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「…んぁ?」「痛ってぇ…」
目覚めれば、そこは先程と変わらない通学路だった。
いつも通りの風景に少し安堵して、一緒にいた彼の姿を求める。
「ぐちつぼ〜」
「わ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁ!?」
頭痛からか顔を顰めていたぐちつぼが、俺を振り返った瞬間絶叫した。
「っ!?何ぐちつぼ!?ちょ、びっくりさせないで?」
「…えっあ、らっだぁ?」
「そうだよ〜。もー、いきなり何なん?」
「いや、だってお前…その見た目じゃ、…」
「…は?」
震える声に驚き、自分の手元を、見える限りの胴体を見る。
「…え゛ぇ゛ぇ゛ぇぇっ!?」
確かにこれは叫ぶのも無理はなかった。
俺の体は、先程襲ってきた青い鬼のものと全く同じになっていたからだ。
「え、これ何!?待ってホントにどういうこと?アイツの能力?」
「いや能力じゃないと思う…絶対人間じゃなかったし、まず存在が違法だろあれは。もう今居ないけど。てか、なんでらっだぁがあの青鬼になってんの」
「いや知らんて。てか、俺らって青鬼になんかされた?」
何気ない問いかけに、何故かぐちつぼは気まずそうに目を逸らした。
俺は思わず青鬼のままの腕で手を伸ばす。
「え、何?なんか、聞いちゃいけないやつ?」
「あー…いや、結構グロいけど大丈夫なら別に…たぶん」
「教えて。ぐちつぼになんか隠されてる方がやだ」
「…それなら。えっと…、その、実はらっだぁ、あんときアイツに…”喰われた”んだよ」
「そうなん!?w え、俺青鬼に生まれ変わったってこと?」
「いや、自分が喰われたことへの軽さエグ…w あ、でも、生まれ変わったわけじゃないと思うんだよね。記憶ありそうだし、挙動も割とらっだぁっぽいし、あとなんかさっきの青鬼みたいな怖さがない」
「わーい」
「喜ぶ前にらっだぁの姿に戻ってくれないと見た目的に怖いんだけど…」
「それはごめん。えー…っと」
言われて気が付き、元の姿に戻れないか試してみる。
「よっ、と。どう?」
「あー、うん平気…いやダメだわ、手が青鬼過ぎる」
手元を見直すと、青い肌に尖った爪。これは確かにやばい。
「うわホントじゃん。ん〜、これでいける?」
「お、よしよし大丈夫。てか戻れるんだな」
「ね。俺も思った。自分の意思で動かせるってことはもう俺の力になっちゃったんかな」
「…ちょっと待って。らっだぁ、能力なんだっけ?」
急に真剣な顔つきになるぐちつぼに、戸惑いつつもとりあえず答える。
「え…『バーサーカー』。主に身体能力強化。リアルス◯イダーマンになれる能力だけど」
「今能力使ってみて?」
「へ?…あーおけ、わかった」
言われるがまま、その場で能力を発動する。
途端、俺は先程までの青鬼の姿に戻った。
「うわ゛ぁ゛っ!?は?なんでなんでなんで?」
「やっぱり…能力が変わってる。青鬼に喰われたからか…?」
「俺の能力『青鬼』になったってこと?それ色々とやばくね?」
「ぶっちゃけやばい。能力が変わるとかありえないし、あんなバケモンも存在しないはずなんだよ」
「世界超越しちゃったか…」
「俺もよくわからんし、なんかこういうこと知ってそうな人に聞いたりすべきかもな」
「もう学校は諦めるとして、俺これからどうやって生きていけば良い??」
「まあ…とりあえず俺の家で一緒に暮らすか。何かと楽だろうし、お互い単独行動は怖いし」
「お、良いね。じゃあもう帰ろ」
「おけ〜」
俺達はひとまず思考を放棄し、ぐちつぼの家へ帰ることにした。
俺が、皆が願っていたことは、叶うはずがないとわかったうえでのただの空想だ。
誰も信じていなかったし、それを承知でその御伽噺を楽しんでいた。
だからこそ、それが本当に起こることなんてないと思っていた。
きっと、そう思っていたときこそが幸せだったんだろう。
夢は夢のままで、現世を死へ向かって歩まなければならないから。
ジジジッ…
二人の去った方角を、じっと見つめる監視カメラ。
その画面を遠隔で眺める一人の青年。
「へえ〜…まさか、あの人が選ばれるとはね。もう一人…も、そうかな?楽しみだな〜」