テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

バルドゥビーダ氏に変わって、俺はステージ中央に躍り出る。

メロウなフレーズに、大きなどよめきが起こった。だれがどう聴いても、メロウな皇帝に、メロウで対抗することは良策ではないだろう。それは、バルドゥビーダ湖に水滴が垂れるようなものに見えるかも知れない。これまでの健太らしさがない、と観衆は感じているかもしれない。スリリングで攻撃的なフレーズで攻める、かつての俺を期待していることだろう。

でも、残念ながらあの頃の俺はもういない。

今できることは、精一杯、今の俺で生きていくしかないんだ!

会場は静まりかえった。

静まれば静まるほど、背後に音楽帝国のBGMが聴こえてくる。偉大なギタリスト・バルドゥビーダ氏の存在が、背後に浮かび上がってくる。

落ち着け。落ち着け。このフレーズに、集中するんだ。

客席から、失望の空気が流れ始めた。羽田氏は顔をしかめている。喫茶店のマスターは無表情だ。両手を組んで祈る奈保子も見えた。

舞台上のバルドゥビーダさんだけが、目をつむり、俺のギターに合わせて身体を軽くゆすっている。

手が動かない。こんなはずはない。まずは落ち着け。今できることだけに集中するんだ。

フレーズを終える。

ステージ中央をしりぞいた。

拍手はほとんどなかった。

バックバンドの演奏が続く。

この作品はいかがでしたか?

13

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚