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風宮 むぅまろ🦇🍀︎ 🍬🍚
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無限城に、かつての蟲柱・胡蝶しのぶの姿はありませんでした。そこにあるのは、人知を超えた美しさと冷徹さを兼ね備えた、上弦の零という名の異形です。童磨は、恍惚とした表情で横たわる彼女の白い肌に、自らの爪を立てました。その指先が滑るたび、しのぶの柔らかな下腹部に、赤黒く、それでいて宝石のように輝く複雑な紋様が刻まれていきます。
「これで、君が誰のものか、誰の目にも明らかだね。僕の可愛い奥さん」
刻まれたのは、『上弦弐ノ妻』という、消えることのない隷属と執愛の刻印。
その瞬間、しのぶの全身を甘い痺れが駆け抜けました。刻印が完成すると同時に、彼女の意識は童磨の精神と深く接続され、彼の思考や感覚が直接流れ込んできます。彼女にとって、その刻印はもはや屈辱の証ではなく、最愛の伴侶と分かちがたく結ばれたという、至上の幸福の証でした。
「あぁ……磨さん。私の中に、あなたがずっと居るのがわかるわ……」
しのぶは、自らの腹部に浮かび上がった『上弦弐ノ妻』の文字を愛おしそうになぞり、熱っぽい吐息を漏らしました。彼女の魔力と生命力は、この刻印を通じて童磨の血と混ざり合い、二人で一つの生命体であるかのような強固な絆を作り上げます。
もはや、彼女の意志は童磨の意志。彼女の渇きは童磨の渇き。
上弦の零となったしのぶは、夫である童磨の隣で、優雅に翅を広げました。その瞳には、かつて宿っていた人間への慈しみなど微塵も残っておらず、ただ愛する夫と共に、この無限城を永遠の愛の揺り籠として、立ち入る者全てを甘美な死と快楽へ誘う「毒の妻」としての悦びに満ち溢れていました。