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涼ちゃんは棚の上のモノを取って手渡しながら、内心では沸々とした不満を感じていた。
(元貴も若井も、さっきからなんなんだよ……。絶対なにか勘づいてるくせに、遠回しに探ってきてさ。)
包帯が見えたときの元貴の「え…」という声も、聞こえなかったふりをしたけど、胸の奥はもやっとしたままだ。
(どうせだったら――聞きたいことがあるなら直接聞けばいいのに。なんでみんな、わざわざ遠回りする必要あるんだろう。)
明るい仮面で笑いながらも、内側では苛立ちと寂しさがぐるぐると渦巻いていく。
(そんな気を遣われるほうが、よっぽど苦しいっての……)
モヤモヤした思いを押し殺して、またいつものように明るい声を出す自分。
でも、心の中は広がる霧みたいに、どこまでも晴れなかった。