「ママ! パパ!!」
「星奈!」
迷子センターに着くと、お菓子とジュースを貰ってか上機嫌の星奈が待っていた。
笑顔を向ける星奈とは対照的に環奈は涙を零しながら星奈を抱き締めた。
「あー、せいな、ずるい! おかしとジュースもらってる!」
俺に抱かれている海里は星奈だけお菓子とジュースを貰っている事が不満らしく怒り始めた。
そんな光景を見兼ねたスタッフの人が気を利かせて海里にもと星奈と同じお菓子とジュースを持って来てくれる。
「良かったらこれ息子さんにもどうぞ」
「すみません、いただきます。ほら海里、お姉さんがお菓子とジュースくれるって」
「わーい! ありがとう!」
「どういたしまして」
何とか見つかった星奈を引き取り、俺たちは何度も頭を下げてから迷子センターを後にした。
一旦園内から出て車へ戻った俺たちは、星奈に何故環奈の元を離れたのか理由を聞いた。
「ママ、もうだいじょうぶ?」
「うん、大丈夫だよ。それよりも、一人でどこかへ行っちゃ駄目だって、ママいつも言ってるよね? どうしてきちんとお話してくれなかったの?」
「だって、ママ、ぐあいよくないから……パパにいわなきゃって……」
そこで、やはり俺の考えていた通り環奈が具合が悪そうにしていた事に不安になって俺を呼びに来ようとしていたようだ。
現に星奈は俺たちが居たコースター付近の木陰で一人泣いているところを客が見つけてスタッフに伝えてくれたらしい。
「星奈が不安になったのは分かる。それで俺を呼びに来ようとしたのも分かる。けどな? 黙って居なくなったらびっくりするだろ?」
「……うん」
「それじゃあ、もう二度と、黙ってどこかへ行かないって約束出来るか?」
「……うん……」
迷子センターでは笑っていた星奈。だけど、俺たちに責められて悲しくなったのか、それとも、今になって急に不安な気持ちが押し寄せたのか、
「……ご、ごめんなさぃぃ」
大粒の涙を流して泣き出してしまった。
「怒ってねぇから、泣くなよ」
「うわぁ~ん……」
泣き止ませようと頭や背中を撫でたけど、それは逆効果だったのか余計に泣き出した星奈。
そんな星奈を見てまた泣き出した環奈を、
「もう、ママもせいなも、なきむしだなぁ」
なんて、貰ったジュースを飲みながら海里が言うもんだから、思わず笑っちまった。
今回はこの程度で済んだから笑い話にもなるけど、もしこれが連れ去りとか大怪我をしていたりしたらと思うと怖くなる。
(やっぱり我がままを通すばかりじゃ駄目だな。乗り物も順番に乗せるとか、譲り合いをさせる事を覚えさせて、なるべく全員で行動しよう)
泣き止まない星奈をあやし、安堵の涙を流す環奈の肩を抱きながら、改めてそう思い直していた。
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