テラーノベル
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⚠︎注意⚠
・nmmn、BLです
・rurb、rirb、kgrb要素を含みます
(oriens×hsrbの要素あり、wnrb要素少し強め)
・任務や拠点等諸々捏造あり
・猫化
・微ヤンデレ気味
・非関西弁話者が書く関西弁
※ご本人様には一切関係ございません
※導入長めです
上記文字列に見覚えがない方、地雷の方はブラウザバッグを推奨します
猫化したrbに色々起こる話 *約10000文字
「貴方は知らないままでいて」
・‥…━━━ ★ ━━━…‥・
ヒーローというのは、案外忙しい。毎日のように本部から出動要請があり、連絡が来る時間は早朝だったり深夜だったりとバラバラである。
だからだろうか。配信者とヒーローという、いわゆる二足の草鞋状態の星導は非常に寝不足であった。それゆえに、油断した。
「なんだよこれ…」
地面に手をつき、項垂れる星導。重力に従い、肩から滑り落ちる藤の髪。そのてっぺんには見慣れぬものがついていた。濁さず言えば猫耳である。
ぴょこぴょこと動くそれはどうやら星導本人と連動しているようで、星導はその耳2、3度触り夢ではないことを確認する。
寝不足で回らぬ頭で考えだした答えはただ一つ。
「…これが噂の猫化ってやつ?」
それに返答するかのように、髪と同色の細い尻尾が揺れていた。
・‥…━━━ ★ ━━━…‥・
「どうしようかなぁ…」
猫化の攻撃を受けて十数分、星導は未だ慣れない感覚に頭を悩ませていた。いつもよりも鮮明に聞こえる音、クリアに見える景色、何もかもがいつもと違う感覚に星導の好奇心は増すばかりである。
とはいえ、任務で攻撃を受けた影響によるものであるため報告をしなければならないのもまた事実。
大の字に寝ていた体勢から起き上がり、連絡用のデバイスを起動する。さて、誰に連絡したものかと星導は同期の顔を思い浮かべる。
まず、伊波は絶対になしだ。『攻撃を喰らった結果猫になりました』などと言ってみろ。確実にキレられるに違いない。叢雲は『なんやそれ!』と興味津々で近寄ってくるか、『あほらし』と一蹴するかの二択だ。どちらにしろ誠実な対応は望めない。故に却下だ。
では、小柳はどうか。そんなの、ここぞとばかりに煽ってくるに決まっているだろう。
改めて、日頃からのDyticaの対応の悪さに星導はため息を吐く。かくなる上は、もう1組の同期たちだろう。
電話帳からその名前を見つけ、コールボタンを押す。
「…あ、もしもし。ウェン?俺なんだけど」
「るべショウじゃん!ひさびさ〜!どしたの?」
「ちょっと細かい事情は今話せないんだけど、匿ってほしくて…
あのー、西の拠点には帰れないって言うかぁ…」
「うーん、なるほど?よく分かんないけどいいよ!でも、後で理由は聞くからね〜?」
「いや、マジで助かる。ありがとう」
その後数分くらい他愛も無い話をし、星導は電話を切る。任務後で体に疲労が溜まっているのは事実だが、そのままここに寝転がり止まっているわけにもいかない。
重たい腰を上げ、星導は東の拠点へと向かい始めた。
数十分後、無事にオリエンスのアジトへと到着し入口の扉をノックした。クリーム色と水色が混じった爽やかな髪色が顔を覗かせる。
「おー、るべ!いらっしゃ、い…?」
「あはは…えっと、どうも。…ま、マナ?」
笑顔で出迎えてくれた緋八だったが、星導の顔を見るなり固まってしまった。はて、と疑問に思った星導だったが、いつもは無い感覚にあっ、と今の自分の姿を思い出す。
任務後そのままの足で訪れたのだ。当然耳を隠せる帽子のようなものはなく、尻尾だけが無理矢理ズボンの中に押し込まれている。
あまりにも動かない緋八を不思議に思い、佐伯も顔を出す。その数秒後、今週一の大絶叫がアジト周辺に響き渡った。
・……━━━ ★ ━━━…‥・
「いや〜すまんな、急に固まってしもて」
「…や、それは別にいいんだけど…
俺はいつまでこの体勢でいればいいの…?」
星導が訪れた三十分ほど前から、オリエンスのアジトでは撮影会が始まっていた。事情を説明しようとした星導だったが、あれよあれよという間に荷物を回収され、こんな状態になっていたのだ。そのまま動くなと言われてから三十分である。
…流石にそろそろ足が痺れてきた。
緋八曰く、『いつ戻るかわからんないんやから、今のうちに写真だけ撮らせて!』とのことだ。
星導はそんなに写真を撮りたいほどのものか、と思ったが、まあ俺は可愛いしな、という謎の自信からされるがままになっている。
『最後の一枚!』と言っていた写真も撮り終わり、ようやくソファに腰を掛け一息付く。どうやら、東の方は比較的平和なようで今日は4人全員任務がないらしい。なんだか不平等だ、と星導は思ったが口には出さなかった。
ようやく緋八も冷静さを取り戻し、一口お茶を飲むとティーカップを置き星導に話しかける。
「そんで?何があってそんなプリティーな耳が生えとるん?」
「ほんとだよ!るべショウから電話来た時はびっくりしたけど、可愛らしいじゃ〜ん!」
そう言って赤城は星導の頭を撫でる。顔色自体は変わらないが耳が喜ぶかのようにぴくぴくと動くので、星導自身も恥ずかしさで少し耳が赤くなっていた。
そんな星導にきゅんとして、宇佐美も佐伯も一緒に撫で回し始めた。
「ちょっと…恥ずかしいんだけど」
「るべくんの耳、俺のヒーロー衣装とお揃いだね!…なんか、ここまでしおらしいるべくんを見るのも新鮮だなぁ」
「デカいメンズでもかわいいとこあるじゃ〜ん」
「…なんか馬鹿にしてません?俺が可愛いのは事実なんですけど」
「うわ〜…事実なんやけどムカつくなぁ」
「今ぐらい大人しく構い倒されとけよな」
四者四様、好きなように構って満足したのかそれぞれが元いた場所に戻っていく。宇佐美が一つ咳払いをして、話の続きを促す。
「それで、なにがあってそうなったんだよ」
「いやぁ…ちょっと任務で失敗して、KOZAKA - Cの攻撃みたいなの喰らっちゃって」
「え?でもこの前、ライくんがKOZAKA - C攻撃の攻撃ぐらいなら防げる道具を作った、って言ってなかった?」
「そうなんですけど、寝不足で頭が回ってなかったからか付け忘れてきちゃってぇ…」
「それはるべが悪いわ」
「いなみそ激おこコースじゃん」
「いやほんとにそうですよね…」
星導は顔を少し俯かせ、心なしかしゅんとしているように見える。いつも飄々としているようには見えるが、やはりそういうところは気にしがちなのだろうな、と緋八は思った。
「いや、でも宇宙と融合して怪我とかしないし…今回が特殊なケースだったっていうか…」
前言撤回。やはり、反省していないのかもしれない。
そんなことを緋八が考えていると、場の空気を切り裂くかのように着信音が鳴り響く。どうやら、星導の端末のようだ。星導は端末を取り出し着信相手の名前を見ると、顔を顰めた。
「げ…ライからだ」
「まぁ、そりゃあかかってくるよね〜」
「怒られる前に出たほうがいいんじゃねえの?」
赤城と宇佐美は笑い声を溢しながら星導にそう言う。星導はというと、葛藤しているような表情をした後、静かに応答拒否を押した。
そうして静かになったリビングだったが、そんな静寂の中、通知音と共に一件のメッセージが届く。差出人はもちろん伊波で。星導は顔を背けつつ薄目で端末をタップし、画面にメッセージが表示される。
『帰ってきたらしっかり話聞かせてもらうからね』
「終わったぁ…めっちゃ怒ってるじゃん」
「まあ、今回はるべにも悪いとこがあるんやから。早いとこ帰って謝ったほうがええで」
緋八がそうアドバイスするが、星導は不服そうな顔である。急に黙ったかと思ったら、突然大きな声で主張を始めた。
「俺知ってるんですけど、こういうのって普通甘やかされるものじゃないんですか!?」
おや、思ったより詳しいのかと佐伯は驚いた。だが、あくまでそれは二次創作上などの話であって、現実ではなかなか起こり得ないのだ。ここにいるのはメンズ5人。尚更ないだろう。
「……俺だってもっと優しくされたいのに」
前言撤回、星導が望んでいると言うのなら別である。赤城は夜ご飯の準備と言って台所の方へ移動していった。
夜ご飯まで何も予定がないと言うのなら、話は早い。存分に甘やかしてあげようではないか。佐伯は緋八、宇佐美と目配せをしてゆっくりと立ち上がる。
「ねえ、るべくん」
「…イッテツ?」
「さっき言ってたこと、叶えてあげようか」
星導は困惑しつつも、どこか期待を孕んだ瞳で佐伯を見つめた。
「わ〜お、出来上がってんねぇ…」
赤城の視線の先にいたのは、散々甘やかされて顔は火照り羞恥に体を震えさせる星導の姿だった。左耳は佐伯にふーっと息を吹きかけられ真っ赤に染まっており、右耳も緋八によって耳朶を甘噛みされている恥ずかしさからか茹っている。宇佐美にはバックハグされている状態であり猫耳を指で弄ばれ、時折睫毛を震えさせ目をぎゅっと瞑っている。
緋八がこちらに気付き口を離したが、口の端から耳まで銀糸が続いている。
「おー、おかえりウェン」
「ちょっとちょっと〜、るべショウ真っ赤じゃん」
「ん、ウェンくんも混ざる?」
「…混ざらないわけがなくない?」
こんなに扇情的な姿を見せられて混ざらない男などいるのか、と思いながら赤城は星導達のいる方へ足を進めた。
ぼんやりと焦点の合わない瞳でこちらを見る星導に、赤城はゾクゾクと稲妻のように背中を走る背徳感のようなものを感じた。
星導の頰に手を添え、空色の瞳で焦点の合わない目を見つめる。星導の瞳に映る自身の顔は恍惚としており、肉食恐竜のようだ。
訳も分からないままこちらの手に擦り寄る星導に、赤城はプツンと理性を手放す音が聞こえた気がした。
「ん……っ…、ふ、っ……」
赤城はご馳走を貪るかのように、星導の唇に喰らいつく。苦しそうに鼻で息をする星導の口からは僅かに吐息が漏れており、それが赤城を掻き立てる。
「ん……ちゅ…、……っは…♡」
苦しそうな星導の様子などお構いなしに、赤城は口の隙間から下を入れ口内を蹂躙する。やけに生々しい水音が、静かな部屋に響く。まるで映画のワンシーンかのように美しいその光景に、他の3人は思わず見惚れていた。
「……っ、は。…か〜わい♡」
砂糖をドロドロに煮詰めたかのような声でそう溢す赤城に、星導はビクビクと体を震えさせる。先ほどまでピンと立っていた猫耳も尻尾も、今は力が抜けだらりと垂れ下がっている。
少し意識がはっきりとしてきた星導は、慌てて手を口の前に持ってきて、赤城を静止する。
「…ちょ、ちょっと!ウェンもマナもイッテツもなんなの…!?リトもずっと離れないし…
ていうか、ウェンに至っては急にキスしてくるし…」
恥ずかしさを全面に出した顔で段々と尻すぼみになっていく星導に、赤城は満足そうに口角を上げた。
「あは、るべショウが可愛かったから、つい?」
「つい、とかじゃないから!ほんと、急にキスされてびっくりしたし、恥ずかしかったんだけど…
ていうか、付き合ってないのにキスとか、いいの?」
「…え〜!そんなこと気にしてたの〜!?かわいらし〜!」
「ほんなら、付き合ってたらいいってことやんな…?」
緋八は頰を赤らめながら、星導の顔を覗き込む。その瞳は情欲や独占欲などいろいろなものが入り混じり怪しく光っている。
緋八の言葉に、他の3人も納得したような言動を見せた。その場の雲行きの怪しさに、思わず星導は一歩後退りをする。
「…え、いや…そう言う訳じゃ……」
「確かに…それがいいよ。ね?るべくん」
「るべは俺たちのこと、好きだよな?」
「え、あの…イッテツ?リト?」
気圧されるような4人に様子に、星導は一歩、また一歩と後退していく。気づけば壁のすぐ近くまで下がってしまっていた。
「ね、僕たちと付き合お…?」
濁った瞳でこちらを見る赤城に、星導は恐怖で体を震えさせる。いつもと違う彼らの様子に、柄にも合わず涙が出そうだった。まるで現実味のないその光景に、意識が遠くなっていく。目も合わせられず涙が溢れそうになったその瞬間、視界が一気に暗くなった。
ホワイトムスクのような香り。
誰かに、目元を覆われている。
それが誰のものかなんて分からなかった。それでも、なぜだか安心する暖かさに星導は意識を手放した。
「…わりぃけど、俺らのもんだからさ。返してもらうわ」
…空耳かもしれない。けれど、聞き馴染みのある声がした。
視界が暗転する。
・‥…━━━ ★ ━━━…‥・
目を覚まして最初に目に入ったのは、見慣れた拠点の天井だった。
どうやら気絶して目が覚めたら見知らぬ天井、というわけではないらしい。
星導が体を起こさず首だけで周りを見渡すと、そこには小柳がいた。誰かいるとは思っていなかったので、星導は驚いて思わず飛び起きる。そんな星導の姿に、小柳は小さく笑い声を漏らした。
「…ふっ、おま…っ、驚きすぎじゃない?」
「いや、だって…起きたらすぐそこに人がいるとか思わないだろ」
「まあ、俺も帰りたいとは思ってたね」
「じゃあなんでいるんだよ」
「…気づいてないマ?自分で見てみろよ」
そう言って下を指差す小柳に従って、星導は徐々に目線を下に下げていく。そこには椅子に腰掛け、曲げられた小柳の足があった。いや、正確に言えばその足には薄紫の尻尾がぐるぐると巻き付いていた。
そんな色の猫などこの場にはいないし、そもそも猫の尻尾がこれほど長いわけない。となると、その尻尾の持ち主など1人しかいないわけで。
それを自覚した瞬間、星導は自分の顔が熱くなっていくのを感じて俯いた。
「ははっ!気づいた?」
「最悪…」
「そんなに俺のこと好きだったかぁ、ほしるべぇ」
「しね…くそおおかみ……」
「ふっ…ごめんな、気づかなくて」
そう言って小柳は星導の頭を撫で回す。口では揶揄っていてもこちらを慈しむような目で見てくる小柳に、星導は居た堪れなくなって顔を覆う。けれど、頭を撫でる手だけは離したくなくて、星導は少し頭を擦りつけながらその温かさを享受した。
その行動に小柳は少し体を強張らせたが、続けて撫で続ける。星導が甘えてくるなんてこと本当に珍しかったので、小柳の心は優越感に似た何かで満たされていた。
「獣の耳って聴力高いだろ。体調悪くねえ?」
「…ちょっとだけ頭痛いかも」
「そういうことは早く言えよ。俺の声うるさくないか?」
「大丈夫」
「他に何かやっといた方がいいこととかある?」
「…落ち着くから、その、頭撫でてて欲しいかも」
「ん、わかった」
「小柳くんは、なんであの時助けに来れたの」
「んー、お前の後つけてたからやね」
「何それ、ストーカーじゃん」
「せやね」
「せやね、って…同期にストーカーいるの怖いんですけど。距離置こうかな…」
「はっ、お前のこと守れんならなんでもいいよ」
「…あっそ」
10分弱ほど2人はどちらからともなくぽつぽつと会話をしていた。何かを絶対に話さなきゃいけないわけではない。けれど星導も小柳も、この満たされるような甘い時間を離したくなかったのだ。
そんなふうに二人寄り添って過ごしていると、空間を切り裂くかのように激しくドアを開ける音が響いた。星導は思わず小柳の体を押し離す。聞き慣れた通る声が部屋に響いた。
「こやなぎぃ?俺、星導が起きたら報告しろって言ったよなぁ?」
「やべ、忘れてた」
「報告サボって星導といちゃついてんじゃねえよ!!ちょっと、カゲツー!」
そう叫ぶ伊波の表情には、怒りに隠れて若干の安堵の色が浮かんでいる。どうやら、相当心配をかけてしまったらしい。こってり絞られている狼に倣って反省していると、白くふわふわの頭が顔を覗かせた。
「なんやぁ、ってたこ起きとるやん」
「それで話があるから呼んだんだって。カゲツ、星導つれて共同スペースまで行っててくれない?」
「おー、伊波は?」
「俺、もうちょい話すことあるからさ。先行ってて」
「わかった」
叢雲は素直に頷き、星導の方へ向かった。星導はというと小柳を少し憐れみながら、まだ痛む頭のために叢雲と手を繋ぎながら共同スペースへ向かった。
「あの…伊波?悪かったって、な?」
「うるさい。人が頑張って治す方法探してる中、星導といちゃつきやがって」
「いや、それはあっちも嫌がってなかったっていうか…」
「ん?」
「すいません」
小柳の言葉に伊波はため息を吐く。オリエンスもだが、そんなに歯止めが効かないものかと伊波は考えた。
「…確かに猫耳の星導とか可愛いのはわかるけどさ、それで怖がらせたら元も子もないからね?」
「まぁ、それはそうやね」
「だから慎重に、大事に外堀から埋めてきたのに…。まあ、でも…今手に入れちゃうのもありか」
そう呟く伊波の瞳には、情欲が滲んでいた。先ほど訪れた叢雲の顔と言ったら、あんなに嬉々とした表情は初めて見た。仲間だと思っていた奴らから同時に愛を囁かれたら、星導は一体どうなってしまうんだろうか。
小柳は溢れ出んばかりの高揚感に手で覆った口元を歪ませていた。
・‥…━━━ ★ ━━━…‥・
「で?何があったか報告してもらおうか、星導くん?」
「いやー…そのぉ…」
「ちなみに、俺のデバイスで一部始終録画してたから今更嘘ついても無駄って話する?」
「KOZAKA-Cの攻撃喰らったら猫になりました」
「任務で何かあったときは報告しろって言ったよね」
「いや、だって怒られるかなっておも」
「返事」
「はい」
これじゃあどちらが年上かわからないな、と小柳は思った。
小柳は、星導が攻撃された瞬間すぐに鬼のような形相で対処法を探し始めた伊波を知っているし、盗聴器から東のアジトでの出来事を聞いて取り乱し始めた叢雲を見ている。現に自分も星導が他の男に絆されるなんてことを許容できず、体裁など気にせず乗り込みに行った。
けれど、目の前の蛸は自分がどれほど守られているかわかっていないのだ。だから、小柳達の思いは一つだった。
『この蛸をわからせよう』
伊波は席を立つと星導の隣の位置に座り直し、耳元に唇を寄せ囁いた。
「星導はさぁ、俺たちがどのくらい心配したか分かってる?」
「まあ…はい?」
「俺たちはね、お前が思ってよりずぅっとお前を愛してるんだよ」
砂糖を煮詰めても足りないほどの甘さの声に、星導はぞくりと背筋が震えて距離をとろうとした。しかし、伊波によって星導の両手は頭上に縫い付けられその動きは叶わなかった。
いつのまにか叢雲、小柳にも囲まれていた星導は、その唯ならぬ様子に小さく肩を震わせた。
「ね、星導。好きだよ」
「…へ?」
「世界で一番愛してる」
いつも輝いている彼の瞳は、今は仄暗く虚な瞳となってこちらに向けられる。そんな伊波の様子に、星導の本能は警鐘を鳴らした。椅子から立ち上がり玄関へと足を運ぼうとするが、駆け出した瞬間視界がひっくり返った。仰向けになった星導は理解が追いつかず、視線を下へ向けると自分の腰元に叢雲が跨っていた。
「なあ、なんで逃げるん?僕だって星導のこと好きやのに…嫌なんか?」
「ちが…!嫌とかじゃなくて…」
「そんなら逃げないよなぁ?
逃げたら…なんて、たこならわかるやろ?」
そういって叢雲は、星導の首筋に手を沿わせる。いつもなら懐っこさを感じるその手つきが、今はなんだか妙に扇情的なものに感じる。諦めて体制を起こし、星導は伊波たちのほうへと体を向けた。
「わかりましたって…もう逃げませんから」
「それでいいんだよ」
満足そうに笑みを浮かべる伊波はいつも通りのヒーロースマイルで、なんだか拍子抜けしてしまったなと星導は思った。
「それで?なんで言わなかったわけ?
さっきも言ったけど、俺達はお前が大事だから心配したんだよ?」
「いや、それは気の迷いって言うか何と言うか…」
「3年以上一緒に居て気の迷い、なんてある?」
答えは否だろう。生憎、星導は少女漫画の主人公ほど鈍感ではないので。
待て、先ほどはよく聞いていなかったが『俺達』と言ったか?
「え、ライだけじゃないの?」
そう言うと少し頬を膨らませた狼が、こちらを覗き込んできた。
「はぁ?だいたい、お前が好きじゃなきゃわざわざ東まで助けに行くわけないだろ」
「まあ小柳くん出不精だもんね」
「あ゙?舐めんな、最近動いてるし」
どうだかというふうに肩をすくめる星導に、小柳は呆れている。話が脱線したからと伊波に話を戻され、内心舌打ちをしながら星導は笑顔を作る。
…仮にこいつらが自分のことを好きだとしても、自分の本心はバレてはいけないのだ。
こんな自分らしくない想いなど、彼らに知られたくない。だから、隠す。
そんな願いは無情にも打ち砕かれるとは知らずに。
「なんで言わなかったかって話でしたっけ?だって、保護デバイスとか忘れていったなんて言ったら、ライは怒るじゃないですか」
「当たり前だろ」
「だから嫌だったんですよ」
「でも、わざわざ東に行く必要はないやろ」
「それはまあ、任務場所が近かったっていうか…」
何を問いかけてものらりくらりと躱す星導にしびれを切らして、小柳は呟く。
「…俺だって優しくされたいのに、だっけ?」
「……ぇ゙」
バラされると思っていなかった言葉に驚き、星導思わずそちらに顔を向ける。衝撃発言をした当の本人は瞼を閉じ、素知らぬ顔だ。
なんで知ってるんだ、とか勝手に言いやがって、とか色々あったが星導の羞恥心は限界突破してしまい、ただ口をはくはくと動かして息を漏らすだけだった。
「えー!なにそれ可愛い!!」
「たこも可愛いとこあるんやなぁ」
「うるさい…忘れろ……」
『恥ずかしがるなって〜』などと伊波が言うが、本当に黙ってほしい。思わず漏れ出てしまった本音だったので、正直本当に恥ずかしいと星導は顔を俯かせた。
そこを目を合わせるかのように、伊波が覗き込む。ちらりと星導が顔を上げると、伊波の綺麗な瞳が目前にあった。そのまま近づき、唇が重なる。
「………っ、え…」
「んふ、かーわい」
そういう伊波の目がとろけるほど甘かったので、星導は本当に理解が追いつかなくなって固まってしまった。遠くから3人の言い争う声が聞こえる。
「伊波ばっかりずるいぞ!」
「うるせえ!俺だって一回だけだよ!!」
「…それなら、俺らもしないと釣り合い取れないよなぁ?」
『ほしるべ』と甘い滑舌の耳馴染みのいい低音で呼ばれて顔を上げると、水面に浮かんだ月を宿した双眸と視線が交差する。
どこか冷静さを保った頭で、喰われると思った。
「…ん、ちゅ……んむ……っ……」
「………っ、……は、かわい…。な、好きだよ。ほしるべ」
数十秒ほど、舌が絡みつくようなキスをされ星導の口の端からは唾液が溢れる。星導の酸欠で回らない頭では、自分を取り繕うことなどできない。滅多に感じられない甘やかされるような感覚に、思わず嬉しそうな顔をしてしまっているのではないかと考えたが、叢雲の顔が近づきその思考は何処かへ消えてしまった。
「……ん、…好き、好きやでたこ」
「……も……っ、ふ……こういうときまで、たこかよ……」
「なに、ショウって呼んだほうがええんか」
「そういうことじゃ、ないけどぉ……ん…」
幾度となく繰り返し落とされるバードキスが擽ったくて、星導は身を捩らせる。3人ともキスして満足したのか、今度は手を握るかたちで全員と目が合う体制になった。
「…俺、星導が好きだよ」
「ぼくも、ずっと好き」
「…俺も、お前のこと好きだよ」
「ね、だからさ星導……俺達と付き合おう?」
いつも喧嘩してばかりなのに、こういう時だけ仲がいいのかと星導は思った。ふざけようと軽口を叩きたいのに、浮ついた心では素直な言葉しか出てこない。
「俺も、好きですよ。ライも、カゲツも、小柳くんも」
そう答えると三者三様に嬉しそうな反応を示し、星導を囲むようにソファに座る。
世の中的に四人交際だなんておかしいのかもしれないが、それでも自分達にはこの形が一番あっていると星導は思う。きっとそれは、彼らもなのだろう。
「……ちゅ…んふ、可愛いなぁほしるべぇ…」
「ほんとに耳ふわふわじゃん…。ぴくぴく動いてるの可愛すぎるんだけど」
「…はは、恥ずかしくて目閉じちゃってんの?たこ、ほんまにかわいいなぁ…♡」
…まあ、世間体より何より三人分の愛を独り占めできるなんてお得ではないか。
そう考え、星導は今感じている幸福に身を任せた。目を瞑ると、三人から抱きしめられキスが振ってくる。そんなふうに甘やかされる時間が、夢のようだった。
だから、星導はそのままでいい。
星導に盗聴器を仕掛け東での一連の出来事を知っていた伊波のことも、
星導に自分の所有物を介してマーキングし周りを牽制して外堀を埋めた小柳のことも、
今回の任務の敵のが猫化させる攻撃を持つと知った上で護符も付けず星導を送り出した叢雲のことも、
星導は知らなくていいのだ。
ただ、そのまま自分達を愛していればいいと願いを込めて、三人はそれぞれ星導を愛で始めた。
・‥…━━━ ★ ━━━…‥・
間が少し空いてしまったので、上手くまとまりきらない終わり方ですみません…
どうしても自分の好みが出てしまいました。
ちなみにタイトルはダブルミーニングです
私としては上記イメージで今回のrbさんを描きました。
下手なイラストなので、いつか消すかも
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!本文の誤字脱字は、こっそり教えてくださると助かります…!
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うわああラストの“知らなくていい”の語り、ずるいな……! 導入の猫化でキャッキャしてる緩い空気から一転、西組の腹の読めなさと東組の甘やかしの温度差にゾクゾクしました。星導が「俺だって甘やかされたい」ってぽろっと本音を漏らすところ、人間らしくてすごく好きです。4人で愛でられる幸せが、実は誰かの計算の上で成り立ってるかもしれない不穏さを残す終わり方、設定厨としてはたまらないですね。続きが気になります……!