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#女主人公
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この世には政府にも知らされていない存在がいる。「神魔力」と呼ばれる力の存在。
この神魔力が宿っている少年少女は 伝説の存在『天使』を見る事が出来るという。
いにしえの都市伝説だが、今まで見れた人なんて聞いたことがない。
まぁ都市伝説だよなぁと思いつつ本を片付け、本棚にしまう。
「おかあさ〜ん、今日は買い物に出かける日だよ〜」
元気いっぱいの女の子、高校生くらいの子か。名前はじゅんという。
今日は大きなショッピングモールに行く日だ。服やアクセサリー、オブジェや家具がたくさん売ってある。
母は季節のオブジェを眺めるのが好きだから月に数回のパラダイスに行くようなもの。
「行くぞ〜」
「はーい!お母さん、早く!」
「え〜ん待ってー」
姉はツンツンしたまま。もう3年は口をきいていない。同じ家に住んでるのに顔も合わせない。
昔は楽しそうに話してたのにな。
しんみりしないで、今日は買い物の日!
私も沢山買ってもらうんだから!
────────────────────
車で移動して2時間。人で賑わっていた。
フードコートを横切れば香ばしい美味しい匂いに誘われ、子供連れの方や大人、お年寄りの方まで幅広く利用されるショッピングモールだ。
私、じゅんは特に買うものはない。
母の付き添いできただけだ。
ちょこっと服を買えたらいいかなって。
でも高いブランドは私に合わないし
安い服で可愛いか格好いい服がほしいかなって。
「私デビルゴに行くから二人は好きな所で休んでて」
「またデビルゴ?お母さんも飽きないねえ。分かったよー」
デビルゴ、デビルみたいなお店だが至って普通のお店だ。
お洒落で季節のオブジェがたくさん売ってある。母の行きつけのお店。
一度入ると1時間は出てこないから、
父と私はいつもどこかのベンチで休むことにしている。丁度近くのベンチが空いている。
「おとー、ここに座ろう」
「おー」
「お?お前じゅんこじゃね?」
「あ?」
横から声をかけてきたのは身長170cmほどの大きな男。
茶髪でチャラそうに見えるが服装はストリート系と結構こだわってるやつ。
女は見るよ〜こういう所。
「何?あんた誰?」
「俺だよ俺」
「ん?知り合いか?」
「えー、、、知らん」
少なくとも私は男性の友達なんていない。
いたとしても中学生の頃によく遊んだ子しかいない。
けどその時はスマホを持ってなかったから、
友達登録なんてことも出来ない。
で、茶髪でストリート系イケメンが
何の用でこんなブスに話しかけるんだろう。
「イケメン君、どなたか分からないが人間違いをしておるぞ」
「おるぞって…懐かしいなあ!あんたって俺のこと呼んでただろ?」
「あんたぁ?男はみんなあんたじゃ」
「方言も懐かしい。俺、Jだよ。○○中学校3年生同じ班だったろ?」
「…J。心当たりは一人しかいない。けど、こんなイケメンにならない。人間違いでーす」
「イラッ…なるんだよなー。お前じゅんこで間違いないな?」
「ないよ」
この馴れ馴れしいJと名乗った男。
○○中学校3年同じ班と聞いて心当たりが一人。
その子は黒髪でボサボサした頭で垂れ目で、いつも一匹狼してた。
優しくてモテてそうだったけどモテてなかったのか。
ドシンっと無遠慮に隣に座るからちらっと全身を見るとやはりストリート系の服が似合う。こいつお洒落したらイケメンじゃん。元がかっこいいもんなぁ…。
それに比べて私はしま○らコーデ。
ファッションの事を何も考えてない。
なんか泥沼から出てきたカエルみたいな格好…。
恥ずかしい恥ずかしい。
「J、いかにも。私はじゅんだ。お前なんでこんな所にいるんだよ?」
「母の付き添いで買い物。そっちは?」
「同じだよ。デビルゴに母はいる。一度入ったら長いんだよねー」
「うわあ、同じ。デビルゴじゃないけどその隣の店に俺の母さんはいるよ」
「お互いご愁傷さま」
「なむなむ」
いや、誰も死んではいないのだが。
懐かしい中学生の頃の同級生と会って乗り気じゃないじゅんでも、Jは久しぶりの再会に喜んでるのか、どんどん話しかけてくる。
「な、この数年間何してきたんだ?」
「私は通信校に行って障害者になった。そっちは?」
「それは、大変だったなぁ…。俺はバイト三昧。上司がクソみたいなやつでさ…」
Jの愚痴に少し付き合ってやる。
仕事で苦労してるみたいで、愚痴を話しだしたら止まらない。
日本人あるあるなのかもしれないな。
途中で涙目になりそうになりながらもぐっとこらえ、じゅんも頭をわさわさ触ればJは照れ臭そうに手を払う。
「頑張ってるボーイにお姉さんからのなでなでだー」
「いらねっつーの!」
ワイワイ話してると盛り上がってきたのか、
じゅんもJもどっちも笑顔になっていた。
父は微笑ましくその様子を見守っていた。
だが、平穏は突然破壊される事になる。
ビリリリリリリ!!!!
突如店内に広がるノイズの走ったアナウンス。
何だなんだと皆お客さんが店から出てくる。
そして、次に背筋も凍るほどの恐怖が襲い掛かってきた。
「えー我々ハ武装派集団ダ。直ちに投降するか死ぬか選べ。30分後までに1階に全員集まるように。もしも来ない者は火災報知器を改造して毒ガスが撒かれる。以上」
テロ…!?この大きなお店でテロが行われたというの…?!
皆パニックになってすぐに出口に向かって走り出す。
階段も人で押し寄せて転がった人を踏み台にして降りていく。
エレベーターとエスカレーターも同じ。
人で機能しなくなっていた。
「おとー、どうしよう?」
「まずは母さんと合流だ。Jとやら、お前さんも家族と合流しなさい」
「わかりました。じゅん、またあとで落ち合おう」
「うん…」
この時なんだか嫌な予感がした。
まるで何か大きなものを失いかけているような。
Jはデビルゴの隣の店に行き、
母と父と合流していた。
ホールには続々と人が集まっている。
パンパンパン!
ホールに選別されているのか、人が目の前で殺されていく。
蟻のように多いなと言わんばかりに躊躇なく人を殺していく姿に本当に犯罪組織なんだと恐怖を叩きつけられる。
「お母さん!」
「テロ…?」
「そう。裏口から逃げるぞ。Jくんにも教えてこい」
「分かった」
Jの家族の元へ駆け寄るとJの母親は泣いていた。
怖い怖いと恐怖を払拭したくてもできない。見てしまったんだ、ホールに行っても殺される事を。
しかし、この店の角には裏口がある。店員も人を集めているからそうに違いない。
「あの店員の指示に従って裏口から脱出する。それでいいな?」
「ok」
店員の指示通り階段の裏口があった。
隠されていたらしい。
私達を含めた20人ほどお客さんを連れて階段を降りていく。
ここは3階。ゆっくり、静かに。
その中でも銃声は聞こえ、パニックを起こさないように黙って降りた。
1階まで降りて出口にまで到着した。
さぁこれから皆で逃げようと走り出した瞬間__
パンッ!!
「オヤオヤオヤ、こんな所から逃げるなんて餌なんだよ?お前たち」
「テロ組織…!」
「撃つ前に押さえつけろ!」
「やー!」
銃を構えてくるがもう後がない。
お構いなしに畳み掛ける。すぐに押し倒し、手足も拘束して銃を奪う。
一人しかいなかったからまだよかった。
「一人だからまだ勝てたが…」
「J、どうしたの?」
「銃声が止んだ…今何時だ!?」
「12:30分ぴったりだけど」
毒ガスの時間が来た。すぐにここから離れないと!
そう思って油断したその時、テロ組織が指を構えてじゅんの方へ向けていた。
指の銃と思わしき武器を発泡する。
ドンっ!
「ガッ!」
「え…?J…?」
「押さえつけろ!」
咄嗟にかばったJの胸部には大きな穴がぽっかり空いていた。大量の血が吹き出る。
よろけ崩れるJをすぐに抱きかかえてゆっくり降ろす。
「ヘヘ増援を呼んだ。すぐに人は来る。お前たちは終わりだ」
「まずい…じゅん、逃げるよ!」
「え…だって…」
「早く!立って!!」
せめて遺体だけでも…家族に持ち上げられて背中を押される。
遺体だけでも回収したかった。
あいつ、私を庇って…死んだ…?
────────────────────
あの後、全力で逃げたが捕まることなく警察に保護された。一人死んだことも、中の様子も少し話してきた。
じゅんの母がじゅんを励ます。
「あの子の事は残念だったけど…」
「………何も言わないで。私が助かってよかったなんて。汚い…汚い汚い…!」
誰かの犠牲を得て得られる救済などそれは救済ではない。汚い心がにじみ出た善意という押し付けだ。
もっと話せばよかった。もっと笑えばよかった。当たり前のように笑っていたあいつはもういないんだ。
遺体もあいつらに回収されて腹立たしい。恐らく臓器を取り除いて売るつもりなんだろう。
どこまでも人の都合を考えないで動く者たちには腸が煮えくり返る。
「部屋に戻ってるわ」
その日から一週間、じゅんはまともに食事が喉を通らなかった。
ぐすぐすと泣く音が部屋からこぼれ落ちるように聞こえた。
一週間後、泣きつかれたのかよく眠れるようになった。
母も頃合いを見て部屋に入ってきた。
おにぎりの差し入れを持ってきたらしい。
「じゅんちゃん、彼のこと辛い?」
「辛いよ。もっと話せばよかった。まさか死んじゃうなんて(泣)」
「…人はどこで死ぬかわからないからね。死と隣り合わせとはよく言うよ」
「…死がこんなに身近にあるなんて」
「おにぎり食べたら降りておいで。昼飯にしよ」
「分かった…ありがとう」
おにぎりを少しずつ口に頬張る。
涙の味がしょっぱい。口の中で米粒が解かれる。
ひと粒ひと粒噛み締めて完食した。
おにぎりを食べ終わったら約束通り昼ごはんを食べに一階に降りた。
『いてっ!』
ふと誰かの声が聞こえてえ?と振り返るが誰もいない。
気のせいかと思って食事に戻る。
ウインナーと玉子焼き、トマトのサラダだ。
母の手作り。本当に美味しい。
命の重みを知らされる日だな…。
あっという間に食べ終え、生ゴミの中にトマトのヘタを捨てる。
ついでに母に生ゴミを外に捨ててきてと言われ、渋々引き受けた。
────────────────────
外に出ると大きなゴミ箱から足が生えていた。
真っ白い肌の裸足だ。え、孤児?
「大丈夫ですかー、あらら!?」
掴もうとした足に手を伸ばしても掴めずそのままバランスを崩してじゅんもゴミ箱に頭から突っ込む。
生ゴミをゆっくり外に置いて、がたがたゴミ箱が鳴りながら体勢を戻す。
「何で触れないの?」
「くせーぞお前」
「は?臭い?」
!?
目の前にいる者は、間違いない。
見た事ある顔。Jと全く同じ顔をしていた。
ゴミ箱からヒョコッと顔を出す形でこちらを睨みつけてくる。
霊として帰ってきたのだろうか?早すぎないか?
「お前風呂入ってんのか?」
「これのせいだと思うけど…」
「くっさ!生ゴミかよ!」
え?てかこの人背中に天使の羽と頭には光輪がついてる。しかも透明。
前本で読んだ神魔力を持つ人にしか見れない都市伝説の『天使』!?
恐る恐る触ろうとするが、触れない。
「あんた…どこから来たの?」
「あー?しらね。てか逆にここどこ?」
「ここは私の家。でその箱はゴミ箱」
「ぺっぺっばっちい!おい人間。俺の名前はなんだ?」
「えー…記憶喪失なの君?」
「そうだ!教えろ人間」
この際変なことでも吹き込んでやろうかとギャグ魂が燃えそうになったが、すぐに抑え込む。
箱の縁で歩いて遊ぶJに名前と人間だった頃の話をすることにした。
「ふむ。俺はJという名前で死ぬ前まではショッピングモールにいてテロ組織に殺されたと。お前みたいなブス庇ったのか俺は…」
「まぁそうです。胸に穴が開いてるのが何よりも証拠です」
「空気砲放射線だろうな。で、お前は?」
「わたしはじゅん」
「なんで俺が見える?」
「それがわかったら苦労しないんだよな〜」
「じゅんちゃーん!まだー?」
「あ、いけな。あんた2階の私の部屋においで。後で詳しく話そう」
「ふーん」
素っ気ない反応をするJをおいて、
生ゴミを捨てたあとすぐに部屋に戻った。
透明で触れないのなら部屋に連れて行くこともできないから、来てくれることを待ったのだが…。
ガチャと開ければJはいない。
「だよなぁ」
不思議とじゅんはJを探したりはしなかった。何故か霊界を探検してるだろうと思って探しに行かなかった。
そして天使故に気まぐれな性格もなんとなく察していた。
「よいしょっと。もう外に出るのが怖いなぁ…」
「あんた、何があったん?」
「あ、姉貴…。実はさ…」
ずっと数年間声をかけてこなかった姉も流石に心配になったのかテロ以降話しかけてくれるようになった。
テロの一連の流れを説明し、不安を払拭させてもらった。
────────────────────
あいつは追い払えたな。てか追いかけてこないな。意外だ、こんな珍しい存在を放置するなんて。まぁいい。霊界って静かだな…。誰も喋ってないぞ。
椅子に座る人、ゆっくり歩く人、空を飛ぶ人人、同じことをする人、地面に座って何もしない人など霊って静かな奴らばかりなんだな。
でも話しかけても応答してくれない。
それよりか見えてることすらも危うい…。
「もしもーし。俺のこと見えてますかー?」
「あー…うー…」
「ダメダコリャ」
天使はある特別な力を宿した人にしか見れないって聞いたけどあのじゅんってやつがそうなのか。それにしてもあいつブスだったなー。俺付き合うならもっと美人がいい〜。
何であんなブス庇ったんだろ?
────────────────────
「あ!またじゅんこ、給食残してる」
「紅しょうがは嫌いなんだいっ」
その男の子は給食を無理やり食べさせようとしてきたが、結局は自分で食べたんだっけ。からかうのは好きだが少しは罪悪感もあったのかな。
「プリッキュアプリッキュア♪」
「ブフッ」
突然プリキュアを歌い始めて牛乳を吹く。
こいつ見てたのか?と思うほど鮮明に覚えてやがる。
もう中学生の子供が幼稚園生向けのアニメの歌を歌われると、しかも女の子向けのアニメを歌われるとシュールで面白い。
────────────────────
「んぁ〜…」
Jは木陰の下で日向ぼっこして寝ていた。霊になっても太陽の温かみは感じられるんだなぁとのんきに思いながら、しばらく一人で放浪する旅に出かけた。
〜じゅんサイド〜
あの天使…幻覚だったのかな?Jが好きすぎるあまりみていた幻覚だったのかも。
だって、そんな存在いるはずないもの。
そうして、奇跡の再会は呆気なく素通りされ、
Jもじゅんもそれぞれ別の道を進んでいった。
〜1年後〜
じゅんは障害者のまま、社会人となり、障害者雇用で会社員になっていた。
今は丁度ゴールデンウィークで休みが続く。
1年間まるっきり姿を表さなくなったJのことはもう忘れかけていた。
というか幻覚として処理していた。
『じゅん〜、今朝のニュース見た?』
「あー、見たよ」
朝から連絡を取り合うのはSという唯一のリア友の女の子だ。
この子は家庭が複雑で、B型作業所に通ってるほどメンタルが病んでいる。
「意外だわ、Sが都市伝説なんかに興味持つなんて」
『まぁね〜。天使興味あるよ』
今朝のニュース。天使が見える少年の話で少し持ち切りだった。
天使の輪っかを見たんだ!と指差す方向にはなんと、アイス屋さんの前で立ち往生している茶髪の天使が。
美味しそう〜と言いながら憑依していくのが見えた。
「あいつ…なにやってんの」
あそこは東京。あいつ満喫してんな…と思いながら追いかけようか迷ったが、昔読んだ本にこう書いてあった。
“惹かれる縁は何度切ってもつながる”と。
Jとも惹かれたらきっと繋がるだろうと思ってあえて探しに行かない。
それに寂しくなって帰って来るだろうし。
ここ何処なのか知ってるのか知らないけど。
「うま!憑依さいこー!」
「あー…そうかい」
「あれ?イカ飯は?」
「ないよ。てかどうやって現れたんだ?」
「イカ飯食ってる若いやつに憑依してたらふとお前のこと思い出して」
突然頭上から天使が降ってきた。
憑依を好き放題している様子にちょっと嫌悪感が湧く。
なんでこいつ死んだのに記憶がないんだ。
死んだら記憶が消えるのか?
それとも天使だから?まさか霊全員が天使じゃないよな?
なんてモヤモヤと疑問が次から次へと湧いて出てくるが、そんな事より!
「あんたうろちょろしないで」
「はあ?何で他人のお前に指図されなきゃならないんだよ」
「憑依とかしちゃ駄目だよ」
「何で。迷惑かけてないじゃん」
「かけてるよ…。他人の家に土足で踏み込むんだよ?迷惑だよ」
その言葉にイラッとしたのか、Jはゆっくり立ち上がる。
天使の羽を羽ばたかせながら、体についたホコリを払うように。
Jは記憶がない。けど縁はあると信じたい。
どうにかしてここに引き止められないか…そんな事を考えていたら顔に出ていた。
「ケッ、天使をここに引き止めたいってか?」
「いや、そうじゃないけど…」
「思いっきり顔に出てたぜ。あれか?自己顕示欲ってやつ」
「ちがっ…!」
ビービビビ!!ピロンピロンピロンピロン
「ヒッ!」
災害アナウンスだ。急いでスマホを見ると地震が来ますとのことで、すぐに家から出ようとしたのだが、目の前にいたJは何かトラウマでもみたかのように酷く怯えて蹲っていた。
すかさず心配そうに声をかける。
くそ…こんな時でもこいつに触れないのか。
「大丈夫…?」
「こ…この音…なんか怖い…」
「大丈夫。側にいるから…」
パシッと手を払われる。
何で…と声が出かけたが、Jの方が辛そうにしていた。
こんなみっともない姿晒すなんて屈辱だ、とでも言わんばかりに。
「触るな!どうせ触れないくせに。うざいんだよお前。偽善者!」
「偽善者って…何で…」
「なんで俺がお前を庇ったのか言ってやる。馬鹿だったんだよ!お前みたいなブス庇うはず無いだろ」
顔は醜いからブスと言われるのは慣れていた。
ブスなことを笑いに変えてたくらいだ。
だが、好きな人にブスと何度も言われると心が折れそうになる。
今までの不安と悲しみが連鎖になってポロポロと涙が出てくる。
「そんなこと言わなくたって…」
「うるせえ!どっかいけ!お前なんか死んじまえ!」
「……!!!」
Jはそのまま飛び去って消えていった。じゅんは涙が止まらずJの名前をつぶやきながら泣
き崩れた。
その直後、震度4の地震が来て、泣いてばかりはいられないと思い、すぐに家族に家から出るよう指示した。
────────────────────
何であんな音が怖くてたまらなくなるんだ。惨めだ。男が泣くなんて。俺泣き虫じゃないのに。そうだよ、泣いたのはあの音が怖かったからだ!断じて泣き虫ではない!
でもあいつ心配してくれてた…それを俺は…いや、あいつブスだしいいや。
『そんな事言わなくたって…泣』
…泣いてた。女の子を泣かせてしまった。
それは男としてどうかと思う。ブスだと割り切る以前の問題だ。
心配してくれてたのにな…やっぱり戻ろうかな。戻って謝ろう。
と思って振り返った瞬間…
ビービビビ!ピロンピロンピロンピロン
「ヒィッ!」
またあの音だ。この音の正体は何なんだ。
何を知らせるものなんだ。
いや、この音聞いたことがある。テロ組織に殺されたとなればそれに関するものだろう。けどそれ以外知らされていない。記憶がないから分からない。
考えてもしょうがないけど嫌でもこんな音聞いたら考えてしまう。
フラフラになりながらも謝るべきなのは自分なので、Jはじゅんの顔を浮かべて戻ることにした。
「じゅんちゃん、部屋にこもってどうしたの?テレビつけときなよ」
「う…ぐすっ」
「(うわーめっちゃ泣いてる…謝るのが怖いな)」
窓越しから覗いているが、じゅんは布団をかぶって大号泣していた。
テレビだけはしっかり付けて、地震の予報を見ていた。
「…おいじゅんとやら」
「ぐす…聞きたくない」
「…さっきはごめん」
「…本当に思ってるの?」
「思ってるよ…お前ブスだけどいいやつなのは分かったし」
窓越しで話しかけても誰かわかるのか。
気配とか察しられてるのかな?
なんて呑気なこと考えつつ部屋にのろりと入る。
「さっきもアナウンス鳴ってたけど大丈夫…?」
「大丈夫じゃねー。怖かった」
「おいで」
「なんだよ」
「よしよし」
「はあ!?」
カーッと顔を真っ赤にする。
じゅんは驚いていた。ふかふかの髪。少し体温を感じる温かみ。
触れることに心底驚いていた。
Jも手を振り払う。
さっきも思ったがJからは普通に触れるようだ。
「触れる!」
「それが何だよ。俺ずっと触ってるじゃん」
「………もっかい」
「ん」
指を出せば触ろうとしたが今度は触れなかった。
何で?と頭を巡らせるもお馬鹿な頭には答えは出ない。Jも不思議そうにしていた。
俺は普通に触れるのになーと横目で見ればまた泣きかけていた。
そういえばこいつ泣き虫だったな…。
ってなんでそんなこと思い出してんだ俺は。
「お前、本当に俺達何もないの?」
「ないよ。あんたが死ぬ前も久しぶりに会っただけだし」
「そっか…そうなのか」
少し残念だな。こいつが優しいだけなのか?そんなところに惚れて…い、いや、違うな。こんなブス。
俺はもっと可愛い子と結婚して幸せに暮らす…はずだったんだ。死んじまうなんてな。
人間おろか霊にすら見えないとは。もはやこいつにしか見られていないのではと思う。
東京に行ったときも憑依は出来ても話せないしつまんなかったな…。
「俺しばらくここにいる」
「もう旅はいいの?」
「いい。飽きた。それに俺のこと見えるの話せるのお前くらいしかいないし」
「そっか。死ぬ前の話でもする?」
「する。教えてくれ」
Jに中学生の頃からの話をする。
名前で「じゅんこ」といじって遊んできた事や、一緒の班になってよくバスケ、バレーボールやった思い出も話した。
そして一匹狼だったが、男子からも女子からもモテていたことも話した。
「ふふん、さすが俺だな」
「あんたナルシストになっちゃった?」
「それで?」
「うーんあとは残した給食を押し付けられたとか」
「違う違う。お前の話」
「私?」
「お前はどんなやつだった?」
えーと、面白いを極めようとしてたくらいしか言うことないなんて言えねー…。あと明るくてハキハキしてるとかか…。
そのまま伝えるが、Jの心には響いていない。
「ふーん。面白い、ねえ?あ、ゴキブリ!」
「え”っ!?ギャアアア!!」
「そういうことか笑 ククク…」
「やめてよいないじゃん!」
「触んなブス」
「え?また触れてた…?ペタペタ」
手のひらを触る。これ、分かったかもしれん。
もしかして、と思ってJのほっぺたをつんつんする。触れない。
だが優しく撫でるように触ると触れた。
「これは…」
「何か分かったのかよ?」
「分かったかも。触ろうと思えば触れるんだわ。触るって心になったら触れるみたい」
「謎が溶けたな。でもベタベタ触んなよ」
「触らんよ。わきまえとる」
「とるって…なんか懐かしいような…」
あっという間にもう夕方だ。夜ご飯が近い。
Jは暇つぶしに椅子に座ってテレビを見始めた。
じゅんは夕飯の手伝いとご飯を食べに1階に降りた。
『続報です。1年前大手ショッピングモールを襲ったテロ組織の一人が逮捕され、処刑されました。映像には大変見せられない映像があり、画像のみで…』
フッとテレビが映像に変わる。誤作動だ。
ヘリから空中から下の様子をカメラで伺っている。
すると20人ほどの人だかりと一人の死体が転がっている映像が流れた。
茶髪に胸部に空洞。
あれ…?俺じゃ…
プツンっとテレビが切れた。
ゴゴゴゴ…と地鳴りがする。今度は大きな地震だ。
またあのアナウンスがくる!
怖くてじゅんが身ごもっていた布団をかぶり、音に備えた。
その事を察してじゅんがすぐに部屋に戻ってきた。そしてその直後…
ビービビビ!ピロンピロンピロンピロン
「ぐっ…!」
「地震…今度は大きい。アナウンス音大丈夫だからね」
「………」
心の奥底から湧き出て止まらない恐怖心。
発作のように息切れがし始め、
布団越しに咳をするJの背中をとんとんする。
そして、このタイミングを見たのかさっきの続きを放送しているテレビがついた。
『ビービビビ!我々は武装派集団だ。大人しく投降するか死ぬか選べ』
あああやっぱり関係してたんだ。テロ組織のアナウンスかよ!
怖くなり、思わずじゅんの腹部にしがみついてうずくまる。
無理もない。あんな殺され方したんだから怖いに決まってる。
優しく背中を撫で、落ち着くまで待った。
ふとJの指を見ると透明から顕在化し始めていた。
天使が覚醒し始めている?
覚醒するとそうなるもんなのか?
だとしたらなぜ?なんのきっかけで?
「J!手が」
「え…?わっ」
「じゅんちゃん、地震!避難するよ!」
「え、あ…」
「え、指?空中に指?」
足から胴体にかけてすごい速さで顕在化していく。
Jは天使の霊になっていた。
正式な天使として覚醒するには記憶と知識が必要だったみたいだ。
「え、一気に覚醒?」
「天使…?あら?私の幻覚?いや、それより!じゅんちゃん、避難するよ!」
「あ…でも…」
「この家脆いんだから、あと避難警報も出てるんだから。あと君!」
「あ、はい!」
「触れる…やはり天使。不思議な事が続いてるけど、今は命最優先!避難するよー!」
Jには上着を着せ、パーカーを着させた。
羽と光輪を隠すためだ。
こんな珍しい生き物うろちょろしてたら捕まって誘拐されるに決まってる。
すぐに避難グッズを揃え、津波に備えて家電を2階に移動させて家族全員近くの中学校に避難した。
────────────────────
学校は体育館に避難している人で大勢いた。日本は避難場所の配備が整っておらず、布団も持参しないと用意されない。用意してくれる所もあるが、数が不足するのがほとんどだ。
おにぎりとお茶を無料で配布しているので父と姉が家族とJの分を取りに行った。
「J?おい嘘だろ」
Jがいない。どこ行った?あんな姿とはいえ、あいつ宙に浮いてるからバレたら大変だ。
急いで体育館から出ると階段の手すりで外の景色を眺めていたJをすぐに発見した。
その姿にホッとした。Jは思い詰めたあと、
すぐにニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「俺、全部思い出したわ。この中学校も、家族のことも、お前のことも」
「ここ、○○中学校。あんたとの出会いの場だよ」
「知ってる。バスケもやってバレーもやってたんだっけ」
「そう」
「俺、あんたに最後の別れを言いたくて戻ってきた」
「え…?」
「天界に行って慈悲で別れだけ言ってこいって言われて天使の姿と力を分け与えられて、お前のところに送り込まれたんだ」
「何言ってんの…?」
「ありがとうな、じゅん」
「やめてよ!!」
泣くじゅんをすぐにぎゅっと抱きしめる。
人の目なんて考えない。
パーカーのフードが取れてもお構いなし 。
子供から指を刺され、大人からはスマホで録画され、最悪な一日だ。
「俺、今度は霊になってアンタの側にいるよ」
「嫌だ…いかないで」
「いく。けどずっと一緒。色々教えてくれてありがとうな。アンタと出会えてマジでよかった」
パラパラ…とJの体が羽の舞となって散っていく。顕在化していた肉体が力で保たれており、最後の期限を過ぎたみたいだ。
あっという間に散っていくJの羽をただ腕の中で見ているしかできなくて余計に辛かった。
最後に手のひらに残った羽。
その羽はJの最期まで生きた証。
それを握りしめることしか出来なかった。
エンドロールカード
Xのこま様(@cocoa_0711_)作
読んで下さりありがとうございました!!