テラーノベル
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#記憶喪失
視点:斎藤陽聡
俺は今窮地立たされている。何故かって?自分の好きな人が家に泊まりに来たからだ。傍から見れば幸せそうに聞こえると思うが違う。本来そいつとは友達じゃなきゃいけないんだ。なぜなら男同士だから。あいつに男好きの趣味はない。俺がゲイなだけだ。それをあいつに押し付けてまで付き合いたいとも愛してるとも言いたくない。だけど気持ちだけは抑えられないんだ。誰か、俺のこの感情を消し去ってくれ。
視点:須藤亜樹
朝。見慣れない天井。そうだ、俺は昨日から陽聡の家に泊まってたんだ。
「おはよう陽聡。布団ありがとな。」
「おう、はよ。気にすんな。あ、あと30分ぐらいで家出ねぇと遅刻すんぞ。」
「ういー」
そんな軽い朝の挨拶を交わしぎしぎしと音が鳴る床を歩いていく。かなり古い家なのだろう。
「で?そういや委員長当分休むんだっけか?」
一瞬、優里のことを訊かれて体が跳ねたがすぐにバレないように持ち直した。
「そうそう。某新型コロナなウイルスだってさ。」
「なんだよその言い方!」
ぷはっ!っと吹き出し、陽聡は大袈裟に笑う。本当は病気なんかじゃない。いや、ある種病気のせいで死んだとも言えるかもしれない。加虐性という治しようのないどうしようもない病。
それから陽聡と2人で家を出た。慣れない道だったが新鮮さがあり中々に楽しかった。
がらり、と建て付けの悪い教室の扉をスライドさせ教室へ入る。教室の中はざわついていたが俺の久しぶりの登校だということを思ってかいつもは挨拶をしてこない人が挨拶をして来た。
「陽聡ー、お前クリスマス予定あんの?」
「彼女もいねぇやつに予定があるわけねぇだろ。」
「はっ、そりゃそうか。」
「ところで亜樹、」
「なんだ?」
「最近スユキ配信しねぇよなぁ、毎日楽しみにしてたのに。」
「優里と一緒でコロナにでもなってんじゃね?」
「確かに、あり得るっちゃあり得るか。」
キーンコーンカーンコーン、と始業の合図の鐘が鳴る。
がらっと勢いよく扉が開く。
「おし、ホームルーム始めるぞー。日直、号令かけて。」
起立、とやる気のない号令でみんながバラバラに立ち上がり挨拶をする。
そのあとはあっという間に終わっていった。
気づけば放課後、いつもの帰路に俺は立っていた。
「じゃあなー陽聡ー」
「おうよ」
そう言い優里の家に戻る。そして優里の死体がある部屋へ行きこれまた建て付けの悪い襖を開け、優里の形を元々していたはずの肉塊を目にする。この前ぶっかけた物が良かったのかはわからないがあまり腐ってはいない。
そして俺は取り出したピンセットで優里だったものの肉片を千切る。腐りかけだからなのか案外ポロッと取れた。それをリビングで優里が飼っていた食虫植物に肉片をあてがう。
ぱくっ。そんな素っ頓狂な音が出そうなほど呆気なく食虫植物はその肉片を食した。食したという表現が正しいのか定かではないが。飼い主が飼っていた植物に食われるなど実に滑稽だ。あのイかれたやつにはちょうどいい最期かもしれない。
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