あんなふうに言われると…検索するのが怖くなる。
ちょっとそれは置いといて…
「お腹空いた…」
そういえば、抹茶フラペチーノ…あのまま置いてきちゃったなぁ。
響の家だと思うと、あんまり遠慮せず冷蔵庫を開けちゃったりなんかできる。
「こ…れ、キャビアって書いてある。わっ!蟹だぁ〜!…そしてこっちは、伊勢海老さん…?」
その煌びやかな食材たちに、またたく間に心を奪われた。
高級食材たちが綺麗に並べてある棚は、ちょっとおそれ多くて…腹ペコの私は、別の段の1つに手を伸ばした。
某コンビニのスイーツ各種…。
ここだけ妙に庶民的。
中でも大好きな、抹茶わらび餅あんころクリーム大福…をいただくことにする。
お茶もいろんな種類が冷やしてあった。
その中で…馴染み深い茶色い飲み物、麦茶らしいボトルを目についたコップに注いで飲み干した。
一息ついた私は…連日のバイトの疲れもあって…もう眠い。
お風呂に…なんて言われたけど、さすがに勝手に入れない…。
「いいや。遅くなっても帰ってきたら、家までま送ってもらお…」
それまでしばし休憩…と、瞼を閉じた。
………
気づくと…私はやたら広いベッドに寝かされていた。
なにこの部屋…全体的に黒い。
あれ。そういえば響は…?
そっとベッドを降りて、部屋のドアを開けてみる。
昨日私が寝落ちしたソファに…響が寝てる。
スーツを脱いで、部屋着に着替えていた。
ということは、寝ちゃったあと私は、響によってこのベッドに運ばれた…ということ。
響が普段寝てるベッド、横取りしちゃったのか。
じっと寝顔を見下ろすと、その美しい顔が…さらに人間離れして見える。
長い足が全然おさまりきらなくて窮屈そうで…何だか気の毒…。
とはいえ…こんなに大きく成長した響を、ベッドに連れてってやるわけにはいかないから…放置することにしてさっきの部屋に戻った。
時計を確認すると、すでに朝方で、無断外泊したと実感…。
両親からの鬼電が入っているのを覚悟して携帯を見てみると…あれ?一件も入ってない。
それどころかメッセージもない…。
えぇ~…娘が帰らなくて…うちの親、心配しないの?
…でもまぁ、起きたら響に送ってもらって、ついでに両親に外泊した理由を説明してもらおう。
昔から両親は響に甘かったし…帰れなかったのは正真正銘、響のせいなんだから!
そこで…ふと思い出した。
そういえば『俺のことを検索して調べておけ』って…。
あの後寝てしまって、まだ調べてなかった。
武者小路で調べて、検索一発目で出てきたのは…
「旧財閥…武者小路グループ…?」
え…?あの、武者小路?
調べてみると…金融、自動車、商社…
「あ。就活で落とされた、MKGホールディングスも、武者小路グループだったんだ…」
他に電機、重工業とか…系列会社がとにかくたくさんあった。
「…ということは、響って、武者小路グループの…御曹司?」
えぇ…っ?!
そんなすごい人だったの…?
ソファで寝かせちゃダメじゃん…!
慌てて部屋を出てみると…物音で起きてしまったのか、響が起き上がっていた。
「…あ、の響?こっちのベッドで寝たら?
私はもう起きるから!」
驚きすぎてとても呑気に寝てられないわ…
「…調べた?武者小路のこと」
寝起きの響は掠れ声で、妙に色っぽく耳に届く。
「あ…うん。びっくりした…響って御曹司なんだね?」
「…まぁね。今は金融系の系列会社で、専門的な仕事に就いている。まだ若造なのに次長なんて役職与えられてるけど…」
何だか雰囲気的に疲れていそうで…素直に大変だな…と思う。
響はゆっくり立ち上がって、私がいた部屋に向かって歩いてきた。
「風呂入らなかったろ?下着買ってきてやったから、入れば?…あと、これも」
手渡されたのは、明らかに響のパーカーとハーフパンツ…
「…え?あの…私帰りたいんだけど?もう少し寝てからでいいからさ…響送ってよ」
「お前を帰すつもりはねぇよ?昨日言っただろ?ここで一緒に暮らすって」
「そういえば言われた気がするけど…昨日外泊しちゃって親も心配してるし…」
「俺から連絡しといたから、問題なし」
えぇ…
それで私の携帯にはなんの連絡も入ってなかったとか…?
「…でも…あの、10年ぶりに再会していきなり同居って…」
まだごちゃごちゃ言う私を、響は切れ長二重の瞳でしっかり捉えた。
「…10年ぶりに会えたから、離さねぇって言ってんの」
デカい響に見下ろされ…何も言えない…。
「俺はもう一眠りするから。お前はゆっくり風呂入ってこい」
なんか…『はい』って言うしかない雰囲気…。
バタン…とドアを閉め、響はドアの向こうに消えてしまった。
響がいなきゃ、1人では帰れない。
だって部屋と専用駐車場の直通のエレベーターがある家なんて初めてだし。
もしかしたらエントランスがどっかの階にあるのかもしれないけど、どうせ超高級マンションでコンシェルジュとかいて、私1人だと…不審者として捕まりそう…。
結局。
1人でこの要塞から出るのは諦めることにする。
それならば…入れって言われたお風呂に入らせてもらうことにした。
「なにこれ…ひっろっ!」
個人の家のお風呂ってレベルじゃない…。
10人くらいは入れそうな広さ…ってそれは言いすぎか。
バスタブにはすでにお湯が張られていて、しかもシュワシュワ気泡が立ってる。
洗い場の先にも何かありそうで、裸のまま覗いてみた。
「うわっ!露天風呂…!」
体と頭を洗って、早速露天風呂にダイブした。
「あぁ…気持ちよい…!」
朝の空は澄んでいて…10月の風は心地よい。
これでもかと癒してくれる露天風は…お世辞抜きでサイコーだった。
広い脱衣室には椅子もあって、至れり尽くせり。
ゆっくり涼んでから、さて服を着ようとして思い出した。
そういえば…有名メーカーの小さな紙袋に入ってる、響が買ってきてくれた下着…。
恐る恐る中を確かめると…
ピンクのレースの上下。
シンプルなんだけど、ところどころレースの透け感があって、身につけてみると結構セクシー。
たいしたことない私の体も、途端に色気を放っている…ように見える。
響…女子のこういう下着が好きなのかな…なんて、いらん想像しちゃう。
そして…ブラのホックをして気付いた。
サイズがピッタリ…
そういえばショーツの方も。
「…なんか、すごい慣れてる感…」
コメント
1件
下着のサイズ、ピッタリ....♥️♥️♥️🤭ウフフ