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#このキャラでログインしたい
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「お兄ちゃん!」
「うぉっ!? どうした夢月……というか、もうログアウトしたのか? 今日は早いな」
「あ、うん。黒沢君が、もう遅いからまた明日にしよーって」
という事らしく、いつもだったら絶賛ゲーム中の筈の妹が、こっちの部屋に駆けこんで来た。
なんかもう心配ばかりしていた筈なのだが、こういう部分は同級生とゲームをやらせて良かったかもしれない。
あの夢月が、ちゃんと時間を決めてゲームしてる。
ありがとう黒沢君、いつまでも健康的な生活を心がけてくれ。
「それで、どうした? お前なら一人でも新キャラ進めそうなモノだけど」
「う、うん……そっちは時間制限とかないし。マルチプレイも楽しかったから、せっかくならストーリーもちゃんと見ようって思って。ゆっくり進める事にしました」
素晴らしい。
やっぱり友達とゲームするってのは、人生においての学習の場だな。
これまで物語がどうこうよりも、自らの出来る事をもっとやりたい! ってスタイルだった妹が、また別の事に興味を示しているのだから。
黒沢君と話した当初、俺の当たりが結構強かったかもしれないからな……また何処か食事にでも誘って飯を奢ってやろう、そうしよう。
しかし必要以上に距離を縮める必要は無いんだよ? と、改めて釘を刺しておかなくては。
「って、そっちじゃなくて! 黒沢君から聞いたよ!? ハンドガンは“サブ”で、普通は“メイン”におっきいのを使うんだって! 私のプレイスタイル変だって、なんで教えてくれなかったの!?」
おっとぉ、そこにもしっかり気がついてしまったか。
そうだよね、他の人とやれば自然と気がつくよね。
ハンドガンなんてのは、ほぼオマケというか。
街中や狭い所で使う以外では、メイン武器のリロードの際に隙を無くすために使う程度だって事に。
それがまぁ普通、ゲームだしね。
ちゃんと使ってるプレイヤーなら重要性も理解しているだろうが、なんも考えずにやったらメイン武器いくつも装備する人だっているくらいだ。
人目のある所では隠して~、心配ない所で武装変更して~ってのが大体だわな。
最初から最後までハンドガンで無双するのなんて、ほとんどロマンを追い求めた戦い方に過ぎないのだ。
あんなのは映画の世界だけってこったな、そもそもハンドガンなんて一番当てづらい銃と言っても良いんだから。
状況によっては~って話にもなるんだろうが、実際のところ直接戦闘においては火力不足も良いところだ。
とはいえ。
「だって夢月はソレでクリア出来たしなぁ……実際そういう“普通じゃない”戦い方をした影響で、“6key”って賞金首は注目を集めてる訳だし。まさに、映画みたいなヒットマンって事でな?」
「つまり他の武器を最初から使う様にしていれば、ここまで目立たなかったって事だよね……ゲーム内でも、賞金首の話をしてる人いっぱい居たし。なんだか動画も拡散してるとか言ってたし……なんか、恥ずかしい」
すまん、夢月。
上司にも宣伝OKを伝えちゃったから更に目立つぞ、お前のおじさんキャラ。
なんて言ったら妹が悶えそうなので、今は黙っておくけど。
けど実際コイツのプレイ記録を見た結果……他の武器、使い方を一から教えないと駄目そうなんだよな。
ハンドガンだって、分かりやすくセーフティがある物じゃないと使えなかったみたいだし。
今の銃だってたまたま親指が触れた所が動くってのに気付き、それが安全装置だと理解した雰囲気すらあった。
もっと言うのなら最初の方は、マガジンを交換する方法すらよく分かって無かったみたいだし。
「あー、まぁなんだ。今更戦闘スタイルを変えるってなると、今度賞金首が登場するイベントに間に合わない可能性があるし。とはいえ、そっちにも興味が出たなら覚えておくか? ハンドガンと違って、マガジンの場所が色々だったり、装填する為のレバーの位置が違ったりするからな」
「うん……教えて。なるべく得意なスタイルで“6key”はプレイするけど、色々使えた方が便利そうだし。何より、本番で大きいの使えないってバレたら、それこそ恥ずかしいし」
そこは恥ずかしい云々の話では無くなって来るんだけどな?
多分他のプレイヤーから目撃されたり、また動画なんか撮られたりしたら。
それこそ“6key”は長物に対して使用制限のある賞金首なのか、みたいな噂が流れそうだけど。
ここを“恥ずかしい”で済ませるあたりが、ウチの妹って感じがする。
ちょっとズレてる所が。
「ま、いいや。それじゃ“6key”でログインしてくれ、練習用のステージに転送するから」
「う、うん……ごめんね? お仕事中だったり、した?」
「今日は半休貰ってるから、全然問題無し」
などと会話してから、大人しく自分の部屋へと帰っていく夢月。
さてさて、それじゃちゃんと“サポーター”として仕事しますかね。
ある意味じゃコレも、兄妹で一緒にゲームしている様なものだし。
俺としては楽しかったりもするのだが……でも形だけ見れば、時間外労働してるだけなんだよなぁ。
まぁ、良いけどさ。
「あ、やべっ」
せっかく夢月が早い時間にゲーム止めたのに、結局またログインさせてしまったではないか。
というのと……賞金首同士の顔合わせの話、答え貰うのまた忘れた。
◆
翌日。
「さ、昨晩はありがとう……ございました。えと、良ければ……今後とも、仲良くしてもらえると……嬉しい、です。ホント、嫌じゃ無ければ……良いので」
教室に入った瞬間、真っ赤な顔の白川さんが此方へやって来たかと思えば。
ポショポショと呟いた後、それはもう深々と頭を下げて来た。
いや、あの……ですね? ここ、学校。
当然クラスメイトの目もある訳でして、そして普段全然喋らない彼女が行動を起こした事に周りも興味を示したのか。
白川さんが喋っている間、普段は朝の騒がしい時間だというのに……シンッと、教室内は静まり返っていた。
そんな訳で、彼女の声はどうやら多くの生徒の耳に届いたらしく。
「く、黒沢!? お前まさか……まさかっ!?」
「昨晩!? 昨晩って言ったよね!? え、つまりもう既に……なん……だと?」
いつも絡んでいた友人二人に関しては、此方の肩をガックガックと揺らして来たし。
周りの生徒達も、こちらに向ける眼差しは様々。
男子達に関しては「え、マジかよ」みたいな雰囲気だったり、「白川さんか~声初めて聴いたわー」みたいな。
わりと普通の反応だったのだが。
女子の面々に関しては、とてもとても想像力が豊かだったらしく。
物凄く興味を示している子達は、恋愛方面の妄想でキャーキャー言い始め。
それなりに派手め……というか、交際経験豊かそうな面々に関しては「まさか付き合ってんだろうな? 手を出しただけって事無いよな?」みたいな。
非常に警戒した様な、冷たい瞳を向けて来るではないか。
なんというか、うん。
俺も白川さんも目立つ方では無いんだけど、意外と仲良いよね、ウチのクラスって。
という事で、色んな汗を流しながらも。
「こ、こちらこそ! また一緒にやろうね、“ゲーム”! オンラインだから、お互い“自宅で”出来るし!」
とても言い訳がましく、ちょっと大きな声でお返事をする事になってしまった。
いや別に、そう見られたら嫌とか、そういう事ではないのだが。
けどなんか、この空気は気まずくなりそうで嫌だったので。
という事情も有り、元気良く言葉を返してみれば。
白川さんはブンブンと首を勢い良く縦に振ってから、少しだけふにゃっと笑ってみせた。
リアルの方だとちょっと前髪が長いので、ゲームの時ほど表情は見えなかったけど。
それでもこの雰囲気が、昨日一緒に遊んだ“シロさん”とモロ被りして……自分でも分かる程に顔が赤くなった気がする。
「では、ぇと……また、夜に」
そう言ってから、自分の席へと彼女は戻っていった訳だが。
やばい、俺は本気で単純な男なのかもしれない。
お兄さんの前だったり、ゲーム内では結構生き生きしていた彼女を知っている。
本人の知らなかった事を教えてあげたり、一緒にやったクエストが上手くいった時、とても嬉しそうに微笑んでいる所も見た。
普段は見せない様な面を数多く見せられ、滅茶苦茶ドキドキしたというのに。
こうしてリアルでも声を掛けてくれて、更にはゲーム内で笑っていた彼女の素が垣間見えた気がして。
物凄く……こう、彼女のお兄さんから責められそうな感情を抱いている気がする。
「黒沢! オイ黒沢! ねぇ俺等も一緒にやって良い!? 何のゲーム!? どれ!?」
「俺も俺も! めっちゃ暇だし! 超付き合うし! 俺だって女の子と一緒にゲームしたい!」
欲望に忠実な友人達には悪いが、しばらくの間はこっそりと二人だけでゲームさせて頂こうかと思います。
個人的な感情ってのもあるけど……多分、白川さん。
この二人と引き合わせて一緒にやろうって誘ったら、テンションに付いて行けずに逃げ出してしまいそうなので……。
これもネトゲあるあるだけど、いきなり“友達の友達”を紹介されても、割と戸惑ったりするよね。
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