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単独任務2日目
次の日。
レイナが朝起きて、一日目に自己紹介した部屋で昨日買っていたバターロールパンを朝食に食べていると、部屋の扉が開きライネとカイクが入ってきた。
「おはよう!」
ルガーラ市長よりも早く起きて食事などを済ませておかなければならないので、必然的に時間は早朝になる。
そんな時間から、カイクはテンションが高めに挨拶をして来た。
「おはよ。ウィン朝早いね」
反対にライネは眠そうに目を擦っている。
「おはよ」
2人はかなり大きめの冷蔵庫からサンドウィッチを取り出して食べ始めた。
冷蔵庫は使用人全員が共通で使っていて、自分の食べ物には必ず名前を書くことになっている。
レイナも昨日町を探索した時、スーパーに買っておいた数日分の弁当等にはしっかり名前を書いて冷蔵庫に入れた。
レイナがパンを食べ終わって袋をゴミ箱に入れると、2人も食べ終わった様で、サンドウィッチが入っていた袋を捨てると、ライネがコーヒーを入れ始めた。
「ウィンも飲む?」
「いいの?」
「いいよ。ミルク入れる?」
「入れなくて大丈夫」
「了解」
ライネが入れたコーヒーを置き、3人で飲み始める。
「そういえばさ、ウィン結構早く起きてたけど、何やってたの?」
同室のライネが訊く。
「コンタクト入れるのに時間かかるから」
これは本当だ。レイナは今回の依頼で初めてコンタクトを入れた為、かなり苦戦するだろうと思い、早く起きたのだ。実際、両目入れるのに時間がかなりかかり、早く起きたはずなのにほぼライネ達と同じタイミングで朝食を食べている。
「最近入れたばっかり?」
「うん」
レイナがそう言うと、カイクが飲んだコーヒーを置いて言った。
「次からもう少し遅く起きてもいいんだよ。主人かなり起きるの遅めだから」
「いつくらいに起きるの?」
「10時」
因みに、今の時間は朝の七時だ。さっき言った通り、レイナはコンタクトを入れるのにかなり時間がかかったため、起きたのは5時位だ。
「私らも普段は8時起きだしね」
「今日は結構速めに起きたからな」
レイナは、何となく気になったことを2人に聞いてみる。
「2人って、いつも一緒に行動してるの?」
「うん」
「幼馴染みみたいな感じだね」
「へ〜」
その後も色々と雑談していると部屋の扉が開き、キヨが入ってきた。
「3人とも、いつまでも喋ってないで、そろそろ仕事を始めてください」
「はい」「はーい」「分かりました」
普通に返事をするレイナとライネとは違って、カイクは軽く答える。ここに入ったタイミングはライネと同じと聞いていたので、結構軽めの性格なのかもしれない。
「あ、それと、ウィンさんは私に着いてきて下さい」
「?分かりました」
キヨはそう言うと、スタスタと廊下を歩いていく。レイナは慌てて残りのコーヒーを飲み干すと、キヨのあとを着いて行く。
そのままキヨは玄関から出て、屋敷の門の外に出た。
「どこか行くんですか?」
まさか屋敷の外へと行くとは思っていなかったので、思わずキヨに質問する。
「ええ。ちょっと花を買いに」
どうやら、最近屋敷の花瓶に飾っている花が枯れてきたようなので、今からその花を買いに行くようだ。
レイナは道を歩きながら、昨日ライネにキヨが花を購入していると聞いた時から気になっていたことを質問した。
「そういえば、あの花とかってなにか意味があるんですか?」
キヨは、昔を懐かしむような顔をする。
「飾っている花は、奥様やお嬢様がお好きだった花ですね。よく旦那様にプレゼントされていました」
「お嬢様?」
調べてきても、この屋敷子供が居たという記録はなかった。 あったとしても、昔男の子がいたという記録だけだ。まぁ、その男の子も不慮の事故で死んでしまったようだが。
「えぇ。とても元気の良い方で、居なくなってしまってから、少し屋敷が静かになってしまいました」
「そうなんですか…お嬢様がいたとは知りませんでした」
「そうですね。ある程度の年齢になってからいることを明かそうという話だったので。その前に居なくなってしまわれて…」
居なくなった?亡くなったじゃなくて?
まるで奥様とお嬢様が死んでいないような言い方だ。
少し踏み入って聞いてみる。
「居なくなられてしまった理由とかは…?」
「それについては、私にも分かりません」
「ルガーラ様も、お花好きなんですか?」
キヨが、少し悲しそうな顔をして答えた。
「昔は好きだったようですが、ある時から全く興味が無くなってしまわれたようで、奥様達にお花を貰っても部屋に飾るどころか、お礼すらしませんでした…」
なんだか闇が深そうだな…
そう思っていると、花屋に到着した。
花屋に入ると、キヨはテキパキと花を選んでいく。
どれも美しい花だったが、最後に手に取った花は、他の明るめの花に比べて、暗い色をしたものだった。
「それは…」
「これは、『チョコレートコスモス』よ。最後に奥様が、旦那様に送った花ね」
チョコレートコスモス。花言葉は、恋の思い出と恋の終わりだ。
なんの躊躇いもなく選んでいるので、恐らくキヨはその事を知らないのだろう。
闇が深いな…
レイナは笑顔で花を購入するキヨを見て、思わず口の中で呟いた。
その後。
屋敷に戻ると、キヨから新たな指示が出された。
「お庭の掃除をお願いできるかしら?」
「分かりました」
そういえばと、レイナは少し気になったことを言った。
「あの、」
「?」
「昨日の午後からずっとハスネさんとシュサさんにお会いしていないんですけど、どこで仕事されているんですか?」
「あぁ、ハスネさんはずっと旦那様の所にいますよ。主に仕事の手伝い等をしています。シュサさんは料理人ですからね。一日の殆どはキッチンにいます」
「そうなんですか。ありがとうございます」
他に話したいことは無さそうだと、キヨは屋敷の中へ向かう。
レイナはキヨの姿が見えなくなると、庭の掃除を始めることにした。
この屋敷には庭師がいないようで、使用人が交代でやることになっているのだ。
「えーっと、掃除道具ってどこに置いてあるんだ?」
掃除道具はないかと、暫く庭を探索する。
庭には色とりどりのバラが植えてあり、裏庭の方に行くと、公園の休憩スペースのようなものがあった。昔はここで例の奥様とかがお茶を飲んでいたのだろうが、今は使われていないようで、錆などの汚れが目立っている。
そのまま暫く歩いていると、小さな小屋が見えた。鍵はかかっていないようで、扉がすんなり開く。中には、沢山の掃除用具が入っていた。
「よし、やるか」
まずは屋敷の門から玄関までの石の道にある草を箒で回収する。
それが終われば、庭の雑草をとったり、後はバラの咲いている垣根を整える。それを繰り返しているうちに、昼になった。
掃除道具を小屋にしまい、昼食を食べる。
その後は特に何も言われていないため、また庭の掃除をする事にし、小屋の中に入る。
そういえばこの小屋に何があるかとか把握しといた方がいいんかな?
そう思い、小屋の中を探索する。どうやら、掃除道具以外にも色々なものが置いてあるようだ。
小さい小屋なので、数十分位で探索が終わった。その結果見つかったのは、大量の薪と、謎の箱だった。箱の中を見てみようと、蓋を開けようとすると、鍵がかかっている。
一旦箱は諦めて、レイナは大量の薪の山に注目した。屋敷の部屋までは全て入れていないので、どこかの部屋に暖炉があるのかもしれない。けれど、常に快適な気温なこの世界でこれほど大量の薪は必要だろうか?そう思い思い切って薪をどかしてみる。
一気に持てないため、ちょっとずつどかしていく。置いてあった薪を全てどかすと、収納のような真四角の扉がでてきた。人ひとりは通れそうだ。その扉を開けようと取ってに手をかけるが、開かない。どうやら、ここにも鍵がかかっているようだ。
レイナもう面倒くさくなったので、どかした薪は全て魔法で浮かして元に戻す。最初からこうすればよかったと後悔しながら、また庭の掃除を始める。
屋敷近くを掃除していると、声が聞こえた。
「だから――――して――」
何を話しているんだ?
声が聞こえる場所に行くと、そこはルガーラの仕事部屋の窓付近だった。
「喉が渇いた。水を持ってこい」
ルガーラの声が聞こえる。
「かしこまりました」
それに返事をするハスネの声が聞こえた直後、閉まる音が聞こえた。すると、ルガーラが独り言を言い始める。
「あの無能が、俺の言うこともろくに聞きやしない。あいつが居ない方が、仕事が捗る」
俺?確かルガーラの一人称はわしだった筈だ。
「それにしてもあの無能。俺が別人だなんて思ってもいないんだろうな。今いる使用人の中で1番父さんの近くに居たはずなのに」
「!?」
「まぁ、それでも今は昔の使用人は殆どいないしな。父さんの側近も、速めにやっておいてよかった」
そう言うと、ルガーラは声を押し潰したように笑った。
レイナは窓の付近を離れると、落ちている葉っぱを集めながら考える。
別人?父さん?やった?やったの漢字は殺したの方なのだろうか?それに、一人称が違うことも気になる。
「今の市長は別人?」
直後にハッと口を手で塞ぐ。声が出ていた。
そのまま情報を頭の中で整理しながら仕事をしているうちに仕事の時間が終わり、レイナは屋敷の中に入る。
「疲れたぁ」
夕飯を軽く済ませ、風呂に浸かりながら、思わず独り言を呟く。
すると、風呂の扉が開く音がする。
「ウィン、朝起きるのとか夕飯食べるのとかお風呂入るのとか、色々と速いね」
ライネが入ってきた。
今はカラコンを入れていないので、慌てて魔法で目の色を変える。
ライネが身体を洗い、ザブンと音を立てて風呂に入ってきた。
「ウィン、あの後戻ってこなかったけど、何やってたの?」
「んーと、花買いに行って、その後ははずっと庭の掃除」
「おーお疲れ。庭掃除って疲れるっしょ」
「うん。かなり」
「私らはずっと掃除やってたよ」
「そうなんだ」
「うん。午後は風呂掃除やってた。カイクはひとりで使用人用の男湯と主人が使う風呂まで任されててさ、大変そうだったよ」
使用人用の風呂は何名かが使うため、結構広めだ。それに加えてルガーラの使う風呂の掃除もやるのは、かなり大変だろう。
「大変だったね」
「まぁ、屋敷の人の服全部洗濯して干していたキヨさんもだいぶヤバいけどね」
「料理人が1番楽そう…」
「いや、あの主人味に煩いらしくてさ、料理人も結構大変らしいよ」
「へぇ〜」
「食べられれば関係ないと思うけどね、」
「お金持ちはそういうのこだわるんじゃない?」
「でもあいつ馬鹿舌だよ?この間水じゃなくて酒持ってったら、気づかずにそのまま飲んだもん」
「やば…」
その後、風呂から上がった後は、カラコンだということをバレないようにコンタクトをつけて、2人はは部屋に戻る。
今日は夜も探索をするつもりなので、レイナは電気を消して布団に潜り込むと、寝たフリをした。
ちょっと文字数がえげつない事になっているので、これからは主に昼編の夜編で分けることにします。
それでは、さよなら〜(ᐙ)/