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【Revolutionary】
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何もかもが、おかしいと思った。
明けない夜はない
止まない雨はない
そんなもの、全てが綺麗事にしか聴こえない。
だって、現に「今」苦しんでいるのに。
その今をどうにかしなければ、意味なんてないじゃないか。
毎日懸命に働いてる父母が、何故報われない?
誠実に暮らしてきた姉が、何故身売りされなければならない?
育ち盛りの可愛い弟妹達に、食物さえ満足に与える事が出来ないのは何故なんだ。
上がり続ける税に少しも楽にならない生活。
こんなの、搾取される為に生きているようなものじゃないか。
だから、全てを変えようと決めた。
根強く残る、身分も制度も階級も思想だって。
全部。全て。無くなって仕舞えばいい。
それから数十年、唯ひたすらに戦った。
剣だけでは目標へ辿り着けないと気付き、知識と教養も蓄えた。
そうして、目標達成にはまだまだだが、自信となる実績と権力が付いてきた時期での、やっとの里帰り。
父母は年老いたけれど、変わらぬ瞳で私を迎えてくれた。弟妹は立派に成長し、私を英雄として誇らしく思ってくれていた。姉には子供が産まれ、案外幸せに暮らしているという。
私の愛する家族。
原動力たる家族がいてくれるからこそ、私は戦えるのだと、改めて実感する。
酒屋で父母に上等な葡萄酒を買い、パン屋で弟妹にふかふかのパンを買う。
姉にはまた今度、姉の好きな色の洋服でも子供とお揃いで仕立てて贈ることにしよう。
家では、母が張り切って、私の大好物のシチューを作って待ってくれている。
待って、くれていた はずだ。
炎に包まれた生家の前で、立ち尽くす。
葡萄酒の瓶が腕からすり抜け、地面でパリンと音を立てて、粉々に砕け散った。
「全部お前が悪いんだ。」
炎と煙が渦巻く中、その灯りに照らされて、一人の男の血走った目がこちらを睨み付ける。
火を付けたのは、かつてこの地で共に新しい世界を作ろうと語り合った、親しい仲間のひとりだった。
「数十年も顔を見せないで今更何だ。成功した自分を見せびらかしにでも来たのか。それを見せ付け、見下しに来たのか」
「俺達を見捨てて、自分だけが良い思いしていたんだろうが」
「世界を作ろう世を変えよう。綺麗事を嫌っていたお前が、一番の綺麗事を言っていたなんて、皮肉なものだな」
『俺達を見捨てて、自分だけが良い思いしていたんだろうが』
友の言葉が、頭の中で延々とリピートされる。
…見下すなんて。見捨てようと思ったことなんて、これまで一度としてなかった。
俺の成してきた事は、信じてきたものは、
ゆめみた、せかいは。
全て 間違いだったのだろうか。
徐々に生家だけでなく、他の民家まで広がって行く火の手を見ながら、呆然と途方に暮れる
……どうすれば、よかった?
Reincarnation….