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君の”好き”を、聞いてしまった
ぷり
「ベッド、そこね。
寝てな〜あとで保健室の先生来るから」
ぷりっつ先輩に肩を押されて、あっと先輩は
保健室のベッドに横たわった。
擦り傷と、軽い打撲だけとはいえ、
私は心配で、付き添いとしてここまでた。
あと
「ほんとに付き添わなくて大丈夫だったのに」
あっと先輩がそう言って笑う。
『放っておけるわけないじゃないですか…』
小声で答えると、彼は一瞬だけ、
驚いた顔をして、目を閉じた
それから数分動かない
『(寝たのかな、)』
私は思ったけど、それ以上は何も言わず、
ベッド横の椅子に腰をおろした
保健室は、静かだった。
窓から入り込む風と、時計の音だけが
微かに響いている。
あっと先輩は、目を閉じたまま
静かに呼吸をしている。
その顔は穏やかで、
さっきまでのライブの熱気とは
まるで別人みたいに見えた。
『(こんなふうに、先輩の顔
まじまじと近くで見るの初めてかも)』
近くで見ると、まつ毛が長くて、
鼻筋が通ってて、ちょっとだけ唇が開いてて
『(かっこいいな)』
思ってしまった自分に、
胸がぎゅっとなった。
『(聞こえてないかな、)』
『もし今先輩が寝てるなら』
声が震えそうになった。
それでも、この思いを、
どこかに吐き出したかった。
『私、先輩のこと……好きなんです』
言ってしまった。
胸の奥にあった感情が。
空気に溶けて、
保健室の中にふわりと
広がっていくようだった
『ずっと、怖かったけど……
先輩が、何も言わずにそばに居てくれて
それだけで安心できてーー
こんなに人を想えるんだって、
初めて知ったんです。』
寝ている彼の反応は、何も無かった。
それが逆に心地よかった。
返事がないからこそ、
私は初めて素直になれた。
『……起きてたら、今の、忘れてください』