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side.Kt
数日後、依頼メールが僕のもとへ届いた。内容を確認し、BOSSへ出動許可を要請すれば許可が降りたので依頼者のもとへ出動する旨を伝える。
僕らはBOSSのような政府関係者から指令を受けることもあれば依頼を受けることがある。出動するかどうかはBOSSが決めることではあるけれど。
みんなを召集し、会議を開く。このような作戦のための会議は僕らの中で”撃破会議”と呼ばれている。
「今回は依頼。内容としては違法薬物取引の連中の排除だね」
「”暴力団γ”…最近名前よく聞くな」
「あっとくんの言う通り、暴力団γは最近台頭してきた新興勢力だよ。既存のその他暴力団を吸収、合併して勢力を伸ばしてきてる。噂によれば旧政府クーデターに関わってるとか……」
「けちち、その暴力団γと取引するのは誰なの?」
手元の資料に目を向ける。暴力団γに吸収されたひとつの組からの内部機密情報がびっしりと書かれている。
「えっとね…”海外に拠点を置く薬物密売組織の末端。クーデター前から警察組織から危険視されていた可能性あり”だって」
「密売組織は抹殺できそうだけど暴力団γもろとも叩くのは難しそうだな……」
「援護を送られた場合…ってことか?」
「せやな。ただ、取引予定の薬物のことを考えると送らない気も無きにしも非ず…か」
ちぐが暴力団γ内のセキュリティをハッキングして得た薬物情報。海外からの輸入歴が浅く、違法と分かりづらい。それに追加して依存性が高いものの中毒症状が出にくい。国内流通はほぼないものの、このようなものを流通させてしまったら社会の崩壊は目に見えている。
「それを考慮した上での俺の布陣…。今回は俺とけちゃも現場に行く。前衛組は暴力団及び密売組織を破壊。あっきぃはコンテナ上で1匹ずつ確実に仕留める。俺とけちゃが離れたところから催涙ガス、手榴弾で前衛組を援護。応援部隊を送られた場合は俺も前線に出る。いらないと思うけど念の為けちゃはグレネードも持ってて欲しいな」
「「「「「OK」」」」」
僕は基本的に後方支援担当。グレネードを持つことは少ないけれど、それでも僕は最悪の場合建造物ごと爆破して爆殺、圧殺することが仕事。でも本当はグレネードなんて持ちたくなかった。最悪の場合…それはあっきぃやぷりちゃん、まぜち、あっちゃんが戦闘不能になった時。命を捨ててでも任務を遂行することが目的とはいえ、大好きな仲間がいなくなるのは嫌だ。
1度だけ4人の生体反応が消えかけた時、目の前が真っ暗になった。大好きな人がいなくなる絶望をもう二度と味わいたくない。僕がグレネードを使ったのはその1回だけ。無事に殲滅できたものの僕の心には深い傷が残ってしまった。幸い4人は無事に意識を取り戻し、変わらない生活を送っている。でも…それでも、4人が死にかけたことに変わりは無い。僕はもう誰も傷ついて欲しくない。
…傷つくのは、僕だけで十分だ。
撃破会議が終わり、それぞれ解散になる。僕は自分の部屋でぽっかり開いた心の穴を塞ぐのに必死だ。どうしようもなく悲しくて誰か傍にいて欲しいのに1人きりになりたい。訓練生時代から心の奥底に隠していた本音が浮かび上がる。
「誰も傷つかない世界で、みんなと平和に暮らせたらいいのに」
たった1人の空間で浮かび呟いた願望は誰にも拾われず空へ昇っていった。