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その日も放課後、瀬戸柚希は屋上に向かった。
誰も来ないその場所は、彼女にとって安息の空間だった。
風に髪を揺らし、ただ空を眺めていると──。
ギィ、と重たい扉の軋む音が響く。
思わず振り返った柚希の前に、背の高い男子が立っていた。
「……あれ? こんなところに人いたんだ」
無邪気な笑顔と明るい声。
クラスメイトの高田海だった。
いつも誰かと笑い合っていて、自分とは正反対の存在。
柚希は眉をひそめ、無言で視線を逸らす。
「なぁ……君って、もしかして男?」
あまりに唐突な言葉に、柚希は目を見開いた。
「……は?」
冷たく返すと、海は悪びれるどころか、にやっと笑って言った。
「違うよな。だって、綺麗な子だなって思って」
その言葉に、柚希の胸がかすかに波立った。
屋上に吹き込む風よりも、不思議と心が落ち着かない。