【Adventurer】
1492
父の船に乗り、網を引きながら地平線を眺める。
いつかこの先の先、誰も見たことのない世界を見るんだ。
大人になった。挫折も知った。
でも、諦めなかった。
無謀だ夢物語だと言われ続けたが、俺には確固とした自信があったし、やり遂げる行動力もある。
それに賛同してくれる仲間も、応援してくれる人々も徐々に増えていった。
それがさらに力になり、益々目標に向かって突き進んだ。
何月何年もの月日を超えて、その地が見えた時、辿り着いた時には感動で胸が震えたのを覚えている。
見たことも出逢ったこともない、褐色の肌をした者達。恐る恐るといった様で姿を現す彼らと、ファーストコンタクトを取ろうと試みた瞬間。
複数人の部下が剣を振い、目の前に血の雨が降った。
「お前達、何を…」
ばたりと倒れ込んだ異国の民を、ぼんやりと見下ろしながら呟けば。
どこか興奮気味に部下は答える。
「野蛮人が何をするか分かりません。幸い文明は私たちより遥かに劣っている様子です。今のうちに捕獲して、躾けておきましょう」
「しつけ…」
「それが上手くいけば、様々な肉体労働をこの者たちに。深刻な人手不足から解放され、国には革命が起きます」
真っ赤に染まった剣を片手に、同志だと思っていた者達は笑う。
「これで我が国の繁栄は約束されたようなものですね、船長!」
あんなに色鮮やかだった世界が、一瞬にして色褪せていく。
『これで我が国の繁栄は約束されたようなものですね』
部下の言葉が、頭の中でわんわんと反復する。
…犠牲の上に成り立つ繁栄なんて、そんなもの一度だって望んだことはなかった。
お前達には見えていないのか。
肌の色は違えど、流れる血の色は俺達と同じ、赤い色をしている。しているのに。
この広い広い海の向こうには、希望だけが拡がっていると、そう信じていたのに。
……いったいなにがたりなかった?
Reincarnation…..
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