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この大通りを渡った先に、碧様達の本陣があるそうだ。
土蜘蛛はすぐそこ。

結界で動けないらしいが警戒のために、一度この場所で立ち止まったと、碧様は言った。


碧様が私の前に立って、土蜘蛛の様子を伺う。

私もそろりと、碧様の視線の先を追うと、病院の屋根に鎮座している土蜘蛛の姿がよく見えた。


前と違って何倍も禍々しさが増して、ゾッとする。

しかもなんだか病院の方から、風に乗って妙に生臭い匂いがして、顔をしかめてしまう。


「あ、あれが土蜘蛛の本体なのですね。凄い……恐ろしい上に、なんて大きいの。それにあの人達は……病院の正面に複数の人達が座っていて……地面が光っている?」


不思議な光景がここからでもよく見えた。

さっきの道とは違って、ここに人がわらわらと集まっていることはない。

しかし病院の正面左右には人が集中していて、私の目の前、この正面の大通りだけ人が居ないのは何かの作戦かと感じられた。

じっとして、呼吸が落ち着いたところで碧様が囁くように喋った。


「あの地面が光っているところに梔子家当主様が、結界を張って足止めをしています。でも、もうすぐ、それも解ける」


「そんなっ」


「けど、きっと杜若様が駆けつけてくれる。だから環様は一度、この先の拠点で僕と一緒に安全を確保してから──」


そこまで碧様が喋ったとき、前方の光っている地面が泡のように弾けた。そして光が儚く失われていく。


その直後に、何百匹もの|獣《ケダモノ》が遠吠えするような声が帝都に轟いた。


肌がゾワリと粟立つ。

一体何がと辺りを見回すと──。

土蜘蛛が月に向かって吠えていた。


「杜若、コクドウを使うな」


人間の発音じゃない音がした。

地中奥深くから聞こえる、|怨嗟《えんさ》のような声が鼓膜を震わせ、背筋がゾクゾクした。


碧様が「まさか、土蜘蛛の声かっ!?」と、警戒態勢を取った。


これが本当の土蜘蛛の声。

耳を塞いでも心に喋りかけてくるようだと思った。

そして土蜘蛛はやや、間を開けてからまた喋った。まるで誰かと喋っているようだ。


「我の胎の中にイる、人間を今すぐ、溶かされたいカ?」


その声が、どんな意味を持つか理解した瞬間に、私は大通りへと、病院に向かって飛び出した。


「環様っ!?」


碧様の私を呼び止める声が耳を掠めるが、足は止めなかった。申し訳ないと思う。


でも、このままだと人が死んでしまう。

そんなの絶対にダメだ! 私がちゃんと炎を使えたら、土蜘蛛から人々を助けられるかもしれない!


「ううん、ちゃんと使いこなしてみせるっ!」


唇をきゅっと噛んで、熱がこもった頬に夜の風を受けながら、真っ直ぐに病院の正面へ向かった。


走り出すと不思議な心地だった。胸がドキドキしていたのに、感覚が研ぎ澄まされていくようだった。

走っていくと先ほど見た、地面が光っていた場所まで近づけた。


そこにいる人達のなかに、なんと鷹夜様がいるとわかった。


鷹夜様は洋装姿の男性と、なにやら揉めているように見えた。


鷹夜様とその方の会話の声が聞こえた。


その内容は土蜘蛛に吸収された人達ごと黒洞で消さないと、帝都は|未曾有《みぞう》の危機に陥るということ。


そんなことは出来ないと、鷹夜様が痛切な声を上げる。


あぁ。そんなのだめだ。

絶対にだめ。

なのに土蜘蛛が無情にも、また声を発した。


「なにヲ、ごちゃごちゃト。わかった、まずは一人殺すか」


土蜘蛛の非情なる声に私は立ち止まった。

土蜘蛛に向かって、声を高らかに挙げる。

帝都・狐の嫁入り物語〜嫁いだ先は前世の私を殺した天敵

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