた。
「ローゼマリー、準備はいいかい? 愚か者どもが、謁見の間の前でガタガタと震えながら待っているよ」
私の部屋にやってきたアルベルトお兄様が、極上の軍服に身を包みながら、優雅に微笑んだ。
今日の私は、帝国の象徴である深紅の薔薇をあしらった、
気高くも美しいドレスを纏っている。
「ええ、お兄様。いつでもいけますわ。
……ふふ、彼らがどんな顔をしているのか、とても楽しみね」
「ローゼマリー様、お髪の乱れもございません。
本当に、世界で一番お美しいです!」
リンが誇らしげに私のドレスの裾を整えてくれる。
私は二人に頷き、アルベルトお兄様と腕を組んで、
厳かな足取りで宮殿の『大謁見の間』へと向かった。
◇
黄金と白大理石で彩られた、圧倒的な威容を誇る大謁見の間。
その重厚な扉が開くと、中にはバロア王国の第二王子をはじめとする、使節団の面々が青ざめた顔で整列していた。
上座の玉座には、
絶対的な威厳を放つ我が父――ガルディニア帝国の皇帝陛下が鎮座している。
私とお兄様は、皇帝陛下のすぐ傍らの席へと腰を下ろした。
使節団の者たちが、一斉に床に額を擦り付けるようにして平伏する。
「が、ガルディニア帝国偉大なる皇帝陛下、ならびに皇子殿下、皇女殿下……。
この度は、我がバロア王国の無礼な願いを聞き届け、謁見の機会を設けていただき、心より感謝申し上げます……っ!」
使節団の代表である第二王子の声は、緊張と恐怖で明らかな震えを帯びていた。彼らの視線が、一瞬だけ私の方へと向く。
そこにいるのは、夜空を溶かしたような黒髪に、神秘的な紫の瞳を持つローゼマリー。
自分たちの暗殺計画を鼻で笑い、カイルたちを恐怖のどん底に叩き落とした、あの恐るべき魔力の主だ。
私の冷徹な視線とぶつかった瞬間、第二王子はビクリと身体を震わせ、
大慌てで視線を床へと落とした。
「面を上げよ、バロアの使者よ」
皇帝陛下の重々しい声が響く。
「我が国に、多大な資金援助と食料の供与を求めているそうだな。
周辺国からの信頼を失い、深刻な飢饉に喘ぐ我が同盟国(バロア)の窮状、聞き及んでいる」
「は、はい……! なにとぞ、なにとぞ我が国に慈悲を……っ! このままでは我が国は冬を越せず、民が飢え死にしてしまいます……!」
第二王子は必死に哀願した。
その無様な姿を見つめながら、私は心の中で静かに嘲笑う。
前世の私が無実を訴えた時は、誰もあんな風に耳を傾けてはくれなかった。ただ冷たく、奈落へと突き落としたのだ。
「よかろう。我がガルディニア帝国は、
バロア王国への『無制限の食料援助』および『国家再建資金の融資』を行うことを決定した」
皇帝陛下の言葉に、使節団の者たちの顔に、パッと救われたような歓喜の表情が浮かんだ。
『これで国が助かる』、そう安堵したのだろう。
――だが、ここからが本当の地獄の始まりだ。
「ただし――」
アルベルトお兄様が、冷酷な笑みを浮かべながら一歩前へと出た。
その手には、魔法の刻印が押された、不気味な黒い羊皮紙の契約書が握られている。
「この援助を受け入れるにあたり、我が帝国が提示する『条件』をすべて飲んでもらう。
これは絶対であり、拒絶は許されない」
「じょ、条件、ですか……? 一体、どのような……」
不穏な空気を察した第二王子が、ごくりと唾を飲み込んだ。
「簡単なことさ。我が国が提供する資金と食料の管理は、すべて帝国から派遣する総督府が執り行う。
バロア王国のすべての関税自主権、および鉱山、魔導資源の採掘権を、今後百年間、我がガルディニア帝国に無償で譲渡すること。
……つまり、バロア王国の『経済と資源のすべて』を、帝国の管理下に置くということだ」
「な……っ!? そ、そんなことをすれば、我が国は実質、帝国の属国に……!?」
第二王子が驚愕に目を見張り、声を荒らげた。
国家の主権を丸ごと売り渡せと言っているようなものだ。
いくら弱小国とはいえ、あまりにも過酷な条約。
「嫌なら断っても構わないよ?」
私はソファーに深く腰掛けたまま、鈴を転がすような美しい声で、冷ややかに言い放った。
体内の膨大な魔力を、ほんの少しだけ部屋全体に滲ませる。
ドクン……!
謁見の間全体の空気が、一瞬で凍りつくような圧倒的なプレッシャーへと変わる。
使節団の貴族たちは、息をすることすら困難なほどの魔力圧に圧し潰され、床にしがみついてガタガタと震え出した。
「断れば、あなたたちの国は今年の冬を越せずに自滅するだけ。
……それとも、我が帝国の軍勢によって、今すぐその傲慢な首ごと国を凍らせてあげましょうか?」
私の紫色の瞳が、冷徹な光を放つ。
逆らうことなど、最初から出来なかったのだ。
「あ、あ、ああ……わ、分かりました……っ! 条約を、受け入れます……! 契約書に、署名を……っ!!」
恐怖と絶望に涙を流しながら、第二王子は震える手で、帝国の奴隷となる契約書にサインをした。
パチパチ、とアルベルトお兄様が静かに拍手をする。
これで、バロア王国は完全に私たちの檻の中へと閉じ込められた。
経済を握られ、資源を奪され、もはや私たちの意向一つでいつでも滅ぼせる、中身の空っぽな操り人形の国になったのだ。
私は、絶望に打ちひしがれる使節団を見下ろしながら、心の中で静かに告げた。
(さあ、外堀はすべて埋まったわ。カイル、エレン。次はあなたたちの番よ)
国家の主権を完全に奪い尽くし、復讐の準備を完璧に整えた私は、
――あの二人を帝国へと直接呼びつけ、
ついに正体を明かす真の審判に向けて、
残酷で美しい笑みを浮かべるのだった。
#転生
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耀聖(ようせい)
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コメント
4件
あの「◇」がなんでかめっちゃ好きw これノベコンだよね、?賞取れそうだから私が先に喜んどく(?)
第10話、読み終えました。バロア王国への報復、本当に鮮やかでしたね。皇帝陛下が一度「援助を認める」と言った後の、お兄様が叩きつける苛烈な条件の落差が鳥肌ものでした。「嫌なら断っても構わない」と魔力を滲ませるローゼマリーの冷酷さと、そこに込められた前世の無実の苦しみが、痛いほど伝わってきます。外堀を完全に埋めて「次はあなたたちの番よ」で締める流れ、完璧でした。カイルとエレンがどうなるか、続きが気になって仕方ないです!