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127 - 第127話*坪井side② お前を好きになれたから*2

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2025年06月01日

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天を仰ぎ、痛いくらいにまぶたを閉じて答える。


「俺は、立花を好きじゃないって。 意識するの時々忘れてたんで」


答えてすぐに、ガン!と、静かな部屋の中に音が響いた。

見ればどうやら八木がゴミ箱にスチール缶を投げ入れたらしい、結構激しく。


「さっぱり意味がわかんねぇわ、好きだって言ってたろ。 さっき」

「すいません。 好きにならないでいられるつもりだったんですよ、本気で。 俺も、自分で自分のことがよくわかってないですね」


八木がまだ長さのあるタバコを灰皿に押しつけた。


そうしてテーブルに置いていたライターをポケットに入れてからドアノブに触れた。


けれど八木は、ドアを開く前に坪井を振り返る。


「お前のことはどうでもいいけど、自分から言ったんだから守れよ」

「ああ、はい。 自重します、できる限りで関わりません」

「その、できる限りってのが気にくわねぇけど。 とりあえず今は落ち着かせてやってくれ」


そう言い残し、喫煙ルームを出て行った。


(……あいつに惚れてるかどうか注視しとけってさぁ)


そうするまでもなく、真衣香を大切に思っていることが溢れ出している。


「大切にか。 俺は、できたことないな」


軽く頭痛を覚えて頭に触れた。

久々に何本も吸ったせいだろう。


「好き、って言ったなぁ。 俺」


『大好きだ』と確かに、口にした。

思えば、その言葉を発したのはどれくらい振りになるのだろう。


ゆっくりと、記憶を辿る。



***



――昔から顔だけはよくて、中身なんか関係なく人は寄ってきた。その大半は女で、もう早いうちから”自信のある女”ってカテゴリには嫌気がさしていたように思う。


初めて、特別に見える子ができたのは中学にあがってすぐの頃だった。

隣のクラスの、女子だった。記憶は随分と朧げになったけれど、可愛らしくて目が離せなかったことは今でも覚えている。


委員会が一緒になって。

会話をするようになって。

メールするようになって。


やがて『坪井くんのこと好きなんだけど、つきあわない?』と、委員会の終わった2人きりの教室で言われた。


もっと2人きりで話していたくて。

でも、どうすれはいいのかわからなくて。

教師が去った後も何かと理由をつけて仕事を探して、必要のない時間を必要なものにして。


そんな、夕陽射す永遠のように長い一瞬。


『好きなんだけど』を、好きな女の子から伝えられる。


信じられないほど。


嬉しかったと思う、きっと当時は。

喜んでいたのだと、何となく記憶している。



『……え? え!? マジで? ヤバい、マジで?』


何度も確認したくて、聞き返した。


『うん……、好き』


記憶の中の笑顔はよく見えないけれど、その時の心は覚えてる。

可愛いと思ったことを、覚えてる。


舞い上がっていたはずだ。


『……お、俺も好きだよ!』


その証拠に、好きだと返した自分の声を坪井はよく覚えていた。

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