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「サブマシンガンって言うのが、でっかいけど小さいヤツも多くて割と使いやすい……アサルトライフルって言うのが基本的にでっかい銃で、弾もでっかい……でもこの区分も言い方と物次第というか、銃はこんなにでっかいのに、使う弾は小さかったり……えぇ、皆コレ全部覚えてるの?」
本日のゲーム時間を終えてから、一人でパソコンの前に座ってマウスをポチポチ。
お兄ちゃんから教わっている時は、基本的に練習ステージを繰り返す形になるので、銃の使い方を覚えたらひたすらやり込む感じ。
黒沢君と一緒にやる時は、新しい事を教えてもらいながら色々試しつつ、可能な限りハンドガン以外でゲームを進めていく感じ。
この二つを同時進行しようと思ったのだが……問題が一つ、本日浮上した。
運営側として使っている“6key”と、私個人が使っている“46leather”。
対格差、あり過ぎ。
いやまぁ男女の差だし、後者に関しては私の身体データをそのまま突っ込んだ様な状態なのだ。
高身長ダンディーと比べたら、それはもう天と地ほどの差が出る事は分かっていたのだが。
身体能力の誤差に関しては割と問題ない、他のゲームでもキャラクターに“のめり込む”事は得意なので。
しばらく身体を動かせば、それが自分の身体なんだってくらいには違和感なく動かせる。
だが癖というか、そのせいでと言うべきか……。
6keyの方では、大きな武装の方が正直射撃も当てやすかったし、安定して来ている。
けど逆に46leatherの方だと、身体のサイズ的にでっかい武器が扱い辛いのだ。
だからといってイケオジで小さな武器を使おうとすると、何かもうハンドガンで良くない? そっちの方が早いしってなるのだ。
これもまたプレイスタイルと、戦闘する場所や状況次第なんだろうけど。
違う武器ならフルオートが出来るからと言っても、相手に接近して戦うのなら別にそこまで要らないかなって。
むしろ荷物が多くなって邪魔、あと簡単に振り回せないのが何かモヤモヤする。
極端に言ってしまうと、ハンドガンに慣れ過ぎてしまったのだ。
そしてどっちのキャラでも扱えるソレが、多分私の中で一番戦力が高い。
慣れているので。
もう一つ言うのなら、フルオートってモノに未だ慣れない。
正直……全然当たらないので、弾ばっかり無くなっちゃう。
やっぱり距離があると、射撃って凄く難しい。
というのと、連続でズドドッて反動が来ると焦る。
焦ってる内にマガジンが空になる、結果当たらない。
映画だとずーっと使っててたまにマガジンを替えてる印象なのに、ゲームでやるとほんの数秒で使い終わるという。
こんなにマガジン長いのに!? って、最初は驚いたものだ。
「う~~む……」
賞金首の方に関しては、正直このままのスタイルの方が良いのかなぁ。
それ自体が意外性もあり、注目を集めているみたいだし。
けど遠距離メインの相手と戦闘になったら、このままじゃ手も足も出ないんだよねぇ。
更に言うなら、これまた問題なのは個人アカウントの方。
ハンドガンのみの戦闘を晒し続けると、私が“6key”だとバレる恐れもある。
というのは、少し考えすぎなのかもしれないけど。
外見全く違うし、黒沢君と一緒にゲームしている時だってアワアワオロオロと情けない姿を晒しているのは自覚している。
表情のトレース、カットしてないしね……。
そして何より“他人の目がある”って、結構気を使う事が多いのだと重々に理解した。
ソロプレイじゃないと「迷惑かけるかも」という思考が纏わり付いて、無駄に緊張してしまうのだ。
更に言うなら、メイン装備を嫌がるプレイヤーは居ないから、私も使わないと変な目で見られそうだし。
ゲームの雰囲気的には問題無い様な気もするんだけど、他の人のプレイスタイルを見ると……絵に描いた様な“殺し屋”って言うより、武装集団が街中に居るって雰囲気が強いんだよねぇ。
前回相手にしたクランも、殺し屋って言うよりマフィアって感じだったし。
やっぱり色々武器が揃っているゲームだと、皆重装備になるのかなぁ?
などと考えつつ、ぐてーっと背もたれに体重を預けながら身体を伸ばしていると。
「夢月ー? いいかー?」
「はいはーい、どうぞー?」
最近それなりの時間に帰って来るようになったお兄ちゃんが、ノックをしてから此方の部屋へと顔を出した。
今日も他の武器のレクチャーとかしてくれる時間あるのかな? とか思いつつ、ちょっとだけワクワクしていたら。
「すまん、俺も忘れてたんだけど……上司に早くしろって怒られちまってな」
「……うん? 何を?」
何か、あったっけ?
賞金首イベントはまだ次が決まっていないって感じだったし、他のお仕事なんかも聞いていない気がするんだが。
はて? と首を傾げつつ、次の言葉を待っていれば。
「結構前に話したけど……覚えてるか? 今度ウチの会社に来てもらって、賞金首同士で顔を合わせる……みたいな」
「ウボァッ!」
思い切り変な声を上げながら、椅子の上から落っこちた。
あ、あったねぇ……そんな話。
いや、でも、本気で?
あの映像を見て、というか運営側が管理している私の戦闘映像とか見て。
その上で興味を持ってもらったって、そう言ってなかった?
だとすると……不味い。
だって相手は、プロって名前が付く程ゲームの上手い人達なんだよね?
しかも私みたいに、身内のコネでバイトしてますって雰囲気でもない訳だよね?
つまり、大人。
そんな中に、こんなコミュ力ゼロのちっこいお子様が登場してみなさいよ。
絶対イメージダウンでしょうに、間違いなくガッカリされるよ。
そんな事になったら、お兄ちゃんにだって迷惑が掛かるかも。
だってそもそも、まともに喋れる気がしないよ?
クラスメイトと話すのでさえ、一日の体力使い切ったんじゃないかって程に緊張するんだよ?
こんな社会不適合者、姿を見せても失望させるだけだってば。
とか何とか、最悪な想像ばかりを思い浮かべながら床に転がってプルプルしていると。
「あ、あ~その、なんだ。本気で嫌なら、断わっておくぞ? 別に絶対必要な事って訳じゃないし、お前が知らない人と話すの苦手だってのも知ってるし」
なんて、お兄ちゃんは逃げ道を用意してくれる訳だが。
どうにかこうにか、のそりと起き上がってから。
「それをやると……お兄ちゃんは、有利になりますか」
「えぇと、まぁ……その、うん。上司のご機嫌取りって意味でも、他の賞金首とも繋がりを持つって意味でも。悪い事ではない、な? 契約したプレイヤーに関しては、社内でもそこまで情報が回っている訳じゃないし。今後やり易くはなる」
そう言われてしまえば、私に選択肢などある訳もなく。
「行き、ます。御挨拶、させてイタダキマス……」
「大丈夫か? 本当に」
だって私、金銭面全部お兄ちゃんに頼っちゃっているので。
まごう事無き、居候なので。
兄のお仕事の役に立つと言われれば……協力、させて頂きますとも。
◆
「ねぇ~まだ次のイベント来ないんですかー? 模擬ステージばっかりじゃ、流石にこのキャラ飽きて来るんですけどー」
『そう言わないで貰えると助かりますかねぇ……別アカウントなら、普通にゲームしてもらっても構わないし』
「契約してる以上仕方ないんですけどぉ~、私の“本業”は目立つ事なの知ってますよねー? 実力買って貰ったのは嬉しいんですけど、黙々とソロプレイは飽きるっていうかー」
通話中の“担当”サポーターに声を掛ければ、向こうからは苦々しい声が響く。
とはいえ、こればかりは仕方ない。
ガンサバは始まったばかりだし、他のイベントと違って“賞金首”は中身が居るのだ。
そもそも私達の様な存在だって、まだまだユーザーの反応を見ながらじゃないと運用だって難しい。
それは分かっているんだけど……本番一回だけで、こうして待たされてばかりだと、ね。
「もう野良イベントとかで良いじゃないですかぁ……賞金首にやられた時のデバフ弱めて、サーバー全員参加型みたいに。その方が私としては楽しいんですけどー」
『そういう話も出てはいるんですけどねぇ、色々と。元々は“運営が対処し辛い”プレイヤー管理目的、違反スレスレでやってる人達の対処が目的とされた選ばれた人達。絶対負けないくらい強いプレイヤー。それだけじゃ流石に、お仕事いっぱい回せないですから』
「とか言って、10人中ちゃんと勝った“賞金首”ってたったの4人でしたっけ。それに“シックス”が撮影された事で、異常に注目浴びちゃってますしねぇ~。当初よりも扱い辛くなったのは理解してますけどー」
『そうなのよねぇ……“6key”、あの子だけはちょっと別枠で考える他無いくらい目立っちゃったから。今じゃガンサバイブオンラインの公式ボスみたいな扱い……あ、でも他の賞金首の悪口は禁止。これだけは徹底して下さいね?』
はーい、なんて適当な声を返すが。
私の担当、“シックス”の話を出すとたまに……不思議な言い回しをするんだよね。
あんな渋いおじさんアバターなのに、“あの子”って表現するのだ。
つまり中身は若い男の子だったり、もしくは女の子だったりするのだろうか?
正直、興味が尽きない。
だってあのプレイスタイル……というか、ハンドガンの縛りプレイ。
めっっちゃ、良い。
撮影された映像どころか、運営側に保管された戦闘映像も見せてもらったのだが。
彼……彼女? は、どこまでも映画スタイルというか。
本当に“魅せる”為だけにプレイしているかのような美しさがある。
あぁいうプレイヤーは、正直大好物だ。
そして何より、自らに縛りを入れているのにアレだけ強い。
他の賞金首だって強いのは分かる、けどこのゲームは正直運だって絡んで来るのだ。
フラッと行動した相手に見つかってズドン、たまたま良い所に当たって、それで終わり。
こういう事だって、珍しくは無い。
だからこそ負けてしまった賞金首を馬鹿にする意図は無いけど……それでも、“仕事”としてやっている以上実績は残して欲しいというもの。
なのに、前回のイベントで条件を達成したのはたったの4人だという。
今回は私が上手くいったから、という感想にはなってしまうのだが……残る6人に関しては、現状あまり興味が湧いていないのは確か。
「それじゃせめて、早く“シックス”と会わせて下さいよぉぉ……どんな人なのか気になるぅぅ」
『そっちも今交渉してもらってますから、もう少し待って頂けると……誰もが貴女みたいに社交的な訳じゃないんですよ? 他の賞金首だって、オンライン通話だけなら可って人も多いですし』
「仕事じゃーん! 契約してるんだったら、本社の言う事は絶対じゃぁぁん! 今度のイベントの打ち合わせとか、謝恩会的な言い訳でも作って、皆で顔合わせましょうよぉぉ!」
私が一番会いたいのは、シックス……“6key”なんだけどね。
まぁ他の人だって、一緒の仕事をしている以上は仲良くしたいし。
むしろ“賞金首イベント”が、こんなにもスローペースなら……別アカで普通にシックスともゲームしたいし。
『まぁまぁ、とりあえず今は次のイベントに向けてキャラに馴染む事優先……あら?』
「どしましたー?」
通話している相手が何かに気がついた様な声を上げたかと思えば……マイクの向こうで、ククッと笑いを押さえている様な声が聞えて来たではないか。
何だ何だ、何か面白い事でもあったのだろうか。
そんな事を思いつつ、次の言葉を待っていると。
『はい、嬉しいお知らせでーす。賞金首“6key”……貴女の言う所の“シックス”さん。今度本社の方に来てくれるそうですよー? 顔合わせOKの許可頂きました~』
「いつ!? いつ来るの!? 私も絶対行く! その日何も予定入れないようにする!」
ガッ! と音がする程PCのモニターにへばりつき、思わず声を荒げてしまった。
だって、リアルで“シックス”と会えるのだ。
どんな人なのか、どうしてあんなプレイスタイルを選んだのか、その縛りを入れた上でどうしてあそこまで強いのか。
とにかく、興味が尽きないのだから。
『これからゆっくり予定を組みますからねぇ~本社の方でも色々都合がありますし、全員の予定合わせるのだって大変なんですよ~? どこかの誰かさんが、今日みたいな我儘を言い始めると余計に』
「言われたメニュー全部こなすから! 変に時間取らせたりしないから! 絶対顔合わせセッティングして下さいね!? 絶対ですよ!?」
もはやガックンガックンとモニターを揺らしつつ、興奮したまま叫び声を上げるのであった。
だって“シックス”と会えるのだ。
これまで色んなゲームを経験したし、“プロ”の人とだって何度も対戦を経験したけど。
あんなにも人間味の無いって言うか……もはや完全にあのゲームの中の人でしょって雰囲気のプレイヤーなんて、見た事が無かったのだから。
本物の殺し屋にしか見えない程、あの人の戦闘は……とても、スマートだったのだ。