私達は、SCP財団とかいう謎の組織に施設ごと消されてしまったんだ。
どうしてそんなことになったかって? それは私の口からじゃ説明できないかなぁ。何せ私はその時の記憶がないんだ。気が付けば、私は研究施設の残骸の中で寝転んでいた。まるで夢遊病のようにふらりと外に出ると、そこには地獄が広がっていた。
辺り一面血の海さ。死体だらけの死体だらけ。そこかしこに転がる首のない死体に手足の無い胴体、それに頭を潰された死体。それら全てが見覚えのある奴らばっかりなんだぜ? 笑っちまうよなぁ! はっはっは! ん? 俺か? 俺は別に大丈夫さ。何故ならこの通りピンピンしてるし、どこも怪我をしてない。そうだろ? なにせ俺だけは生きて帰ってきたんだから。他の連中と違ってな。
え? 何があったのか知りたいって? しょうがないなぁ。特別に教えてやるよ。その代わり誰にも言うんじゃねえぞ?よしよしいい子だ。それじゃ話すぜ――
それは俺がまだ十歳だった頃のことだ。
俺はその日、いつものように近所の公園へ遊びに出かけたのだが、そこには先客がいた。
それが彼女との出会いであり、全ての始まりでもあった。彼女はベンチに座って読書をしていた。当時の俺はまだ幼かったし、本を読む習慣もなかったから彼女が何を読んでいるかまではわからなかったが、恐らく絵本だろうと思った。
しばらくすると、彼女は本を閉じて立ち上がった。
「こんにちは」
突然話しかけられて戸惑う俺に向かって、彼女は優しく微笑んでくれた。
「隣に座ってもいいかな?」
断る理由もないと思い、黙ったまま小さく首肯する。すると、彼女は嬉しそうな表情を浮かべながら、ありがとうと言ってきた。その笑顔はとても可愛らしく見え、僕は思わず見惚れてしまうほどだった。
「じゃあさっそく行きましょうか!」
「え?」
「ほら! 早くしないと置いて行っちゃうわよー!」
そう言うと、白衣の少女は僕の返事を待たずに走り出した。僕もそれに続いて駆け出すと、少女の隣に並ぶようにして走った。
目的地に向かう道中、僕らは様々な話をした。
例えば、お互いの名前について。
「私はアリスっていうの」
「へぇ、可愛い名前だね」
「そ、そう? そんなこと初めて言われたかも」