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探偵ランピー 第一話
カドルスを殺したのは誰?
昼下がりのオフィス。
探偵ランピーは、机に大きく広げたジグソーパズルをのんびりと組み立てていた。
「うーん……あとこのピースがどこに入るかで、世界は平和になるんだよなあ」
彼の手は不器用に震え、ピースを落としては拾い、また逆さに入れようとしてはフレイキーに注意されていた。
助手のフレイキーは、書類を整理しながらため息をつく。
「ランピーさん、またパズルばっかりやって……依頼が来たらどうするんですか?」
「依頼? パズルは人生の依頼みたいなもんさ」
そのとき、ドアが静かに開いた。
入ってきたのは、ビーバーのトゥーシー。いつもは呑気で人懐っこい笑顔を見せる彼だったが、その顔には深刻な影が落ちていた。
「…………」
トゥーシーはしばらく入口に立ち尽くしていたが、ランピーはまるで気づいていない。
「ランピーさん! お客さん来てますよ!」
フレイキーが声を上げる。
「え? あ、ほんとだ。いらっしゃーい。パズル一緒にやる?」
「違うんだ……ランピーさん、お願いがあるんだ」
トゥーシーの声は低く震えていた。
「お願い?」ランピーは首を傾げた。
トゥーシーは一息ついて、信じられない言葉を吐き出した。
「カドルスが……殺されたんだ」
部屋の空気が一変する。
フレイキーは耳を疑った。
「な、何ですって!? カドルスが……そんな……」
現場へ
ランピーとフレイキー、そしてトゥーシーは急ぎカドルスの家へと向かった。
そこには警察も救急もなく、ただ静かな空気が漂っていた。
床には血の跡。
机の上には倒れたコーヒーカップ。
そしてベッドの上で眠るように横たわる、カドルスの遺体。
「ひどい……」フレイキーは目を伏せた。
「ふむ……」ランピーはパズルのときと同じ顔で遺体を眺めている。
「ランピーさん、真面目にやってください!」
「やってるやってる。事件もパズルと同じ。ピースを探してはめれば、全体が見えるんだ」
聞き込み
まずはトゥーシーから事情を聞くことにした。
「カドルスの友達って言ってましたね?」フレイキーが尋ねる。
「そうだよ。僕たちはよく一緒に遊んでたんだ。昨日も川辺で釣りをしてね……でも帰り際、誰かにつけられてるみたいだって、カドルスが言ってたんだ」
「誰か、って……?」
「分からない。でも、カドルスは怖がってた」
フレイキーは眉をひそめる。
「つまり、計画的な犯行の可能性が高い……」
「うーん……でもさ」ランピーがのんびり口を挟む。
「このコーヒーカップ……中身が残ってるけど、甘い匂いがするよ」
「え?」
「カドルスはいつもブラックしか飲まない。甘いの嫌いだったろ?」
「確かに……!」フレイキーは驚いた。
容疑者たち
町に戻って調査を進めると、浮かび上がった名前が三つ。
ナッティ:甘い物好き。砂糖を何でもかけてしまう癖がある。
カドラス:カドルスのいとこ。見た目は瓜二つだが、性格は少し違う。
フリッピー:戦争のトラウマで二重人格を持つ兵士。最近は落ち着いていたが……
「この中に犯人がいる……ってことですか?」フレイキーは不安げに呟く。
「パズルはあと三ピースくらいだな」ランピーはにやりと笑う。
真相
調査の結果、現場に残された砂糖の袋から、ナッティの毛が発見された。
しかしナッティ本人にはアリバイがあった。事件当時、別の友人とキャンディショップにいたのだ。
次に疑われたのはカドラス。しかし彼はカドルスと最後に会ったとき、まだ元気だった証言が出た。
最後に残ったのは……フリッピー。
「おいおい、オレじゃない。オレはカドルスに感謝してるんだ。あいつは……オレの発作を止めてくれたことだってある」
だがランピーはゆっくり首を振った。
「違うよ。犯人は――」
フレイキーが息を呑む。
「誰なんです!?」
ランピーは真っ直ぐにトゥーシーを見た。
「君だよ、トゥーシー」
犯人の動機
トゥーシーは震えた。
「な、なんで僕が……!」
ランピーは説明する。
「カドルスはブラックコーヒーしか飲まないのに、現場には甘い砂糖入り。つまり、誰かが無理やり飲ませたんだ。しかもコーヒーカップには小さな歯型があった。ワニの歯だよ」
フレイキーがはっとする。
「……トゥーシーの!」
「動機は簡単さ。カドルスはいつも人気者で、君はその影に隠れていた。友達だったけど、嫉妬は友情を簡単に裏返す」
トゥーシーはついに泣き崩れた。
「僕だ……僕なんだ! でも殺すつもりじゃなかったんだ! ただ、ちょっと眠らせようと思って砂糖に薬を混ぜただけで……!」
終幕
真相が明らかになり、トゥーシーは警察に連行された。
オフィスに戻る道すがら、フレイキーは複雑な顔をしていた。
「結局、友達同士の事件だったんですね……」
「そういうこともあるさ」ランピーは再びパズルを取り出した。
「人生はいつもピースが足りない。だから、僕ら探偵がはめるんだ」
フレイキーは苦笑しつつも、少しだけ誇らしげに思えた。
こうして、探偵ランピーの新たな事件簿が幕を開けたのだった。